News Archive by Year

2012

フィリピン・パラニャーケ市が2012年度 国際都市連合賞を受賞

健康都市連合(AFHC、事務局:東京)は、都市部に暮らす人々の保健と健康増進を目指す加盟都市の優れた取り組みを評価し表彰しています。

先ごろ開催された、第5回健康都市連合国際大会(2012年10月24日~27日 於:オーストラリア・ブリスベン)において、フィリピンのパラニャーケ市が、クリエイティブ・ディベロップメント賞を受賞しました。これは、WHO神戸センターが開発したアーバンハート(都市における健康の公平性評価ツール)の導入・実施による同市の健康の公平性に関する取り組みが高く評価されたものです。

受賞に際し、パラニャーケ市のフロレンシオ・ベルナベ市長は、「アーバンハートは、市の異なる地域における医療保健サービスの格差を究明し排除するための非常に貴重なツールである」と述べました。また、アーバンハートが、市のリプロダクティブヘルスと家族計画に関するプログラムと連携することにより、妊産婦の死亡数の減少ならびに小児予防接種率の増加に貢献していることが明らかになりました。

日本における徒歩通学と小児肥満予防の関連性

WHO神戸センターは、日本における徒歩通学と小児肥満の関連について調査し、学術論文を American Journal of Public Health に発表しました。本論文において、日本における徒歩通学が小児肥満予防につながったと結論づけ、各国ならびに各自治体において有用な教訓であると提案しました。

徒歩や自転車での通学は学童期の重要な運動手段です。昨今、先進国を中心に小児肥満予防の観点から徒歩通学を推進する動きがみられます。一方、日本では他の先進国に比べ、徒歩や自転車での通学が非常に高い率 (98.3%)で行われている現状があり、このような徒歩通学は1953年より実施されています。

日本では各自治体において、教育委員会が個別に存在し、公立小学校および中学校を管轄しています。これらの教育委員会は独自に地理、天候、交通の状況を考慮し、個々の通学方法を決定します。都市部においては、ほとんどの小中学校が徒歩圏内にあるため、徒歩通学が一般的な通学方法となっています。その地区の特徴によってさまざまな安全対策が取られており、保護者、学校職員、自治体ボランティアなどが通学の際に監督を行っている様子も多く見受けられます。

   

徒歩通学が運動習慣をもたらすことから、小児肥満の予防につながったと考えられます。これから徒歩通学の推進を考える各国の自治体への提言として、(1)徒歩通学の取組みの基盤を作るために、既存の学校ネットワークを活かし、日本で行われているような(教育委員会など) 地方組織の管轄によるものへと組み換えること (2) 安全対策を確立すること (3) 地域の特性によって臨機応変に対応することを挙げました。

 

 

関連リンク

  • The American Journal of Public Health

    "Walking to School in Japan and Childhood Obesity Prevention: New Lessons From an Old Policy"; Nagisa Mori, Francisco Armada, D. Craig Willcox.

    American Journal of Public Health: November 2012, Vol. 102, No. 11: 2068–2073.

 

第5回健康都市連合国際大会にて、「Health in All Policies(全ての政策に健康の視点を)と非感染性疾患」に関する講座を開催

オーストラリア・ブリスベン -健康都市連合が隔年で開催する国際大会の第5回大会が、同時開催の国際健康都市フォーラムと併せて、オーストラリア・ブリスベンにおいて2012年10月22日~31日の10日間の日程で開催されました。テーマは、「健康な都市化: 健康な人々–健康なコミュニティー」。大会期間中の10月24日、WHO神戸センターは、「Health in All Policies (HiAP: 全ての政策に健康の視点を)と非感染性疾患」と題し、4時間の講座を開催しました。

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2012 年 世界精神保健デー

10月10日は世界精神保健デーです。世界精神保健デーは精神保健における課題についての一般的な認知を広めるために始まりました。世界精神保健デー当日は、精神障害に関する公開討論や、予防やケアサービスなどへの投資を促す行事が世界中で行われます。今年のテーマは「うつ病: 世界的危機 」です。うつ病の患者は世界で3億5000万人以上。患者は世代や社会を超え、世界疾病負担を深める大きな要因となっています。うつ病の治療にはよく知られた効果的な治療方法がありますが、多くの国においてその治療へのアクセスが問題となっており、国によっては患者の10%以下しか適切な理療を受けられない現状があります。

「第6回世界都市フォーラム」にて、ネットワーキング・イベントを開催

イタリア・ナポリ -- 国連ハビタット(国際連合人間居住計画)が隔年で主催する「世界都市フォーラム」、第6回フォーラム(2012年9月1日~7日)期間中の9月3日(月)、WHO神戸センターは、「都市の将来に活力を:多部門連携をとおして取り組む都市の保健と健康の公平性」と題し、ネットワーキング・イベントを催しました。

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夏を健康に過ごすために

盛夏を迎え、休暇にクールビズ、屋外での健康的な運動など、楽しみ方は人さまざまです。しかし、厳しい暑さに対処するためには、十分な注意が必要です。とりわけ、乳幼児やお年寄り、ホームレスなどの生活困窮者、また、病弱であったり障害があるなど、より影響を受けやすい人々にとって、暑さのもとに身を置くことは、健康を損なうのみならず、生命の危険をも招きかねません。事実、炎天下での激しい運動などにより、誰しもが暑さのために増幅した健康リスクにさらされます。

厳しい暑さのもとでは、外的環境や個々の健康状態が身体を冷やす能力に影響を及ぼします。たとえば、湿度が高いと、身体から暑気をはらうに十分な発汗作用が妨げられてしまいます。また、高齢者においては、高温の状況でもしっかりと身体を冷やすことができるかどうかという側面で、循環器や呼吸器系の持病がもたらす影響が懸念されます。

一般的に、厳しい天候や気候現象は、人々が暮らす条件と相互に作用しながら、その影響という点において、他の自然災害に類したリスクをもたらします。

しかしながら、対策としての政策やプログラム、実際的な対応策や人材育成のツールなどを都市やコミュニティに取り入れることで、気候や災害のリスクに対してより回復力を高めることが可能です。世界の国々の政府は、熱暑への暴露に対する方策として作業枠組みの構築に努めており、ひいては、そのより広範な緊急災害管理システムへの統合が果たされるよう取り組みを続けています。

日々の暮らしや仕事を快適に、また、生産性の高いものにするために、夏場の暑さに対処するにあたっては、以下の事柄に留意しましょう:

1. 暑さへの対応力を養い、暑さに備えた生活態度を心がける

  • 新鮮な水を多めにかつ定期的に飲む。
  • 服装には配慮して、軽く、袖の短いゆったりした綿素材のものを身に付ける(「クールビズ」を実践)。
  • 屋外では、日焼け対策を万全に。
  • 果物や野菜を食べ、こってりした食事やアルコールは避ける。コーヒーの飲み過ぎにも注意。
  • 喫煙は慎む。
  • 熱中症の兆候を知っておく、また、発症時の応急手当てができるようにしておく。

2. 周辺環境への目配りを

  • 家や職場など屋内で過ごす際には、できるだけ屋外の気温に近く、28℃を目処にエアコン温度を設定。扇風機を活用する。
  • 日中の暑い時間帯、直射日光を受ける窓には遮光を施す。
  • 発熱を伴う不必要な電化製品等(白熱灯など)の電源は切る。
  • 地域のニュース番組や保健当局から発信される注意報など、情報収集は怠りなく。

夏は健康で楽しく過ごすべき季節です。正しい知識をもって、暑さがもたらすリスク軽減に備えることは、今夏を、そして次の夏を元気に過ごすことにつながります。

 

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Heat waves, floods and the health impacts of climate change: A prototype training workshop for city officials (WHO, 2010)

健康影響評価に関する専門家会議

2011年の国連総会ハイレベル協議により採択された非感染性疾患(NCDs)の予防および管理に関する政治宣言について加盟国を支持するべく、現存知識の正しい評価と活用に取り組むことを主眼とした「多部門連携による保健事業のためのツールとしての影響評価に関する専門家会議」(2012年6月20日~22日)を神戸にて開催しました。

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世界禁煙デー2012記念フォーラム: 「たばこ産業の干渉を阻止しよう」

WHO神戸センターは、2012年5月31日、世界禁煙デーを記念して、公開フォーラム「たばこ産業の干渉を阻止しよう」を神戸にて開催しました。

学界、地方自治体、市民団体等からの60名を超える参加者とともに、日本におけるたばこ政策にみられるたばこ産業の干渉について、見識や意見の交換を行いました。

二時間にわたるフォーラムでは、神奈川県に続き今年兵庫県でも受動喫煙防止条例が採択されるなど、強化されつつあるたばこ規制の取り組みを弱体化させようとするたばこ産業の戦術が浮き彫りにされました。

2004年のたばこ規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組み条約)採択以降、日本は、たばこ市場におけるたばこ産業の業務に関連する法律と、人々の健康を守るためのたばこ規制計画との間で苦労してきました。国立がん研究センター がん対策情報センター たばこ政策研究部長 望月友美子博士は、たばこ規制枠組み条約およびそのガイドラインに基づいた効果的なたばこ規制政策の施策実施における日本の取り組みが不十分であると指摘、その結果として人々の健康が脅かされていることから、命を守るという観点からたばこ規制政策に対する国民意識を高める必要があると論じました。

WHO神戸センター・コンサルタントの柏原美那氏は、日本たばこ産業が意図的に繰り広げる喫煙マナー向上の推進を取り上げ、そのたばこ規制政策への影響について発表しました。たばこ産業の喫煙マナー戦略が、たばこがもたらす健康への影響から人々の注意をそらす目的で使用され、また、たばこ規制政策弱化をねらい地方自治体とのパートナーシップを構築しようとしている現実を紹介しました。

神奈川県は、2009年に屋内の公共の場所での喫煙を制御するための条例を施行した日本初の自治体です。しかし、条例策定の際には、やはりたばこ産業の干渉に苦しめられました。元神奈川県議会議員の関口正俊氏は、実際に展開されたたばこ産業による世論操作について発表。これは、たばこ会社がその従業員に強いて、神奈川県が条例導入に際して実施した世論調査に介入、屋内の公共の場所でのたばこ規制に反対する票を投じさせたというものでした。

プレゼンテーションに続いて、兵庫県医師会副会長 足立光平博士の進行で活発なディスカッションが行われました。ここでは、おもに、神奈川県・兵庫県の両県が体験し、また、日本に広く見られる傾向でもある、たばこ産業のマーケティングとたばこ規制政策実施を妨害する戦略について討議されました。

フォーラムは、WHO神戸センター所長のアレックス・ロスの閉会挨拶をもって終了しました。人々の健康を守るためには、たばこ規制枠組み条約の完全な順守が重要であり、これからも、WHOは、たばこ規制施策強化を通じて健康増進に尽力することを表明して締めくくられました。

​関連リンク:

パートナーシップを通じた多部門関連携による非感染症予防とコントロール促進のためのインターネット専門家会議の開催

2012年1月の第130回WHO執行委員会で可決された「非感染症予防とコントロール:非感染症予防とコントロールを進める世界的戦略の実行及び活動計画」決議に基づき、WHOでは2012年3月19日から4月19日にかけて、インターネットを介した専門家会議を開催しました。WHO神戸センターでは、専門家会議の基礎文書となる討議資料の提供を行いました。

世界保健デー2012: 高齢化と健康

WHO神戸センターでは、世界の関係機関と緊密に連携し、WHOの「Age-Friendly Cities(高齢者にやさしい都市)」の指標を開発するなど、高齢者にやさしい環境についての研究を行なっています。所在が日本にあることを利用して、日本固有の知見や経験を活用しながら、国内の研究者と協同して、健やかな人生をより長く過ごせるような介入策や政策を特定するための研究を行なっています。


WHO神戸センターは、今年の世界保健デーを記念して、日本における高齢化と健康に関する優先課題について考えるためのフォーラムを地元神戸で開催します。

世界保健デー2012記念フォーラム(4月7日)
『健康な高齢社会を目指して~世界最長寿国日本の軌跡と今後の展望』

テーマ:
  • 高齢化と健康に関する国内外の動向
  • 今後のビジョンとその実現に向けて必要な取り組み
スピーカー:

(登壇順、敬称略)
アレックス・ロス(WHO神戸センター)
武井貞治(厚生労働省国際課国際協力室)
狩野恵美(WHO神戸センター)
辻哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構)
鈴木隆雄(国立長寿医療研究センター)
近藤克則(日本福祉大学健康社会研究センター)
坂東眞理子(昭和女子大学)

モデレーター:

(敬称略)
家森幸男(武庫川女子大学国際健康開発研究所)

世界保健デーは、世界保健機関(WHO)が設立された1948年4月7日を記念して制定されたものです。毎年、各国の指導者から一般の人々にいたるまで、あらゆる人に参加を呼びかけ、世界的に影響を及ぼしている保健課題の1つに焦点をあてたグローバルなキャンペーンが展開されます。そのテーマは年毎に異なります。

"Good health adds life to years"

2012年の世界保健デーのテーマはAgeing and Health(高齢化と健康)であり、"Good health adds life to years" (健康であってこその人生)をスローガンとしています。今年のテーマは、65歳以上の老年人口の割合が世界最大である日本にとって、特に係わりの深いテーマです。生涯、良好な健康状態を保つことで、いかに暮らしが豊かで実り多いものになるか、そして家族やコミュニティにとって必要な人材であり続けられるかといったことに焦点をあてます。

世界の高齢化に関する主要統計

  • 現在の世界の60歳以上の人口は、1980年と比べて倍増しています。
  • 80歳以上の人口は、2050年までの間に、現在の4倍近い3億9500万人に達すると考えられます。
  • 今後5年以内に、65歳以上の人口が、5歳未満の子どもの人口を上回ると考えられます。
  • 2050年までには、65歳以上の人口が、14歳未満の子どもの人口を上回ると考えられます。
  • 世界の全高齢者の過半数が低所得国または中所得国に暮らしています。この割合は2050年までに80%に達すると考えられます。

人口構成の変化に伴う新たな課題

  • 低所得国においても、高齢者の多くは非感染性疾患により亡くなっています。
  • 高齢者は慢性疾患のリスクが高まるため、社会の高齢化が進むにつれて、障がいをもつ人の数が増加しています。
  • 世界中の高齢者の多くが虐待の危険にさらされています。
  • 長期介護のニーズが高まっています。
  • 世界的にみて、寿命が延びるにつれて、アルツハイマー病などの認知症患者の数が急激に増加します。
  • 災害などの非常時には、高齢者は特に危険にさらされやすくなります。

固定観念の打破

多くの伝統的社会では、高齢者は「長老」として尊敬される存在です。しかし、高齢の男女があまり尊重されていない社会もあります。高齢者の疎外は、公式な制度などによって生じるものから、私的偏見などに起因するものまで様々です。これらを「年齢差別(Ageism)」と呼びます。すなわち、年齢によって、個人やグループに対して固定観念を抱いたり差別したりするということです。これらの固定観念により、高齢者が、社会的・政治的・経済的・文化的・精神的な活動、市民活動などに全面的に関わることが阻まれるという状況が生じています。

主要なキャンペーン・メッセージ

  • WHOは、生涯にわたって健康なライフスタイルを維持することにより、より多くの命を救い、健康を守り、特に高齢期における障がいや苦痛を軽減することを奨励します。
  • 高齢者にやさしい環境づくり、病気の早期発見と予防および治療を行うことで、高齢者の福祉は改善できます。
  • 今すぐに行動を起こさなければ、人口の高齢化は、社会経済発展あるいは人間開発目標の達成を阻害することになります。
  • 高齢者は社会にとって価値のある人的資源です。高齢者が、自分は尊重されていると実感できることが必要です。
  • 生涯にわたり健康であれば、年を重ねることによってもたらされる恩恵を最大限に享受することができます。
  • 高齢者を大切にし、高齢者が積極的に日常生活を送れるような体制を整えた社会は、世の中の変化に上手く適応できるでしょう。

行動宣言

高齢期において良好な健康状態を保つために、次の行動が必要となります。

  • 生涯にわたって健康を促進する。
  • 高齢者の健康と社会参加を促進するような、高齢者にやさしい環境をつくる。
  • プライマリー・ヘルスケア、長期介護や緩和ケアへのアクセスを確保する。
  • 高齢者を尊重し、家庭や地域での生活を支援する。

マルチメディア

神戸で聞いてみました:『健康に歳をとるために、あなたはどんな事に気をつけていますか?』

WHO記者発表