News Archive by Year

2021

日本認知症予防学会学術集会で、WHO ジョイントシンポジウムを開催

2021年6月25日に行われた第 10 回日本認知症予防学会学術集会にて、WHO ジョイントシンポジウム「認知症への理解と受容の促進:日本の取り組みとアジアでの需要拡大への対応」を開催しました。高齢化の進行に伴い、各国における保健医療制度、社会制度の認知症への対応が大きな課題となっており、治療法の開発、予防法の開発と同時に、社会的理解と受容の醸成が求められています。WHO神戸センターでは、これまで国内外の専門家と様々な議論を重ねてきました。

WHO神戸センターの茅野龍馬技官が座長を務めた本シンポジウムでは、国内外の認知症研究の専門家を招き、日本における国、自治体での取り組みが紹介されました。茅野技官は、2016年以来WHO神戸センターが神戸市や神戸大学と連携して取り組んできた認知症対策に関する研究や、日本の先進自治体の具体的な取り組みを知見として集約し日英両言語で作成したレポートについて発表しました。

またアジアにおける認知症課題の把握と、日本の知見をいかに活用するかについても議論されました。ラオス人民民主共和国の国立熱帯医学・公衆衛生研究所と連携して実施した、ラオスにおける高齢者の認知機能低下に関する調査研究についても触れ、アジアと日本の双方向の知見交換や貢献、産学官民の連携等の必要性について、活発な意見が交わされました。

関連プロジェクトはこちら:          

認知症の社会負担軽減に向けた 神戸プロジェクト

日本における認知症施策の優良事例に関するレポート

ラオス人民民主共和国における認知障害有病率の調査

 

日本医科大学の衛生学公衆衛生学講義に登壇

WHO神戸センターの茅野龍馬技官は2021年6月14日、日本医科大学の衛生学公衆衛生学講義に登壇しました。ビデオ形式で実施された本講義で、茅野技官は「国際保健」をテーマに、20世紀からの国際保健分野の変遷、21世紀の保健課題とWHOの取り組み、さらに新型コロナウイルス感染症やWHO神戸センターが取り組む健康危機管理について説明を行いました。講義の最後には、国際保健においてさまざまな分野・レベルで協力していくことの重要性に触れ、「皆さんの参画が必要」と次世代の医療人へのメッセージを送りました。

神戸女学院大学のグローバル・スタディーズ講義を実施

女性のリーダーシップの専門家であり、神戸女学院大学で国際教育を教える我喜屋まり子客員教授とともに、WHO神戸センターで技官を務めるローゼンバーグ恵美は6月10日、同大学のグローバル・スタディーズの講義に登壇しました。事前に実施したアンケートでは、回答した30名の学生のうち約7割が将来WHOと関連する仕事に就くかもしれないと思うと答えるなど、WHOに高い関心を示しました。講義には我喜屋教授が東京大学で教えている学生も含めた約40名の学生が、自宅などからリモートで参加しました。ローゼンバーグ技官は、WHOへのキャリアパスや、国際保健におけるWHOの役割、今年の世界保健デーのテーマとなった健康格差(Health Equity)とその社会的要因である貧困や教育の問題、またそれが男女における健康格差にも影響することなどについて英語で講義を行い、学生たちも英語で質疑応答に参加しました。

高齢者の健康増進につながる保健医療制度の強化に向けて

世界で人口高齢化が急速に進むなか、良質で適切な、患者主体の保健医療サービスを提供し、高齢者やその家族が経済的に苦労することなくサービスを受けられるようにするための保健医療制度の変革が、多くの国で問われています。

WHO神戸センターは、高齢者のニーズに応えるための保健医療制度の強化に向けて解決策を明らかにするため、タイとフィリピンで実施された2つの研究を支援しました。

アジアで4番目の速さで高齢化が進むタイでは、地域統合型の中間ケアに関する新たなサービスモデルの評価が行われました。地域に根ざしたケアモデルを導入した結果、対象となる高齢者のフレイル(加齢による身体的機能や認知機能の低下)が改善し、介護者の負担が有意に軽減されました。得られた知見は、高齢者への適切なケアを強化する上で、特に介護のほとんどを家族が担っている地域において役立てることができます。また、同様のサービス提供モデルを採用したいと考えている他の国々にとっても参考になります。詳細はこちらをご覧ください。

保健医療サービスの提供には、人的資源が欠かせません。保健医療の異なる専門職の人達が相互に学び合う専門職連携教育によって、高齢化社会の複雑なニーズに応えられるサービスを提供できる人材を育成できます。フィリピンでは、病院のスタッフとコミュニティヘルスワーカーの専門職連携を促すための新たなトレーニング・プログラムの評価が行われました。このプログラムにより、高齢者のための統合医療において医療従事者の態度と協調活動が改善されることが明らかになりました。

以上の結果から、高齢者向けサービスの質の向上に向けて重要な示唆が得られました。人材育成は、社会的ケアと保健医療サービスの統合に役立ち、それによりユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を促進します。さらに、保健医療の体制が強化されるようになり、急増する高齢者に対する良質なサービスの提供につながると考えられます。この知見は、ベトナムやその他の低・中所得国で活用される予定です。プロジェクトの詳細については、こちらをご覧ください。

WHO神戸センターはUHC研究の世界的拠点として、急速な高齢化に対応するための保健医療制度に関する研究の委託、各国で優先すべき研究の指針の提供、そして持続可能なUHCに関する各国の計画支援を行っています。

写真提供者: © WHO / Ploy Phutpheng

広島大学大学院での第2回目講義を実施

WHO神戸センターは2020年度より、広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学の「医療政策・国際保健概論」において2回にわたる講義を担当しています。第1回目の講義に続き、6月3日にはWHO神戸センターの茅野龍馬技官が第2回目の英語ビデオ講義を行いました。茅野技官は、国連のミレニアム開発目標(MDGs)から持続可能な開発目標(SDGs)への変遷と、その背景にある21世紀の健康課題について紹介しました。

世界禁煙デー:WHO神戸センター サラ・バーバー所長のメッセージ

世界保健機関(WHO)は毎年5月31日を世界禁煙デーと定め、協力機関とともに喫煙と受動喫煙の有害性に関する認識を高める活動を行っています。喫煙と受動喫煙は、年間800万人を死に至らしめています。今年のテーマ「Commit to Quite(禁煙を決意する)」では、電子たばこ、加熱式たばこ、無煙たばこなど、たばこの種類に関わらず喫煙者に禁煙を促しています。別の種類のたばこに切り替えるのは禁煙ではありません。

たばこは、どの種類であっても命に関わります。無煙たばこのニコチンは有煙たばこより吸収されやすいため、依存性が高くなります。加熱式たばこからは、がんを引き起こす可能性のある有害物質が発生します。電子たばこに含まれるニコチンは依存性が高く、また非喫煙者や周りの人を危険な受動喫煙にさらします。

日本では各自治体が受動喫煙に対する措置を講じており、評価に値します。兵庫県は2012年、都道府県では全国2例目となる「受動喫煙の防止等に関する条例」を制定しました。改正を経て2020年4月より全面施行されたこの条例では、20歳未満の県民および妊婦を受動喫煙から守る観点が強化されています。またWHOの推奨に沿って加熱式たばこを紙巻きたばこと同様の取扱いとするとともに、小・中・高校、医療機関などにおいて特定屋外喫煙所の設置を原則認めず敷地内禁煙とするなど、県独自の取組みも行っています。

研究結果からは、喫煙者が新型コロナウイルス感染症にかかると、非喫煙者と比較して重症化しやすいことが証明されています。新型コロナウイルス感染症は、心血管疾患や呼吸器疾患、糖尿病などの持病があると重症化しやすく、たばこはこうした非感染性疾患の主要な危険因子です。

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行をきっかけに、たばこをやめたいと思った人は大勢います。一方で、感染症流行によるストレス下では、たばこをやめるのは特に困難でしょう。それでも、禁煙をするのに遅すぎるということは決してなく、その効果はほどなく現れるのです。たばこをやめてたった20分後には心拍数が下がり、2~12週間で血行が改善し、肺の機能が向上します。心臓発作を経験した後に禁煙した人では、再発の確率が50パーセント低くなります。

禁煙を補助してくれるツールがない人も多いのが現実です。そのためWHOの「禁煙を決意する」キャンペーンでは、協力機関や各国政府とともに次の支援を行っていきます。

  • 禁煙に関する強力な政策の提唱
  • 禁煙サービスへのアクセスの向上
  • たばこ産業の戦略に対する認識の向上
  • 「クイット・アンド・ウィン(やめるが勝ち)」イニチアチブを通じた禁煙の促進

WHOは各国政府に対して、禁煙に関するアドバイス、禁煙相談のフリーダイヤル、禁煙関連のアプリやオンラインサービス、ニコチン置換療法、また禁煙に役立つその他のツールを国民全員が確実に利用できるようにするよう求めています。禁煙促進に向けた良質なサービスは、健康を増進し、命を救い、コストを削減することになります。今こそ、禁煙を決意しましょう。

中日こどもWEEKLYにWHO神戸センターの紹介記事が掲載

5月22日付の中日こどもWEEKLYに、WHO神戸センターの紹介とサラ・ルイーズ・バーバー所長のコメントが掲載されました。

世界中の健康を守る国連組織として取り上げられたWHOの特集記事の中で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジや災害時の健康管理の研究を行うWHOのグローバル研究センターとして、WHO神戸センターが紹介されています。

記事はこちらからご覧いただけます。

※中日新聞社より許可を得て掲載しています。

広島大学大学院での第1回目講義を実施

WHO神戸センターは2020年度より、広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学の「医療政策・国際保健概論」において2回にわたる講義を担当しています。5月27日に行われた第1回目の講義では、WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官がグローバル・ヘルス・ガバナンスにおけるWHOの役割などについて英語で講義を行いました。新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し、当日は事前に収録された講義の動画が履修生に配信されました。第2回目の講義は6月3日、WHO神戸センターで医官を務める茅野龍馬が行います。

災害・健康危機管理への取り組みを発表ーJAGES主催シンポジウム

2021年5月14日、日本老年学的評価研究(JAGES)機構の主催で、「健康危機へのレジリエンスと危機をチャンスに~新型コロナウイルス感染症や自然災害」と題するシンポジウムがウェビナー形式で行われました。WHO神戸センターからもローゼンバーグ恵美技官が参加し、災害・健康危機管理(H-EDRM)に関するWHO神戸センターの取り組みや活動を紹介しました。

全国の大学・研究機関、企業、省庁・自治体などから300名以上が参加登録した本シンポジウムでは、東日本大震災、熊本地震および豪雨、そして新型コロナウイルス感染症が高齢者の健康や生活に与えた影響について発表が行われました。これらはJAGESが全国各地の自治体と協力して実施している高齢者の健康に関する社会疫学調査から得られたデータに基づいています。さらに、そうした健康危機に対するレジリエンスに影響した要因に関しても、科学的知見やデータを中心に発表されました。

またWHO神戸センターが一部支援をした、ミャンマーにおける同様の調査も紹介され、新型コロナウイルス感染症やクーデターを経た現在のミャンマーの高齢者に関する最新のデータも示されました。WHO神戸センターのローゼンバーグ技官は、災害・健康危機管理(H-EDRM)にかかわる最近の国際的な動向と、グローバルリサーチネットワークをはじめとするWHO神戸センターの関連事業について紹介。WHO神戸センターはこれまで長年にわたり、健康の社会的決定要因、健康格差是正、高齢化と健康などの分野においてJAGESと研究協力を行っており、今後はH-EDRM分野への貢献も期待されることが述べられました。

関連ページ:

WHO神戸センター 災害・健康危機管理(H-EDRM)関連事業

日本老年学的評価研究(JAGES)

 

WHO神戸センター/神戸大学医学部

神戸大学医学部を対象に公衆衛生学講義を実施

2021年5月7日、神戸大学医学部3年生約120名が履修する「公衆衛生学」において、WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官が講義を行いました。例年対面式で行われる本講義を、新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し、昨年度に続き今年もオンラインで実施しました。

講義では、はじめに新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックへの対応を事例に用いながら、WHOの役割や機能について紹介しました。さらに後半では、WHOが推進するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や、WHO神戸センターが取り組む高齢化とUHCに関わる研究事業について解説しました。

講義後の質疑応答では、WHOで働くためのキャリアパスに関しても質問があり、公衆衛生学や国際関係学など関連分野での大学院教育や職務経験を得た後、公募に応募する方法、JPO派遣制度を利用して国内選考を経た後に派遣される方法、WHOでのインターンシップから始めて徐々にキャリアップしていく方法など、さまざまなキャリアパスが紹介されました。