2021-05-31

世界禁煙デー:WHO神戸センター サラ・バーバー所長のメッセージ

世界保健機関(WHO)は毎年5月31日を世界禁煙デーと定め、協力機関とともに喫煙と受動喫煙の有害性に関する認識を高める活動を行っています。喫煙と受動喫煙は、年間800万人を死に至らしめています。今年のテーマ「Commit to Quite(禁煙を決意する)」では、電子たばこ、加熱式たばこ、無煙たばこなど、たばこの種類に関わらず喫煙者に禁煙を促しています。別の種類のたばこに切り替えるのは禁煙ではありません。

たばこは、どの種類であっても命に関わります。無煙たばこのニコチンは有煙たばこより吸収されやすいため、依存性が高くなります。加熱式たばこからは、がんを引き起こす可能性のある有害物質が発生します。電子たばこに含まれるニコチンは依存性が高く、また非喫煙者や周りの人を危険な受動喫煙にさらします。

日本では各自治体が受動喫煙に対する措置を講じており、評価に値します。兵庫県は2012年、都道府県では全国2例目となる「受動喫煙の防止等に関する条例」を制定しました。改正を経て2020年4月より全面施行されたこの条例では、20歳未満の県民および妊婦を受動喫煙から守る観点が強化されています。またWHOの推奨に沿って加熱式たばこを紙巻きたばこと同様の取扱いとするとともに、小・中・高校、医療機関などにおいて特定屋外喫煙所の設置を原則認めず敷地内禁煙とするなど、県独自の取組みも行っています。

研究結果からは、喫煙者が新型コロナウイルス感染症にかかると、非喫煙者と比較して重症化しやすいことが証明されています。新型コロナウイルス感染症は、心血管疾患や呼吸器疾患、糖尿病などの持病があると重症化しやすく、たばこはこうした非感染性疾患の主要な危険因子です。

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行をきっかけに、たばこをやめたいと思った人は大勢います。一方で、感染症流行によるストレス下では、たばこをやめるのは特に困難でしょう。それでも、禁煙をするのに遅すぎるということは決してなく、その効果はほどなく現れるのです。たばこをやめてたった20分後には心拍数が下がり、2~12週間で血行が改善し、肺の機能が向上します。心臓発作を経験した後に禁煙した人では、再発の確率が50パーセント低くなります。

禁煙を補助してくれるツールがない人も多いのが現実です。そのためWHOの「禁煙を決意する」キャンペーンでは、協力機関や各国政府とともに次の支援を行っていきます。

  • 禁煙に関する強力な政策の提唱
  • 禁煙サービスへのアクセスの向上
  • たばこ産業の戦略に対する認識の向上
  • 「クイット・アンド・ウィン(やめるが勝ち)」イニチアチブを通じた禁煙の促進

WHOは各国政府に対して、禁煙に関するアドバイス、禁煙相談のフリーダイヤル、禁煙関連のアプリやオンラインサービス、ニコチン置換療法、また禁煙に役立つその他のツールを国民全員が確実に利用できるようにするよう求めています。禁煙促進に向けた良質なサービスは、健康を増進し、命を救い、コストを削減することになります。今こそ、禁煙を決意しましょう。