認知症の社会負担軽減に向けた 神戸プロジェクト

フォトクレジット: Kobe City
実施期間:

2017年8月 研究開始、2017年11月~ 2020年6月 介入プログラム実施、2020年1月~ 2020年7月 データ解析、2020年7月 研究報告書 完成

連携機関:

神戸大学

研究対象地域:

兵庫県神戸市

総予算:
600,000 米ドル

高齢化が世界規模で進む中、認知症も急速に増加しています。世界一の高齢社会の日本では、認知症患者数は450万人以上で、軽度認知障害を含めると、800万人以上が認知機能の障害を抱えていると報告されています(2012年、厚生労働省)。

認知症の根本的な治療薬がない現在、少しでも認知機能の低下や認知症の重症化を遅らせるために、早期発見、早期介入の重要性が注目されています。

また、認知症の増加に伴って増大し続ける社会負担(医療、介護、家族の負担)をいかに軽減していくのかが大きな課題になっています。

しかしながら、具体的にどのように認知症を早期発見、早期介入していけば良いのか、それぞれの地域でどのように高齢者を支えて、社会負担を軽減していけば良いのかについては、今後のエビデンスの強化が期待されているところです。

 

背景・目的  

このような状況に鑑み、WHO神戸センターと神戸大学は、神戸市のご協力のもと、認知症の早期発見・早期介入をめざす「神戸モデル」構築をめざした3年間の共同研究「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」を開始しました。神戸市が実施した高齢者の生活状況アンケート「基本チェックリスト」と2017年度から始まったプログラム「フレイルチェック」で得られたデータを活用し、認知症の社会負担を減らすための地域モデルの構築を目指します。

研究骨子

  1. 約8万人の70歳代の神戸市民を対象とした「基本チェックリスト」調査の解析(研究責任者:小島伸介)
  2. 「基本チェックリスト」回答者のうち認知機能低下を原因とした将来の介護リスクが高いと思われる約5000人に対する認知機能と生活の質に関する追加調査の実施と解析(研究責任者:古和久朋)
  3. 神戸市が2017年度から開始した「フレイルチェック」参加者のうち同意が得られた方(約5000人を想定)に対する認知機能と生活の質に関する追加調査の実施と解析(研究責任者:山本泰司)
  4. 神戸市が実施した「認知症予防教室」受講者のうち約100人に対する追加認知機能訓練の実施とその長期予後に関する評価(研究責任者:前田潔)

 

ポイント

  1. 高齢者のある時点における認知機能と、将来的な介護リスクの関係性を明らかにする。
  2. 認知機能低下を遅らせる効果的な介入方法に関するエビデンスを探索する。
  3. 認知症の早期発見、早期介入を実現する地域モデルを提示する。
  4. 日本国内のみならず世界に向けて政策オプションを提供する。

 

研究チーム

リサーチ主導施設:神戸大学 
神戸大学医学部附属病院 臨床研究推進センター 永井 洋士 特命教授
神戸大学大学院 保健学研究科 リハビリテーション科学領域 古和 久朋 教授
神戸大学大学院 医学研究科 病態情報学分野 山本 泰司 准教授
公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター医療開発部 小島 伸介
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 前田 潔 特命教授
WHO神戸センター 茅野 龍馬 医官

 

出版物

Kojima, S., Kikuchi, T., Kakei, Y. et al. Implication of using cognitive function-related simple questions to stratify the risk of long-term care need: population-based prospective study in Kobe, Japan. Health Res Policy Sys 20 (Suppl 1), 120 (2022). https://doi.org/10.1186/s12961-022-00920-4

Nagai Y, Kojima S, Kowa H, Kayano R, et al. Kobe project for the exploration of newer strategies to reduce the social burden of dementia: a study protocol of cohort and intervention studies. BMJ Open 2021; 11:e050948. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2021-050948

 

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