News Archive by Year

2021

WKC 福岡県”One Health"国際フォーラムで講演

2021年1月30日、福岡県が主催する”One Health"国際フォーラムにて、WKCの茅野龍馬医官が基調講演を行いました。

人獣共通感染症が人類社会に与える影響は大きく、新型コロナウイルス感染症のパンデミックもその対応に世界が全力で取り組んでいます。オンラインで行われたこのフォーラムに、茅野医官は日本医師会の横倉義武名誉会長、日本中医師会の藏内勇夫会長とともに基調講演に登壇し、「世界における新型コロナウイルス感染症の現状と対策」という題で世界の現状と課題、今後の展望について講演を行いました。会の様子はオンデマンド配信で視聴可能です。https://one-health-fukuoka.net/index.html

WKC UNITAR研修で講演

2021年1月6日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、UNITAR(国連訓練調査研究所)が開催する「津波防災に関わる女性のリーダーシップ研修」で講演を行いました。

茅野医官は、この防災研修において、WHOが主導する災害・健康危機管理に関する取り組みやWKCが事務局を務めるグローバル・リサーチ・ネットワークの活動、新型コロナウイルス感染症の健康危機管理に与える影響などについて概説しました。

研修にはアジア太平洋諸国から20名程度の専門家が参加しました。

WKC 兵庫県立東灘高等学校で講演

WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、2021年1月18日、地元の兵庫県立東灘高等学校で講演を行いました。「WHOと国際保健~グローバル時代に活躍する皆さんへ~」というテーマで、医療従事者を目指す高校生たちに対して、国際保健の主要な歴史と今後の展望、新型コロナウイルス感染症の影響などについて概説しました。複数の生徒からの質問に答え、積極的な双方向の講義となりました。

WKC 兵庫県医師会で講演

WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、2021年2月7日、兵庫県医師会が主催する学術セミナーで、新型コロナウイルス感染症の現状と対策に関する講演を行いました。

「COVID-19 世界の動向と兵庫県での対応」と題した学術セミナーでは、茅野医官が世界の現状と課題、今後の展望について最新の情報共有をし、兵庫医科大学病院の竹末芳生教授がその病態と地域での対応について最新の知見を共有し、神戸市立医療センター中央市民病院の瀬尾龍太郎医長がその治療と現場の課題について報告しました。3時間超にわたるセミナーは100名近くの医師会員が受講し、地域の感染対策に貢献しました。

WKC 兵庫高校でオンライン講義

2021年2月3日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、兵庫県立兵庫高等学校で講義を行いました。新型コロナウイルス感染症に関して、2020年の振り返りと2021年の展望に関する講義を高校1年生に対して行いました。生徒からは複数の質問を受け、今後の対策のあり方やひとりひとりの心構えなどを共有しました。

WHO神戸センター所長 東京外国語大学の国連研修プログラムで講義

WHO神戸センターのサラ・ルイーズ・バーバー所長は1月27日、オンラインで行われた東京外国語大学の研修プログラム「国連システムの活動を現役職員から学ぶ」で講義を行いました。WHO神戸センターの概要や研究についてプレゼンテーションを行い、とくに主要研究分野であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジや災害・健康危機管理に対する取り組みについて説明。また、センターの所在地である兵庫県・神戸市との連携や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応における課題についても述べました。

 

前例のない1年:WHOのCOVID-19への対応

2020年は世界中の人々にとって、目に見えない新しいウイルスとの闘いに終始した1年でした。

ほとんどの人にとって、WHOの活動は直接目に見えるものではありません。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の終息に向けた挑戦、パートナーとのWHOの活動の1年を振り返り、2021年の課題を提示します。

 

 

前例のない1年:WHOのCOVID-19への対応

(WHOウェブサイト:A year without precedent: WHO’s COVID-19 response2020年12月23日発行より翻訳)

その中で達成できた数々の実績と、パンデミックの終息に向けて今なお活動しているパートナーシップを振り返ります

危険なウイルスが出現して急速に世界中に広がるという、何十年も前から公衆衛生のコミュニティが恐れていた事態が起きました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、人が集まると感染しますが、人々の結束によって解決される問題でもあります。他の人を守るための一人一人の小さな行動から、研究やイノベーションに関する国際的な協力まで、去年はさまざまな形で世界がウイルスに対抗するべく団結しました。そして、COVID-19のワクチンの接種開始という大変な功績とともに年の瀬を迎えました。

WHOは、科学、具体的解決策、結束によって、この100年間で最大の健康上の脅威に対処しています。これらのツールを用いて展開してきたCOVID-19対応を概観します。

 

ガイダンス、調整、リーダーシップ

WHOがパンデミックに対応するのはこれが初めてではありません。またこれが最後でもありません。しかし、COVID-19はこれまでに直面した中で最も困難な危機です。

2020年1月30日、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、COVID-19のアウトブレイクを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言しました。この宣言はWHOの最高レベルの警鐘で、全ての国に注意を喚起し、直ちに行動を起こすよう呼び掛けています。

 

WHOの活動を日ごとに紹介するインタラクティブなタイムラインをご覧ください

未知のウイルスにどう立ち向かうべきか、各国はWHOにガイダンスを求め、WHOはそれに応えました。この新しい感染症の最初の報告から2週間の内に、WHOは、ウイルスの検査方法、患者の治療方法、国民への情報提供、さらに多くの症例に備える方法について、各国に向けた最初のアドバイスを公表しました。

また、WHOは確立された専門家ネットワークを活用して、ワクチン、治療法、診断法、その他のツールの迅速な開発を促進しました。最初のCOVID-19の検査室検査は、科学者が遺伝子配列を共有してからわずか数日後に開発され、最初の検査キットは数週間以内に世界中の検査機関に出荷されました。

 

情報や物資の提供

2020年、WHOは世界中に救命用品や機器を送り、ウイルスの進化した性質や自分の身を守る方法についての重要な情報を何十億もの人々に伝えました。

COVID-19パートナーズ・プラットフォームは、150以上の国、国連関連機関、900以上のパートナーが、リアルタイムで行動と資源を一緒に調整できるようにすることで、健康危機への関与の新しいモデルを打ち出しました。

 

 

重要な物資へのアクセスの確保

パンデミックと戦うために命を懸ける医療従事者を保護することは、WHOの最大の優先事項のひとつでした。パンデミックの影響で必要不可欠な物資が急激に不足したため、COVID-19サプライチェーンシステムを確立することで物資を補充し、その品質を保障し、各国によるサプライチェーンの舵取りを支援しました。

2020年に実施された渡航制限や航空便の減便は、世界規模のサプライチェーンを非常に圧迫しました。WHOのロジスティクス部門は24時間体制で、最も必要としている人々に対応するための物資を調達しました。

YouTube: マスクの旅を追う

マスクの必要性は広く知られていますが、同様に重要な資源であるにもかかわらずあまり一般には知られていないのが、医療用酸素です。医療用酸素は重症患者の呼吸を助け、挿管を避けることができます。

医療用酸素の生産と供給は、需要の予測が難しいために病院予算から取り残されることが多く、パンデミック前から世界的に課題となっていました。

COVID-19への対応として、WHOは脆弱な国々のために医療用酸素を調達し、配布してきました。2020年12月までに、WHOは、1万6,500台以上の酸素濃縮器と4万台のパルスオキシメーターと酸素モニターを121か国に送りました。これらの装置は、例えば重度の肺炎の小児、手術を受けている人、妊婦など、より広い対象にも健康上のメリットをもたらします。

WHOはまた、パプアニューギニア、ウクライナ、ソマリア、南スーダンなどの国々と協力して、需要の増加に対するより持続可能な解決策、すなわち酸素発生プラントの開発に取り組んでいます。

 

 

メッセージを伝える

世界中の人々が、明確、正確かつ有益な情報を欲していました。2020年1月初旬に最初のDisease Outbreak Newsを発表したことを皮切りに、WHOはその需要に応え、年間で200以上の日報を発表し、40近くの疫学的・運用的な更新情報を発表しました。WHOはCOVID-19ダッシュボードを毎日更新し、パンデミックの最新状況をリアルタイムで提供しています。

最前線で対応する人が安全にパンデミックに対処できるように、オープンWHOプラットフォームを通じて無料のオンライン・トレーニング・コースも配信しました。

昨年、WHOは加盟国説明会を38回開催し、その中で79か国の保健大臣やその他の指導者が、連帯の精神に基づきCOVID-19の経験を共有しました。

メディアも重要なオーディエンスであり、パートナーです。WHOは1年で130回を超えるジャーナリスト向けの状況説明会を実施し、COVID-19の最新情報を共有しました。WHOの上級幹部は他のパブリック・フォーラムにも参加しました。毎週50回以上の#AskWHO Q&Aセッションをソーシャルメディア上で開催し、Science in 5シリーズでは、COVID-19に関連する科学を一般の人々に説明する19のポッドキャストやビデオを配信しました。

WHOはまた、ウィキメディア財団、Facebook(Instagram, Messenger, WhatsApp)、Google、LinkedIn、Pinterest、Snapchat、TikTok、Twitter、Viberなどの企業を含む主要なパートナーと組み、新たなオーディエンスを巻き込んでいます。またミニオンズペッパピッグなど、愛されているキャラクターの製作チームとも連携しています。



インフォデミック、つまりCOVID-19のパンデミックに関する情報の氾濫を考えると、アウトリーチを拡張することは特に重要でした。出回っている情報の全てが信頼できる訳ではなく、ウイルスに関する有害な噂や誤報もありました。

 

各国への直接的支援

2020年2月上旬、WHOは、国内外のパートナーとの活動を導くために、主要な公衆衛生対策をまとめた「戦略的準備・対応計画」を発表しました。

WHOは150の国事務局と6つの地域事務局を通じて、各国の政治家、医療従事者、病院長、情報発信者、物流の専門家、検査技師などと協力してきました。世界各国からの要請に応じて、専門家のバーチャル派遣団や対面の派遣団を送りました。

対応が行われている真っ最中に、その対応の評価や軌道修正を行うことが最も望ましいことから、30か国以上の国々がWHOを招き、イントラアクション・レビューと呼ばれるプロセスの中で、何がうまくいったかを判断し、今すぐに修正すべきことを特定し、次回への準備はどうすればよいかを考えました。

またWHOは70の緊急医療チーム(国際基準)の各国への派遣を支援し、840の国家チーム(準国際基準)が緊急医療チームの手法を用いて動員されました。

 

 

しかし、世界中のCOVID-19への対応の根幹は、つねに医療従事者です。場所によっては、一時的にポリオなどの他の病気への対応からシフトしなければならないところもありました。アフガニスタン、パキスタン、ソマリア、南スーダンを含む国々で、30,000人以上のポリオ担当者がCOVID-19の潜在的な感染者やその接触者を追跡し、地域に情報を提供しました。パキスタンでは、ポリオ・データ管理システムにより、感染者の検出を向上させることができ、COVID-19に関する誤報を打ち消すのにも役立ちました。

WHOは、世界中の検査キャパシティを高めるために、技術的支援、バーチャルトレーニング、医療機器や物資を提供しました。例えば、COVID-19が最初に出現した頃、ソマリアには分子検査を行うキャパシティが全くありませんでしたが、2020年の終わりまでには、この種の検査ができる検査室が6つ設けられていました。

 

 

誰ひとり取り残さない

WHOは、23の国連のパートナーと協力して活動する、COVID-19危機管理チームを率いています。WHOはまた、パンデミックによって悪化した人道的危機に直面している60か国以上のニーズに対応するために、より広範な国連関連機関やパートナーと密に協力して、グローバル人道対応計画を策定し、実施しています。

WHOは、COVID-19への即時の社会経済対応に向けた国連枠組み省庁間常任委員会の推進も支援してきました。

最も困難な状況下では、WHOは必要不可欠な医療サービスの運営を維持するために努力しています。パンデミックを通して、各国と協力して、病院や診療所が他の疾患に苦しむ患者を受け入れ続けるよう支援してきました。また、WHOは、定期的な小児予防接種を継続し、周産期医療も持続できるように各国を支援しています。

さらに他の緊急事態が発生したときにも支援を提供しました。レバノンの首都ベイルートの港が爆発による壊滅的な被害を受けた翌日には、20トンのWHOの医療物資を積んだ飛行機が同国に到着しました。またWHOは、募金を呼びかけ、パートナーと協力して負傷者のフォローアップケアや医療従事者のメンタルヘルスケア支援を提供するとともに、現地におけるCOVID-19の検査と治療を拡大しました。

 

3つの異なる状況におけるCOVID-19へのWHOによる対応

   COVID-19に取り組むためにパキスタンの検査室のキャパシティを高める (2020年10月22日)

  バングラデシュ:世界最大の難民キャンプでのCOVID-19への対応 (2020年10月21日)

  メキシコシティにおける疫学的サーベイランス主導のCOVID-19対応 (2020年11月17日)

 

科学と研究を中心としたパンデミック対応

2020年に発表したWHO R&Dの詳細な枠組みは、科学者、開発者、規制当局、資金提供者の間で、検査、ワクチン、治療法などを含む、パンデミックに関する重要な研究を加速させるための国際的な科学的共同研究のためのプラットフォームを提供しました。

早い段階で、世界中の130以上の科学者、資金提供者、および製造業者がCOVID-19のワクチン開発を加速させるためにWHOと協力することを約束しました

WHOは、このウイルスの性質とそれが引き起こす疾患や免疫反応、およびワクチン候補を評価するために必要なツールについて迅速に理解を深めるために、世界の優れた科学者によって、公表前のものも含めたデータの分析を進めています。

2020年2月、WHOはこの新しいウイルスに関する世界規模の研究とイノベーション・フォーラムを開催し、40か国以上から900名近くの専門家や資金提供者が参加し、これまでに得られた知見を評価した上で、前進するための課題を設定しました。

フォーラムは、ウイルスの拡大、制御方法、疾患の重症度、最も感染しやすい人などに関するその後の研究を促進しました。治療方法の評価、個人用防護具(PPE)の最適な活用方法、動物由来感染症を予防するための動物宿主の特定などが優先すべき研究課題として設定されました。

検査については、このフォーラムにおいて、地域における迅速検査の使用が重点検討課題とされました。治療法とワクチンについては、「コア・プロトコール」とプラットフォーム試験を用いて、治験薬およびワクチン候補の評価を加速させることになりました。

フォーラムでは、資金提供者の動員、アウトブレイク対応への社会科学分野の統合、そしてウイルス材料、臨床検体およびデータの国際的な共有を進めるための準備も整えました。

 

ワクチンについては、WHOがその評価基準を設定しました。ワクチンに必要とされる重要な特性を特定し、それらを用いて、ワクチンの政策、規制、配備に関する最善の意思決定を行うために不可欠な、有効性と安全性のデータを生成するための臨床試験のデザインを推進しました。

WHOはまた、すべての候補ワクチンについて、それぞれ前臨床段階から臨床段階まで経過を追いながらその進捗を報告する、信頼性と権威あるワクチン候補ガイドを世界に提供しました。

治療に関しては、2020年6月に、WHOは、副腎皮質ステロイドであるデキサメタゾンがCOVID-19の重症患者の救命につながることを示した英国からの臨床結果を歓迎しました

WHOの国際的な協力体制のもと、正しい治療法を迅速に見つけるためのグローバルな試験を世界で実施しました。

2020年3月に開始された、WHOのSolidarity trial(連帯試験)は、COVID-19の治療薬を対象とした世界最大級の臨床試験の1つとなり、治療薬候補としてのレムデシビルとインターフェロンβ1aの世界最大の試験となりました。

ピーク時には、30か国、14,000人以上の患者、500近くの病院が試験に参加しています。最初に検討された4種類の薬剤について、患者の死亡率、人工呼吸の必要性、入院期間に対して有意な影響が認められなかったため、連帯試験の次の段階の対象として、モノクローナル抗体を含め、複数の薬剤候補を、独立した専門家のグループが検討しています。

 

ACTアクセラレーター

YouTube: ACTアクセラレーターへのアクセスガイド

 

パンデミックが始まって以降、WHOはパートナーと協力して、COVID-19に対抗するために必要なツールへのタイムリーで公平かつ手頃な価格のアクセスを促進してきました。

2020年4月にWHOとパートナーによって開始された、COVID-19のツールへのアクセス(ACT: the Access to COVID-19 Tools)アクセラレーターは、疾患と戦うためのツールを開発するための史上最速かつ最も調和された世界的な取り組みを実現させました。

ACTアクセラレーターは保健システムの強化へのコミットメントに裏打ちされた、COVID-19の診断検査、治療薬、ワクチンへの公平なアクセスを確保することを目的としています。

診断:

  • 中低所得国向けの迅速抗原検査を12千万個準備
  • 中低所得国向けに2,700万個以上の分子検査と1,200万個以上の迅速抗原検査を調達
  • 190か国以上で2万3,000以上にトレーニングを提供
  • 2021年の目標:年央までに5億回の検査を整備

治療:

  • 唯一のWHO承認のCOVID-19治療であるデキサメタゾンを290万回分調達
  • 21の治療薬に関して、47か国にわたって8万5,000の患者が参加する15の臨床試験の実施を支援
  • 2021年の目標:年間2億4,500万コースの治療を実施

ワクチン:

  • 190か国がCOVAXファシリティに参加
  • 事前買取制度のために24米ドルを調達するも、さらなる資金が必要
  • 2021年の目標:年内に20億回分の安全で効果的なワクチンを接種

 

ワクチンに関する詳細

ACTアクセラレーターの重要な目標の1つは、COVID-19のワクチンの安全な開発と製造の加速と、世界中の全ての国に公平で公正なアクセスを確保することです。COVAXファシリティは、この目標を達成する上で重要な役割を果たしています。

WHOはCOVAXの管理において、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携しています。

2020年末時点で、世界の人口の90%を占める経済圏が、COVAXを通じてワクチンを受け取れる基準を満たしていました。また世界の最貧国のために、COVID-19のワクチンへのアクセスを確保する革新的な金融メカニズムである、事前買取制度(AMC: Advance Market Commitment)のために24億米ドルが調達されました。しかし、この業績をもってしてもなお、2021年のAMCだけでも46億米ドルが必要とされています。

 

2021年の課題への挑戦

WHOのCOVID-19への対応は、過去のアウトブレイクから得られた教訓に基づいています。

WHOのCOVID-19に関する初期のガイダンスは、中東呼吸器症候群(MERS)に関する文書を参考にしました。各国が非常事態に備えることを支援する方法や、新たな疾患が発生した際に研究を加速させる方法などに関して、2014年の西アフリカでのエボラ出血熱のアウトブレイク以降に実行した改革が、今回のCOVID-19への対応のスピード、柔軟性、および有効性を支えています。

しかし、2021年にやるべきことはまだ沢山あります。パンデミックはまだ世界の大部分で猛威を振るっています。大規模な資金不足もあります。

ワクチン・ナショナリズムにより、COVID-19に対する最良のツールであるワクチンが、各国の間で公平に共有されないという真の危険性も存在します。多くの国の保健制度は、全ての保健領域を管理しながら、COVID-19のワクチン、検査、治療を展開することに苦労することが見込まれます。

YouTube: Dr マイク・ライアン:COVID-19ワクチンの公平な配分について

 

(WHOウェブサイト:A year without precedent: WHO’s COVID-19 response2020年12月23日発行より翻訳)

WHO神戸センターにとって初めてのオンラインフォーラム:看護師、保健師、助産師を称える

看護師、保健師、助産師はヘルスケアの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような感染症や自然災害などによる健康危機の最前線で対応に従事します。

昨年11月23日、国際看護師・助産師年である2020年に際して、WHO神戸センターは日本の協力機関と連携して、WKCフォーラム「最前線を担う看護師~グローバルヘルスにおける役割と展望~」を開催しました。COVID-19流行の中、WHO神戸センターにとって初のオンラインフォーラムとなったこのフォーラムを通じて、看護師、保健師、助産師の貢献を再認識しました。

地元や日本の研究・教育機関、保健医療サービスの提供団体等を中心に、およそ300名がフォーラムに参加しました(1)。第1部では、国立国際医療研究センターが翻訳したWHOの文書「世界の看護(State of the World Nursing Report)」を用いて、日本の看護の現状と課題について議論しました。第二部では看護師・保健師・助産師が貢献する様々な現場(病院や介護施設、訪問看護、検疫所、保健所など)の専門家から、COVID-19対応における看護師・保健師・助産師の役割や、COVID-19の現場への影響と今後の展望について議論しました。

WHO神戸センターのサラ・ルイーズ・バーバー所長は、開会挨拶で「COVID-19パンデミックは、世界中の看護師や助産師らの多大な貢献に光を当てました。同時に、保健医療サービスの提供や過重労務、資源の不足なども顕かになりました。保健医療の専門家が、COVID-19に関連する偏見や差別にさらされていることは大変悲しいことです。私たちに必要なのはパンデミックに対して協力して臨む“連帯”です。」と述べました。

災害対策と健康危機管理の担当官であり、本フォーラムの責任者である茅野龍馬医官は、フォーラム参加者に対して、この世界初の課題に対して、看護の専門家が大きな責任と期待を負っていることの困難さを改めて強調しました。茅野医官は、看護師や保健師、助産師を社会全体で支えることの重要性を訴えるとともに、「神戸市のスローガン“Be KOBE”とともに、WHOはCOVID-19に対して3つのスローガン“Be SAFE、Be SMART、Be KIND”を掲げています。特に“Be KIND”、人に優しく、共感と敬意をもって接することの大切さを強調したいです。どれだけ気を付けていても感染する可能性はあります。感染者や感染リスクの高い人を責めることは、感染を隠すことにつながり、結果さらなる感染拡大が起きます。明日自分が感染するかもしれない、ということをいつも忘れないでください。看護師を含む保健医療従事者は、自らが感染リスクを負って、現在の、そして未来の社会に貢献しています。自分が感染したとき、助けてくれるのは医療従事者だということを、忘れないでください。」と述べました。

フォーラム参加者はWHO神戸センターがつくったこの機会に謝意を表しました。WHO神戸センターは、看護師、保健師、助産師を含む保健医療従事者と社会の全ての人たちが、共に手を取り合ってパンデミックに取り組んでいけるよう、支援を続けて参ります。

 

 

(1) 連携機関と演者の所属する協力機関:参議院議員、国立国際医療研究センター兵庫県立大学、神戸市看護大学、兵庫県看護協会、日本看護協会・Nursing Nowキャンペーン、聖路加看護大学、千葉大学、兵庫県立尼崎総合医療センター、神戸大学医学部附属病院、東京検疫所、神戸市保健所

 

1月17日によせて

1月17日は「ひょうご安全の日」、1995年の阪神淡路大震災が起こった日です。WHO神戸センターは震災後に兵庫県、神戸市、神戸製鋼、神戸商工会議所の支援のもとで設立されました。震災の経験を活かし、WHO神戸センターは現在、「災害・健康危機管理」にの研究に取り組んでいます。災害対策と健康危機管理は、世界が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに直面する中、今年特に重要なテーマとなります。国内外の関係者と協力し、世界の全ての地域やコミュニティの安全向上に尽力します。

ミャンマーにおける急速な高齢化に向けた政策の手引きとなる新たなエビデンスを構築

ミャンマーの高齢者を対象とした初の縦断コホート研究の初期調査の結果が医学ジャーナルBMJ Openに掲載され、ミャンマーが今後急速な高齢化に対応していく際に必要な、実証に基づく政策を立案するためのベースライン・データが示されました。本研究は、WHO神戸センターおよび日本医療研究開発機構の支援を受けて実施されました。

ミャンマーの人口は、2030年までに約13%が60歳以上になると予測されています。東南アジアの多くの国々でも同様に急速な高齢化が起きていますが、効果的な医療制度や介護制度はまだ確立されていません。

本研究は、世界で最も高齢化が進む日本人高齢者の健康と福祉を調査するために2010年に開始された、日本老年学的評価研究(JAGES)にならって実施されました。JAGESの調査票が国外で適用されるのは本研究が初となります。日本のデータと直接比較することもでき、ミャンマーの高齢者の介護リスクおよび健康と福祉の決定要因の評価が可能となります。

ベースライン調査の結果では、農村部のバゴー地方に住む高齢者の方が社会経済的地位が低く、体調不良を訴えた方が多かった一方で、都市部のヤンゴンにすむ高齢者は社会的交流が比較的少なく、BMI(ボディマス指数)が高いものの、日常生活の動作を行う能力(自己申告による)は高スコアを示しました。両地域とも、身体機能および認知機能は、同年代の男性と比較して女性の方に衰えが見られました。

本調査は2021年に追跡調査を実施し、死亡率、体の動き方の変化、およびその他の身体的・精神的疾患の発症に関するデータを収集する予定です。それにより、介護を必要とする可能性のある高齢者のリスクを評価でき、社会的に不利な立場にある女性の高齢者への支援体制の構築など、研究によるエビデンスを政策や実践に落とし込めるようになります。

プロジェクトの詳細および論文のリンクは、こちらでご覧いただけます。