News Archive by Year

2020

大阪医科大学の1回生にオンライン講義を実施

10月26日、WHO神戸センター(WKC)のローゼンバーグ技官は、大阪医科大学の1回生約110名に対してオンライン講義を行いました。2017年以降、毎年行っているこの講義では、WHOの役割や機能についての紹介が中心となります。今年は新型コロナウイルス感染症の事例を用い、国際保健規則(2005)の運用、専門家向けのガイダンス発行、一般向けの正しい情報の発信などの役割について具体的に説明がされました。講義の後半では、WHOが推進するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や、WKCが取り組む高齢化とUHCに関わる研究事業について解説がされました。

学生からは、具体的にどのようにUHCの達成状況のモニタリングが行われているのかなどについて質問が出た他、どうしたら将来WHOで働けるのかなど、国際保健分野におけるキャリアパスについても関心が示されました。

WKC、京都大学で健康危機管理と災害対策について講義

10月21日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、京都大学で講義を行いました。講義では新型コロナウイルス感染症に関する最新情報、パンデミックの背景となっているグローバル化や都市化などの21世紀課題、世界の高齢化と深刻化する災害や健康危機の被害などを共有し、こうした脅威に対する世界的な枠組みの必要性と仙台防災枠組2015-2030、今年発行する「災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」について紹介しました。

学生からは、パンデミックの定義や効果的な封じ込めに関する質問がなされ、茅野医官は国際保健規則(2005)について紹介するとともに、2009年の新型インフルエンザH1N1の対応との違いやその教訓についても説明しました。また、正確な情報を効果的に社会の隅々まで伝えるために  、コミュニティにおけるコミュニケーションの重要性も強調しました。

京都大学 大学院医学研究科 国際保健講座で健康の社会的決定要因について講義

10月14日、京都大学 大学院医学研究科 国際保健講座を履修する十数名の日本人および外国人の学生に対して、WHO神戸センター(WKC)のローゼンバーグ技官は、ZOOMを利用して、英語で講義を行いました。今年で5回目となるこの講義ですが、今回初めてオンラインで行われました。

講義では、健康や健康格差の根本的な社会的要因として知られる貧困や教育について、それぞれ健康にどう影響するか、研究データを示しながら解説がされ、さらに人々の健康が国の経済とも関連することについて説明がされました。こうした関係性に着目した保健政策や国際的な取り組みについても紹介されました。

学生からは、保健以外の分野にまたがる健康の社会的決定要因について、WHOとしては何ができるのかという疑問が出たのに対して、ローゼンバーグ技官は、「社会的要因による健康への影響は明らかであり、人々の健康増進や疾病予防のためには、保健制度はもとより、これらの社会的要因を司る制度や政策への介入も欠かせません。そのことを保健分野をはじめ、他の関係分野の当局に対しても意識向上を図り、多部門連携による保健対策を推進することができます。」と答えました。

 

WKC、世界ハビタット・デーの記念イベントで講演

10月5日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、国連ハビタット福岡本部主催の世界ハビタット・デー記念イベント、世界ハビタット・デー2020「ウィズ・コロナ時代のまちを考える」で基調講演(オンライン)を行いました。茅野医官は、世界の感染状況とWHOの対策を紹介するとともに、新型コロナウイルス感染症に対する心構えや備えの3つの重要なキーワードであるBe safe, Be smart, Be kindを強調し、人と人が支えあう社会の在り方の重要性について示唆しました。

笹川保健財団 在宅看護センター起業家育成事業7期生へのオンライン講義を実施

昨年に引き続き、WHO神戸センター(WKC)のローゼンバーグ技官は、笹川保健財団の在宅看護センター起業家育成事業への協力として、10月9日に、今年の7期生に対してオンライン講義を行いました。

講義では、国際保健分野におけるWHOの役割について、今回の新型コロナウイルスへの対応を例に取りながら説明しました。また、WHOにとっての優先課題であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)について説明し、WKCでは高齢化という状況に適したUHCの推進とその測定と評価に関わる研究を行っていることを紹介しました。

質疑応答では、今回の新型コロナウイルス感染症の経緯を踏まえ、世界の感染状況に関するデータを発信するWHOの役割を疑問視する意見もありましたが、ローゼンバーグ技官は、「このような緊急事態において、国際保健規則(2005)に則り、各国政府が発表する公式のデータを毎日更新するというのはWHOにしかできない役割であり、一つの重要な情報源として今後も継続が必要です」と述べ、受講者からは、「正確な情報収集は自身の見極めが非常に重要であることを学んだ」という感想が聞かれました。

WKC、兵庫県立大学で健康危機管理と災害対策について講義

10月1日、WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、兵庫県立大学地域ケア開発研究所でオンライン講義を行いました。茅野医官は災害・健康危機管理の現状と課題、研究の必要性とどのように研究を生み出していくかについて、WHOのグローバルリサーチネットワークの活動も含めて紹介しました。

医療ビッグデータを用いた新たな研究で、認知症高齢者への優先的な医療提供が明らかに

2020年921日は「敬老の日」です。WHO神戸センター(WKC)では、超高齢社会におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のモニタリングについて研究を行なっており、9月4日、WKCの協力のもと実施された日本の超高齢社会における医療アクセスの公平性に関する新たな研究の結果が、BMC Health Services Researchに査読付き論文として発表されました。この研究では、大規模ヘルスデータベースから得た情報を活用し分析しています。

これまで、認知症の高齢者の患者に対する医療ケアの質に関して行われてきた研究は少なく、そうした患者が受ける股関節骨折手術のような救急医療に対しての研究に至っては、さらに少ない状況でした。

そのため本研究では、救急病院での医療ケアが高齢者のニーズに対応し、公平に行われているかどうか、また高齢者、特に認知症患者が股関節骨折手術を受ける機会がより少ないのかどうかを検証しました。

重度の認知症患者にはより早期に行われる股関節手術

研究者らは、医療保険請求のデータベースである診療群分類包括評価(DPC)データベースの二次データ分析を行った結果、研究対象となった2014年から2018年までの4年間で全国から572,983人の股関節骨折の診断を受けた65歳以上の患者が同定されました。そのうち再発例などの複雑な症例を除き、214,601人の患者が研究対象となり、58,400人(27.2%)は軽度の認知症、44,787人(20.9%)は重度の認知症で、159,173人(74.2%)が股関節手術を受けていることがわかりました。

救急病院で治療を受けたこれらの患者のうち、重度の認知症の患者は、認知症のない患者と比較して股関節手術を受ける率が高く、手術までの待機期間が短い傾向にありました。また、認知症の有無にかかわらず80歳以上の患者は、6579歳の患者に比べて手術を受ける可能性が低く、その一方で、90歳以上の患者は手術前の待機日数が短いことがわかりました。

主導研究者を務めた広島大学(研究当時)の冨岡慎一氏は、次のように述べています。「外科医は、重度の認知症の患者が股関節骨折によって体を動かせなくなることでより大きい影響を受けると認識していて、手術を可能な限り早く行い、認知症が進行しないようにしたいのだと思います。この研究から、日本の医療制度における公平性が示唆されていると言えます」

データ活用で質の高い公平な医療提供が可能に

冨岡氏はさらに、「日本の各地の病院には、質の高いデータセットが十分にある一方、今回の研究のような医療サービスに関する研究に効果的に活用されていません」と述べています。「私たちは研究プロジェクトの一環として、全国の病院の事務職員に、データの使い方に関する研修を実施してきました。これにより、例えば、どの種類の医療ケアが最も利用されているのか、地域の中でどの医療施設と連携するといいのかなどを、データを用いて知ることができるようになります。コストを下げつつ質の高い医療を提供できるようになり、長期的には国の医療体制を持続可能なものにしていけると考えています。」

今回の研究ではさらに、高機能病院であれば、地方に住む患者も都市部の患者と同程度、遅れることなく手術を受けていることもわかりました。

本研究は医療ケアと公平性に関する疑問に対し、ビッグデータを活用する有用性を示しており、医療サービスの公平性に関連するグローバルな知識基盤の強化にもつながると考えられます。

 

研究プロジェクトの詳細はこちら:https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/project-details/evidence-improving-health-care-provision-ensure-universal-health-coverage-amid-rapid

WHO神戸センター25周年記念記事が月刊公衆衛生情報に掲載

WHO神戸センター(WKC)は2020年、設立25周年を迎えました。

これを記念して、サラ・ルイーズ・バーバー所長とローゼンバーグ恵美テクニカル・オフィサーが月刊公衆衛生情報9月号に寄稿しました。

兵庫県および神戸市とつながりの深いWKCの成り立ちに加え、研究テーマであるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進や災害・健康危機管理、また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を含む現在の活動についてご紹介しています。

記事はこちらからお読みいただけます。

 

※出版社より許可を得て掲載しています。無断で転載・複写することを禁じます。

WKC、国際防災・人道支援協議会フォーラムで発表

9月7日、JICA関西において、令和2年度国際防災・人道支援協議会(DRA)の加盟団体による年次会議と活動報告会が開催されました。報告会では、河田惠昭会長代理をはじめとした4名の専門家が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への社会の対応について講演を行いました。WHO神戸センターの茅野龍馬医官も講演を行い、グローバルな動きと地域での取り組みの連携、人材育成や社会の備えの拡充、保健医療の備えを担保するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を財政状況に関わらず全ての国において実現することの重要性などを強調しました。また、WHO神戸センターが取り組む「COVID-19と災害・健康危機管理」に関する研究公募や、同領域の科学エビデンスの発展に取り組む、「災害健康危機管理に関するグローバル・リサーチ・ネットワーク」、その実現に寄与する「災害健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」の発行などについても紹介しました。

 

 

会の様子は動画配信され、https://www.youtube.com/watch?v=daq08o4fahI&feature=youtu.beから閲覧できます。

 

神戸認知症研究 中間報告会に参加

2020年9月4日、WHO神戸センターが2016年より支援している神戸認知症研究の中間報告会が神戸市で開催されました。4つのプロジェクトから成るこの研究の中で最大の人口を対象とした、認知機能と要介護の関係と予後の予測因子に関する研究の結果について、担当研究者である小島伸介医師が概説しました。今後その他のプロジェクトの結果とも合わせて、研究結果を市の施策にどう反映するか、という議論が進められる予定です。