サービス提供

サービス提供

サービスは、どのように保健医療施設、サービス、医療関係者を組織して地域のニーズに応えるかということに焦点を当てて構成され、提供されています。カバレッジ、質、経済的保護、健康アウトカムを確実にするためには、サービスをどのように提供するかが重要です。

WHO神戸センターの重点分野

サービス提供モデル

WKCは、高齢化という観点から、カバレッジ推進や経済的保護の達成に向けた各国の取り組みが飛躍的に前進するように支援するため、サービスの編成、提供、資金調達に関する研究を実施しています。

その際、他の状況や国での再現が可能となる要素を特定できるような方法で研究を実施する必要があります。

持続可能な資金調達

高齢化に伴い、医療費や保健サービスへの支払いに対する政策立案者たちの懸念は日々強まっています。WKCは、高齢化という観点から、医療費増大、財源確保に関する研究を実施しています。医療サービスの価格がどのように設定されているかなど、効率と質を改善するための政策選択に関する研究も進めています。

イノベーション

イノベーションとは特定の問題を解決されるためにデザインされるもので、各国の状況によって内容は様々です。政策、制度、技術に関わらず、新たな方法やアプローチはイノベーションに含まれます。WKCは、良質な保健医療を提供するための国家レベルのイノベーションを文書化して評価し、各国内で拡張するための条件を判定し、他国での普及を可能とする要素を特定することを目指しています。

なぜ重要なのでしょうか?

 

各国がUHC達成に向けて努力する中で、情報に基づく政策オプションの立案には、より良質なエビデンスが必要であると考えられます。

高齢化という観点からの持続可能な財政制度

背景

高齢化に伴う人口減少を考慮し、減少する税収から保健制度や社会制度の資金をどのように調達するのかについて、各国で関心が高まっています。また、高齢者の保健ニーズに応えるサービスの需要拡大に対応するための支出やサービス提供モデルのモニタリングにも関心が集まっています。

方法                                                                                                                                                                          

WHO神戸センター(WKC)は、欧州保健制度・政策研究機構とWHO医療財政チームと協同し、医療費や保健医療制度の資金調達力に人口構成の変化が与える影響に着目した概要ペーパーを作成しています。この研究結果については、最新のデータと情報を網羅し、各国に政策オプションを提示する内容の政策概要2件をまとめる予定です。データの取得は高所得国に限られるかもしれませんが、政策概要では、急速に高齢化している低中所得国の状況に対する示唆についても考察します。

結果                                                                                                                                                                             

中間報告では、労働市場に左右される財源に大きく依存する保健制度は、人口の高齢化に伴って維持することが難しくなるなることが明らかにされています。

結論       

研究実施中です。

保健医療における価格設定とユニバーサル・ヘルス・カバレッジのための示唆

背景

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実施にあたって、誰を公益の対象とするのか、どのサービスを対象とするのか、いくら支出するべきかを政策立案者は決定しなければなりません。UHC実現に向けて財政支出が増加する中、財政支出に見合う価値はどれくらいか、人々のニーズに応えるためには資金提供やサービス編成をどのように決定すれば良いのかという点に、各国からの注目が集まっています。価格政策は、給付、医療提供者への支払い、保健医療の民間部門の資源の利用に関してどのように決定するかということと密接に関わっています。しかし、価格設定と価格交渉のプロセスについてはほとんど明らかにされていません。

方法                                                                                                                                                              

さまざまな保健医療制度、サービス導入と価格設定の実践、幅広い政策目標達成のための資金調達制度改善の公約に関する9カ国の事例研究が実施されました。どのような状況にも対応できるような唯一のモデルというものは存在しないことを認識した上で、各国、特に低・中所得国におけるアクセスや導入しやすさを向上させ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた国際公約の実現を支援するため、本研究は、最適事例を創出し、将来的な研究領域を特定することを目的としました。

結果                                                                                                                                                                 

価格計算の方法は、支出、量、アウトカムに関するデータ収集システムの能力に左右されます。価格統制、価格差別の回避、質向上に向けたインセンティブの付与という点で、片務的な価格方針の方が概して上手く機能しています。例えば、予約のない外来受診の繰り返し、入院、警鐘事象に関する費用の削減など、量の制御や質の改善を目的として価格設定は用いられています。地方や遠隔地の施設および低所得の患者や高額療養を要する患者を多数治療している施設のために価格を調整するなど、公衆衛生の幅広い目標を達成するためにも価格調整が行われています。

結論                                                                                                                                                                

全体的な価格設定の枠組みは、透明性の高い方法である必要があります。このプロセスを管理監督する第三者機関を設立している国も複数あります。データ・インフラストラクチャへの投資が重要です。政策に向けて情報提供するには系統的な検証と評価が必要とされます。他国での教訓については、規制環境や制度面での能力など、各国独自の状況での実現可能性に基づいて評価すべきであると考えられます。

介護分野における外国人技能実習のための ICF(国際生活機能分類)を基盤とした 評価ツールの開発

世界の多くの国々では人口高齢化が進行し、現場における介護の負担はますます深刻になっています。この状況は東アジアにおいて顕著で、介護人材の需要は2050年までに少なくとも倍増すると見込まれています。このような背景から、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を支える介護人材の研修制度が必要とされています。
日本では世界的な介護職の人材不足に対応するために「外国人技能実習制度」の対象職種に新たに介護職種が追加されることになりました。これは、介護分野での就労を希望する外国人を対象とした初めての実習プログラムです。
そして、このプログラムの目標実現のためには、技能・技術の移転の達成度を客観的に評価するツールが不可欠です。また、この評価ツールは国際的に適用可能であることが望まれます。

研究目的

本研究ではこの実習プログラムに焦点を当てて、外国人研修者の介護技能習得の達成度を評価するツールの開発を目的としています。また、海外での応用も見据えて、既存の評価ツールの国際生活機能分類(ICF)の活用の可能性も検証します。
本研究目的は次のとおりです。
1. 外国人技能実習制度のために構築された現行の評価ツールを基に、ICFの概念を用いて新たな評価ツールを開発する。
2. 新規に開発したツールについて、日本の介護技能実習現場での質問票調査や聞き取り調査を実施し、その有用性を実証する。

研究手法

次の3つの手法を用いて研究に取り組みます。
a) 外国人技能実習制度のために構築された現行の評価ツールを基に、ICFの概念を用いた新たな評価ツールを開発。
b) 研修施設に提出される自己評価質問票から得た追加データの集積、解析による新ツールの定量的な妥当性評価。
c) 綿密な聞き取り調査による新ツールの追加的な定性検査。

期待される研究成果

本プロジェクトを通じて日本のみならず他国においても、介護人材育成の研修制度の開発に貢献することが期待されます。また、これらの研修制度が多くの国でも応用されることで、世界的な介護人材の不足軽減に貢献することが期待されます。

研究チーム

リサーチ主導施設:兵庫県立大学
兵庫県立大学 大学院経営研究科 筒井 孝子 教授(主導研究員)
国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 大夛賀 政昭 主任研究官
静岡県立大学 経営情報学部 東野 定律 准教授
広島大学 大学院社会科学研究科 マネジメント専攻 原口 恭彦 教授

 

高齢者の生活の質を高めるための 新しい支援テクノロジーの開発

高齢者にとって、日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)を維持することは極めて重要であり、身体機能を維持・向上させるための新しいテクノロジーが必要とされています。また、高齢者の転倒は加齢や疾患に伴う筋力・身体機能の低下(サルコペニア)によって起こり、ADLやQOLを著しく損なう原因として広く知られています。
本研究では、新しく開発された支援テクノロジーを使って、サルコペニアや転倒のリスクを同定・軽減することを通じて、高齢者のADLとQOLの維持・向上のための戦略立案への貢献を目指します。

研究概要

本研究は下記の3部より構成されます。
パート1(和歌山県立医科大学担当):大腿部表面筋電図の計測値から身体活動量を評価するためのアルゴリズムを20歳以上のボランティア20名の計測データをもとに開発します。開発されたアルゴリズムを65歳以上の20名の入院患者に適用し、入院中の高齢者がADLや歩行機能を維持するためにどれほどの活動量(筋収縮)が必要かを評価します。
パート2(大阪医科大学担当):新しく開発された装着式の加速度計を用いて、65歳以上の健常者50名の日常生活の動作を記録します。被験者の日常生活における転倒とその前後の関連動作を解析することによって、転倒リスクの高い姿勢や活動などを同定します。
パート3(奈良県立医科大学担当):大学病院でリハビリテーションを受ける入院患者(6疾患、各疾患群20名)を対象に、装着式の加速度計を用いて日常生活の活動度をリハビリ開始から7日間測定します。得られた活動量データを解析し、リハビリの効果および病勢についての疾患別層別化を試みます。本結果は、効果的なリハビリテーション実施における理想的な活動度を設定するための基礎データとして活用されます。

期待される成果

1. 大腿部表面筋電図の計測値から身体活動量を評価するための新しいアルゴリズムが開発され、幅広い活用が期待されます。
2. 高齢の入院患者のADLを維持するために必要な最低限の身体活動に関する重要な基礎情報が得られ、QOLの向上のための効果的な助言につながります。
3. 高齢者の転倒しやすさに影響する姿勢や生活活動の関係に関する重要な基礎情報が得られ、転倒予防のための効果的な助言につながります。
4. 効果的なリハビリテーション実施に理想的な活動量に関する基礎データが得られ、更なる大規模研究を通じて入院患者の活動量ガイドラインの策定につながります。
5. 3つの研究を通して、これらのデータを遠隔で収集・蓄積して高齢者の身体活動や転倒のリスクをリアルタイムに評価し、効果的な助言を提供することで、転倒を予防する高齢者のADLやQOLの向上に有用なシステム開発につながります。

研究チーム

研究主導施設: 和歌山県立医科大学
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 田島 文博 教授(主導研究員)
和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 上條 義一郎 准教授
大阪医科大学総合医学講座 リハビリテーション医学教室 佐浦 隆一 教授
奈良県立医科大学リハビリテーション科 城戸 顕 診療部長 病院教授
京都府立医科大学リハビリテーション医学教室 三上 靖夫 病院教授
近畿大学リハビリテーション医学講座 福田 寛二 教授

 

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進のためのリーダーシッププログラム

高齢化の状況は国によってさまざまですが、高齢化をすでに経験している国であっても、これから迎える国でも、高齢社会が保健・福祉制度に与える影響が何かを十分に把握できていません。そこで今、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けて保健制度の強化に取組むことが、現行の制度を抜本的に変革し、将来に備える良い機会となります。そのためには公平性の確保が重要で、部門横断的な取り組みと地域社会の巻き込みが必須になります。 各国がまだ高齢化対策の初期段階にあることを考慮すれば、新たな保健制度の設計、サービス提供、財源確保に関する見通し(ロードマップ)の策定を進めるチャンスと捉えることもできるのです。

本プログラムでは、各国の担当者(個人および担当チーム)を対象としたリーダーシップ・トレーニング、連携強化支援、結果指向の共同行動イニシアチブの策定などのプログラムを提供し、各国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)アジェンダの推進と加速を後押ししていきます。そして、各国の政治経済制度を方向づけ、「ノウハウ」を明確にすることに主な重点を置いています。

このプログラムは神奈川県との共同開催で、特に低・中所得国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)分野のリーダーを対象として将来の政策オプションに関するエビデンスやデータ、情報、事例を共有する機会を提供します。

プログラムの目標は下記のとおりです。

1. UHCの実現・人口高齢化に対応する新制度への改革を主導、推進、設計、実施する国レベル・地方レベルの意思決定の共有する。

2. どうすれば高齢化社会のニーズに保健制度が対応できるか日本およびアジア諸国がそれぞれの教訓や知見を共有する。

3. 各国における行動計画(またはロードマップ)の策定を支援する。

4. 高齢者を支える保健・福祉制度設計に必要な要素(後述)に関わる高齢先進国(日本、シンガポールなど)の教訓・事例やWHOの知見を提示する。a) 必要なサービスの選定、b) 提供システムのモデル(および各国のニーズに合わせた応用)、c) 財務戦略、d) 保健医療従事者に及ぼす影響、e) 技術の利用、f) 実現するためのガバナンス戦略。

高齢化するアジアの技術的・社会的イノベーション

この研究プロジェクトでは、東アジア主要国の高齢社会を比較しながら、アジア地域の人口高齢化と関連政策課題を研究します。具体的には、アジアの主要な高齢化社会における公共政策の動向調査、各国の高齢化対応施策の事例紹介、将来的な人口高齢化課題に対応するための公共施策立案のエビデンスベースの検討などです。

具体的な目標は、既に高齢化が進行している都市の教訓や成功事例を高齢化しつつあるアジアの他の都市にも転用していくことです。

WHO神戸センターは高齢化するアジアにおける技術的・社会的イノベーションに着目しています。

終末期の高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデル:スコーピング・レビュー

かつてない速さで高齢化が進む現代、加齢によって徐々に進む機能低下に適応しながらも、高齢者が充実した生活を送るためには保健サービスと社会サービスの再編が国際的にも重要視されています。

本研究では、終末期の高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデルに関するエビデンスを包括的に集約しました。検討対象は各国の保健、社会、福祉サービスとし、特に低・中所得国に注目しました。

 

手法                                                                           

本研究ではシステマティック・レビューを対象とした迅速なスコーピング・レビューが用いられ、MEDLINE、CINAHL、EMBASE、Cochrane Database of Systematic Reviewsに登録されている2000~2017年発表の文献を検索し、参照検索で補足しました。そして、高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデルの有効性を検討したレビュー論文の中から、サービス提供の対象集団の50%以上が60歳以上で、サービス提供が最期の1~2年とされているレビュー論文を選定しました。検索結果は個別にスクリーニングし、選定されたレビュー論文の質をAMSTARに基づき評価、ナラティブにデータの記述、集約を行いました。

 

結果                                                                                  

検索したレビュー論文2238件中、72件(Cochraneレビュー9件を含む)が条件を満たし、総計784,983人のデータを検討しました。地域的には南北アメリカ(52/72)、ヨーロッパ(46/72)の研究が多数を占めました。これらのレビューで生活の質の向上を目指すサービスモデルを1)身体機能に重点を置く総合的な高齢者ケアと、2)症状や不安に重点を置く総合的緩和ケアに分類しました(図1)。両モデルが目指すアウトカムはそれぞれ異なりますが、共通する要素には「人中心のケア」「サービス利用者と提供者への教育」「多職種によるサービス提供」などがあげられます。レビューでは117のアウトカムが特定され、そのうち21%がメタ解析された結果、生活の質(4件中4件)、個別の症状(5件中5件)への効果が示されました。全体的に経済学的分析はあまり行われていませんでした。

 

結論                                                                          

目指すアウトカムは異なるものの、総合的な高齢者ケアまたは総合的緩和ケアに分類されたサービスモデルは、終末期の高齢者の生活の質の向上と症状改善に効果を示しました。両者に共通する要素が存在することからも、分類を越えたサービスの融合と患者のニーズや求めるアウトカムに応じたサービス提供の必要性が強調されました。今後への提言としてはヘルスケアとソーシャルケアを包含した経済学的分析や、健康格差の背景要因を理解するために必要なあらゆる財源の検討などがあげられます。

図1. 終末期の高齢者の生活の質を最大限に高める包括的なサービスモデル