News Archive by Year

2020

京都大学大学院総合生存学館 生涯発達と社会包摂研究会主催ミニワークショップにてオンライン講義実施

WHO神戸センターのローゼンバーグ技官は、12月11日に実施された京都大学大学院総合生存学館 生涯発達と社会包摂研究会主催のミニワークショップでオンライン講義を行いました。研究会代表の積山薫教授とローゼンバーグ技官が、ともに昨年大阪府主催の「『いのち輝く未来社会』をめざすビジョン」推進のための「10歳若返り」ワークショップ(第5回)の講演者として同席したことがきっかけで今回の講義が実現しました。講義では、新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックへの対応を事例に用いながら、WHOの役割や機能が紹介された後、講義の後半では、WHOが推進するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や、WHO神戸センターが取り組む高齢化とUHCに関わる研究事業について解説がされました。講義後の質疑応答では、具体的にどのようにUHCの達成状況のモニタリングが行われているのか、達成度の高い国はどこかなどについて質問が出た他、WHOのインターンシップ・プログラムにも関心が示され、応募するにあたってどのような準備が必要かについても話し合われました。

WKC、兵庫県立大学で災害・健康危機管理研究に関して講義

12月10日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、兵庫県立大学で講義を行いました。10月の講義につづく本講義は、災害・健康危機管理の研究の計画、実施、報告に関して包括的なガイドを提供するものです。講義では、新型コロナウイルス感染症に関する世界の現状を概観し、健康危機管理領域の政策や事業の改善にさらなる研究が求められていること、そのためのグローバルな研究協力が必要であることが強調されました。講義は双方向の形式で行われ、実際に研究計画書を書く練習や参加した学生の計画書へのその場でのフィードバックが行われました。

WHO神戸センター所長のメッセージ:2020年ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デーに寄せて

12月12日、今年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デーは、世界中が危機の真っただ中にあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、不充分な保健制度や社会的保護のギャップ、格差があらわになり、公衆衛生の基礎や強力な保健制度、健康危機管理の重要性が浮き彫りになりました。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人が必要な時に必要な場所で、経済的な困難を伴うことなく、必要とする保健医療サービスを利用できることを意味します。今年のテーマは「すべての人に健康を:すべての人を守る」です。このテーマは、年齢や性別、能力に関わらず、すべての人がヘルスケアを受ける権利を持っていることを意味しています。すべての人が健康であることは希望的観測ではありません。安定かつ公平で、平和な社会の礎となるものです。

COVID-19と健康危機は、高齢者や健康上の問題をいくつも抱えている人々、経済的に弱い立場にある人々に、過度に大きな影響をおよぼします。WHOによる調査では、調査対象国の90%において、予防接種や慢性疾患の治療、こころのケアなどの必要不可欠な保健医療サービスが、COVID-19によって中断されたという結果が明らかにされています。危機的状況に強い保健医療制度に投資すれば、危機のために前進が妨げられることは二度と起こりません。

看護師や助産師、保健師などの医療従事者は、保健医療制度の支えです。最もケアを必要とする人に直接ケアを施しており、すべての人が健康になるために重要な役割を担っています。すべての人が健康であるとは、こうした医療従事者が治療を優先的に受けワクチンが入手可能になったら優先的に接種できるようにし、ヘルスケアを提供できるように支援することも含まれます。

WHO神戸センターは、COVID-19に関する専門家向けガイダンスや一般情報に関する文書を翻訳し、兵庫県の皆様に正確な科学的情報を提供しています。

安全で有効なワクチンと診断法、治療法は、このパンデミックの終息に不可欠ですが、すべての国において最も弱い立場にある人々が利用できるようになって初めて成果が上がります。世界中で公平なワクチンの普及を確実に進めるために、180を超える国がCOVID-19 Vaccine Global Access (COVAX)ファシリティに参加しています。このパンデミックは、全世界で終息させない限り、終わることはありません。

誰一人取り残されないよう、私たちは一丸となって、このUHCデーも含め日々前進していかなければならないのです。

新型コロナウイルス対策へのWHO神戸センターの貢献を諮問委員会が評価

WHO健康開発総合研究センター(WKC)諮問委員会は、COVID-19による未曽有の状況を考慮し、初のオンライン開催となった本年の第24回年次会合を終えました。

WKC諮問委員会はWHO本部事務局長の指名により、WHOの6地域、日本政府、地元地域、および、WKCに対して物的・経済的支援を提供している神戸グループ [1]、それぞれの代表者から構成されています。

諮問委員会は、新型コロナウイルスの感染予防と制御に関する日本における情報発信についてWKCが中心的役割を果たしたことを高く評価しました。また、今回の様な困難な状況にあっても、WKCが研究活動を継続したことも評価しました。

諮問委員会に新たに加わった、厚生労働省国際保健福祉交渉官の武井貞治氏も、WKCがコロナ禍で関連ガイダンスの翻訳など重要な役割を果たしたことに謝意を述べました。会議では、WKCが、国連の関係機関および国内外の専門家と協力し、COVID-19関連のWHO文書および一般向け情報を100件以上翻訳したことが報告されました。

また、WKCが世界の研究者と協力して29件の研究プロジェクトを実施し、その研究が多岐にわたっていることや、災害や健康危機の発生時の研究手引き書として世界初となる「災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」を含む33件の学術出版など、昨年から今年にかけて、一連の学術的成果をあげていることも諮問委員会は評価しました。

2020年諮問委員会の座長である、ガーナ内科外科大学公衆衛生学およびドドワ保健研究センターのアイリーン・アクア・アジイポンゲ教授は、WHOのアフリカ地域を代表して次のように発言しました。「WKCは2019年の諮問委員会の提言を受けて前進し、素晴らしい成果をあげました。特に、前述のガイダンスをはじめとする出版物には目を見張るものがあります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと高齢化、災害・健康危機管理などの領域ではWKCに優位性があり、これらの領域に研究の焦点を当てているのは理に適っています。」

諮問委員会は、WHO内部での、また、世界および関西地域の学術機関との協力関係をWKCが広げたことも評価し、保健政策および対策に影響を与えるため、WHO地域委員会の会合などの機会を利用して、重要な政策決定者に研究成果を提供することを推奨しました。

クウェートのダイレクト・エイド・インターナショナル高等教育シニアアドバイザーのマジェッド・アルシャルビニー教授は、WHOの東地中海地域を代表して、「WKCがこの1年間に数多くの研究論文を発表したこと、すなわち、質の高い研究を実施したこと、および、国内外での協力関係を拡充したことに大変感心いたしました」と述べました。

諮問委員会は、WKCを卓越した研究拠点として認め、さらなる活動拡充のため、WHO本部の予算が配分されることを推奨しました。また、新型コロナウイルスによる保健医療の公平性やアクセス、高齢者への影響などが、今後の新たな研究領域として提案されました。

 

[1] 神戸グループは、兵庫県、神戸市、神戸商工会議所、株式会社神戸製鋼で構成されています。

WKC、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科で講義

11月20日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、長崎大学の熱帯医学・グローバルヘルス研究科でオンライン講義を行いました。講義では、新型コロナウイルス感染症パンデミックの現状とWHO神戸センターの日本における情報共有等の取り組みについて共有した後、感染症対策を含む健康危機管理全体の枠組み、世界の動き、日本の役割やWHOの取り組みについて紹介しました。WHO神戸センターの災害・健康危機管理領域の取り組みである、WHOグローバルリサーチネットワークや災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンスについても言及し、講義に参加した学生にも、今後のグローバル連携事業への参画を呼び掛けました。

WKC、神戸市会に参考人招致

2020年11月9日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、神戸市会「未来都市創造に関する特別委員会」に参考人招致を受け、新型コロナウイルス感染症流行下における都市の対策について発表しました。

茅野医官は、パンデミックの現状を共有するとともに、WHOのガイダンス「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する都市の備えとその強化(日本語版はこちら)」、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) パンデミックとその先への備えを強化するための都市における実践的行動 地方自治体のための暫定チェックリスト(日本語版はこちら)」を参照しながら、都市の備えに関して発表しました。

また、依然として公衆衛生的対策、社会的対策が不可欠であり、対策を怠れば感染は容易に拡大しうることを強調し、WHOの啓発メッセージであるBe safe, Be smart, Be kindの重要性を再確認しました。

高齢化に関連したユニバーサル・ヘルス・カバレッジの評価指標が欠如 イランの最新研究が指摘

WHO神戸センターが支援したイランの研究者は11月11日、「高齢者の継続的なケアを確保するためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の測定」に関する研究成果をオンラインで開催される第6回医療制度研究のグローバル・シンポジウムで発表します。

主要研究メンバーであるSedighe Hosseinijebeli氏は、2017年にWHOと世界銀行によって発表された包括的なUHCグローバル・モニタリング枠組みにおいては世界中で増加する高齢者のニーズに対応するための医療制度を評価する指標が欠如しているとして、次のように述べました。

「このギャップを埋めるために、私たちの研究では人口高齢化に対応する医療制度に関してUHCの進歩を測定するための新しい枠組みを提案することを目指しました。関連文献のスコーピングレビューを行い、その結果をもとに推奨される指標がイランにおいて測定可能かどうかをイランの学者や政策立案者とともに検討しました」

分析された35の関連文献からは、高齢化の観点からUHCの進歩を評価するための特定の枠組みがない点や、UHCをモニタリングするための既存の枠組みにも、高齢者のケアに関する指標が欠如している点が明らかになりました。さらに、イランやその他の低中所得国などの介護制度が十分に整備されていない国では、インフォーマルな(家族による)高齢者へのケアに依存している場合が多く、介護の範囲と質に関する公式なデータはほとんどもしくはまったく存在しないことが分かりました。

「この研究によって、高齢者のケアに関する医療システムの評価が、母子ケアや感染症などの他の分野と比べていかに手をつけられていないかが明らかになりました」とHosseinijebeli氏は述べています。

本研究では、ケアの質やサービスの適用範囲、介護に関わる支出、および高齢者の経済的・社会的保護をモニタリングするために使用できる指標を提案しています。研究者らは、健康な高齢化と高齢者のケアに関する重要な指標を今後のUHC評価枠組みにおいて含めるよう強く求めています。

WKC オンライン・フォーラム「最前線を担う看護師 ~グローバルヘルスにおける役割と展望~」

WKCフォーラム「最前線を担う看護師 ~グローバルヘルスにおける役割と展望~」
2020年世界保健デー「看護師・保健師と助産師を支援しよう」記念
2020年11月23日(月・祝)13:00~16:00 オンライン・フォーラム

主催:WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
共催:WHO神戸センター協力委員会
協力(五十音順): 関西国際大学 神戸市看護大学 国立国際医療研究センター 聖路加国際大学 東京検疫所 日本看護協会 兵庫県看護協会 兵庫県立大学

 
2020年の世界保健デーのテーマは「看護師・保健師と助産師を支援しよう (support nurses and midwives)」です。
看護師、保健師、助産師は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて、また、感染症の発生や自然災害がもたらす健康危機においても、保健医療の最前線の業務に従事する不可欠な役割を果たしており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応でもその貢献が再認識されています。
 
11月23日(月・祝)、WHO神戸センターは、グローバルヘルスにおける看護師、保健師、助産師の役割や貢献をハイライトするとともに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応に関連する様々なケーススタディ、そして健康危機管理を見据えた看護教育について検討するオンラインのフォーラムを開催します。
 
参加登録は、11月20日 (金)  17:00 をもって締め切りました。
多くの皆様からのご登録、ありがとうございました。
 
 
プログラム概要  【 詳しくは こちら 】
 
13:00–13:10
開会挨拶 WHO神戸センター 所長 サラ・ルイーズ・バーバー、兵庫県看護協会 会長 成田康子 氏 
 
13:10–14:10
第1部:
グローバルヘルスと看護 -The State of World’s Nursing Reportから見える日本の看護人材の現状と課題-
国立国際医療研究センター(NCGM)国際医療協力局は、WHO神戸センターと協力して、2020年の世界保健デーに発行された「State of World’s Nursing 2020 Report」の日本語版を作成した。このWHO報告書の内容をベースに、日本の看護人材の現状と課題について検討する。
 
元厚生労働副大臣の高階恵美子(たかがい えみこ)参議院議員 による講演、WHOチーフ・ナーシング・オフィサー エリザベス・イロによるビデオメッセージにつづいて、講演とパネルディスカッションが行われる。座長はNCGM 田村豊光 広報情報課長、演者はNCGM 駒形朋子氏、日本看護協会 荒木暁子 常任理事、聖路加国際大学大学院 大田えりか教授、千葉大学 櫻庭唱子氏。
 
14:20–15:50
第2部:
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応における看護の役割
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への看護職の対応について、医療機関、保健所、検疫所等から対応の実際についての報告につづき、パンデミックによる健康危機下での看護の役割や今後の課題について検討する。
 
座長は兵庫県立大学 増野園惠 教授、演者は兵庫県立尼崎総合医療センター 大迫ひとみ氏、神戸大学医学部附属病院 岡本規子 副看護部長、東京検疫所 鈴木真奈美氏、神戸市保健所 小寺有美香氏、神戸市看護大学 片倉直子教授。
 
15:50–16:00
総括・閉会挨拶 神戸市看護大学学長 WHO神戸センター名誉顧問 南裕子教授、WHO神戸センター医官 茅野龍馬
 
 
フォーラム詳細は下記リンクをご参照ください。
 

関西大学高等部 国際協力ゼミの生徒によるZOOMインタビューに応じる

関西大学高等部プロジェクト基礎(国際協力ゼミ)ご担当の先生からのご依頼で、WKCのローゼンバーグ技官は、10月27日に、ゼミを履修する高校生男女5名によるインタビューにZOOMで応じました。生徒達は、新型コロナウイルス感染症の影響による今年度の授業開始の遅れにも関わらず、国際的な健康格差の問題に関心を持って事前学習や調査活動を行っていて、今回のインタビューでは、アフリカにおける新型コロナウイルス感染症の現状やそれに対するWHOの活動、またWHOの資金やWHOに対して日本が果たす役割などについて、質問を用意していました。ローゼンバーグ技官は、生徒の予想に反して、アフリカ地域における新型コロナウイルス感染症による感染や死亡は世界の他の地域に比べて少ないことを指摘し、それが実際に感染が制御されていることによるのか、感染の全体像がまだ把握できていないからなのか判明するまでにはまだ時間を要すると答えました。また、WHOが対応の調整を図ったり、感染状況を監視したり、医療物資を提供するなどして、アフリカ諸国をはじめとする各加盟国に支援を行っていることを説明しました。

WKC、神戸市立神港橘高校「橘タウンミーティング」で講演

10月19日と26日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、神戸市立神港立花高校の「橘タウンミーティング」でオンライン講義を行いました。講義は高校2年生を対象に行われ、WHOの役割と新型コロナウイルス感染症対策、ひとりひとりが感染対策のために心がけることなどを紹介しました。