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2016

「ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット宣言」

G7神戸保健大臣会合を直前に控え、8月21日に開催された「ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット」では、兵庫県下の高校生を中心に約400人が参加し、6校代表によるプレゼンテーション、54題のポスターセッション、専門家とのパネルディスカッション、ブース展示などのプログラムを通じて、「国際保健分野で高校生がどのような貢献ができるのか」を考えました。(当日の模様は画面右側からG7神戸保健大臣会合推進協議会サイトの動画をご覧ください)

その後、さらに議論を重ねられて採択された「ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット宣言」は9月10日、G7神戸保健大臣会合公式サイドイベント「UHC、イノベーション、高齢化:持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた革新的なイノベーションを創出する研究とは」の場でマーガレット・チャンWHO事務局長に手渡されました。

抜粋

私たちは世界に影響を与えるために集まりました。現在、世界には食育・セルフケア・薬剤耐性菌、下痢性疾患等感染症関連の問題・母子保健・高齢社会など様々な国際保健に関する問題があります。今まで、世界は様々な国際保健問題について議論し、対策を見つけてきました。私たち高校生は若さを活かして、大人たちの考えることのできない大胆かつ創造的な対策を見出し、提案することができます。また、これらの国際保健問題に直面する私たちだからこそ、未来への危機感を持つことができ、真剣に取り組むことができます。実際、私たちは高校生として今まで探究活動を通してこれらの問題に関わってきました。そうした活動を通して世界の人々、特に同世代の人々にこれらの問題を伝えるためにこの宣言を発表します。



そして私たちには人々を救うために今できることがあります。まずは小さなことから。このサミットで感じたことを家族や友人に共有する、また、SNSを利用して世界の人々へ共有する、地域社会に出て行って交流する、など。私たちのそうした小さな行動こそが世界中の人々に大きな影響を与える第一歩になると信じています。このサミットを通し、私たちが次世代の担い手であると自覚し、小さいけれども確かな積み重ねによって、多くの人々が国際保健問題に関心を持ってくれるよう、私たちはこれからも多くを学び、努力を重ねていくことをここに宣言します。

ビデオへのリンク

 

WKC: 持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた 革新的なイノベーションを創出する研究とは

WHO神戸センターと厚生労働省は共催でG7神戸保健大臣会合公式サイドイベント「UHC、イノベーション、高齢化:持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた革新的なイノベーションを創出する研究とは」を開催します。

いよいよ9月11日、12日には神戸市内でG7神戸保健大臣会合が開催され、保健分野における国際的な課題についてG7各国の保健担当大臣、EU(欧州連合)、WHOや世界銀行などの国際機関代表が議論します。そして主要議題のひとつが、高齢社会に対応する保健システム、そしてUHCの実現です。

本イベントでは、WHO神戸センターの新長期研究戦略に沿って、UHCと高齢社会に焦点を当てた研究を紹介。世界各国の専門家による発表や、参加者による議論が予定されています。テーマは多岐にわたり、政策や行政プログラムのイノベーション、コミュニティ・ベースのケアシステム、統合型の健康保険・介護保険システム、技術イノベーション、高齢者や認知症にやさしい施策の評価などです。日本の教訓の世界への発信、高齢化の進行に伴い増加する認知症への対応やどのように研究を拡大していくかが議論されます。

基調講演では「アジア健康構想」をテーマに武見 敬三参議院議員がご講演、厚生労働省による認知症をテーマとしたパネルディスカッションも予定されています。

そして、WHO神戸センターの支援を行う神戸グループ(兵庫県・神戸市・神戸商工会議所・株式会社神戸製鋼所)の支援延長、第三期始動の記念式典や、8月21日に開催されたひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミットの宣言文のマーガレット・チャンWHO事務局長への進呈式が続きます。

G7神戸保健大臣会合公式サイドイベント
持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた
革新的なイノベーションを創出する研究とは

日時:2016年9月10日(土) 9:00-16:30(開場8:30)
会場:兵庫県公館 
(〒650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通4−4−1)
対象:招待者のみ約150人(一般の参加は不可)
言語:英語・日本語(同時通訳あり)
主催:WHO神戸センター、厚生労働省

プログラム

WHO神戸センターと神戸大学、認知症の早期発見・早期介入をめざす 「神戸モデル」構築に向けた共同研究を開始

WHO神戸センターと神戸大学は、認知症の早期発見・早期介入をめざす統合的な「神戸モデル」構築に向けた3年間の共同研究「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」を開始する運びとなりました。

認知症は世界規模で急速に増加しています。日本の認知症患者数は450万人以上で、軽度認知障害を含めると、800万人以上が認知機能の障害を抱えていると報告されています(2012年、厚生労働省)。また、その数は高齢化の進行に伴い、今後さらに増加すると見込まれています。 そして、少しでも認知機能の低下、認知症の重症化を遅らせるために、早期発見、早期介入の重要性が注目されています。

本研究では、WHO神戸センターと神戸大学が中心となる共同研究チームが、神戸市の協力のもと、神戸市民を対象としたスクリーニング調査とコミュニティにおける認知症啓発プログラムを通じて、認知症の早期発見、早期治療の実現をめざします。

WHO神戸センターのアレックス・ロス所長は「この研究の目的は認知症の患者さんとそのご家族の社会的負担を削減するためのシステム構築です。さらに、地元のみならず世界の認知症対策へエビデンスを提供し、今後のコミュニティベース・ケアへの布石となることを期待します」と述べ、本研究の代表者である神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センター 永井洋士特命教授は「神戸地域では、これまでも認知症や高齢者対策に関する先進的な研究・事業が多く実施されてきました。本研究を通じて、未だ抜本的な治療法のない認知症の進行を遅らせ、また、認知症になってもできるだけ自立した生活を続けられる社会が実現することを期待しています」と語っています。

(WHO神戸センターが9月10日に開催するG7神戸保健大臣会合公式サイドイベント「UHC、イノベーション、高齢化:持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向けた革新的なイノベーションを創出する研究とは(於、兵庫県公館(神戸市中央区))」で本研究概要が発表されます)

<研究チーム> 

  • リサーチ主導施設:神戸大学 
  • 永井洋士 神戸大学医学部附属病院 臨床研究推進センター 特命教授
  • 小島伸介 公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター 医療開発部
  • 前田潔  神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 教授
  • 茅野龍馬 WHO健康開発総合研究センター テクニカルオフィサー

関連リンク

WHO Headquarter - Media centre - 英語版

WHO Headquarter - Mental health - 英語版

神戸大学

神戸大学医学部附属病院 

臨床研究情報センター

神戸学院大学

 

「グローバル・ヘルス(国際保健)、私たちにできること」 ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット開催のお知らせ

WHO神戸センター、G7神戸保健大臣会合推進協議会共催、厚生労働省後援でフォーラム「ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット~国際保健、私たちにできること~」を開催します。

9月11日から12日にかけて開催されるG7神戸保健大臣会合を直前に控え、本フォーラムでは将来を担う兵庫県下の高校生たちがグローバル・ヘルス(国際保健)に関して、自分たちにどのような貢献ができるのかを考えます。

この日に向けて、県下6校の高校生は「健康と食育」「セルフメディケーション」「薬剤耐性菌(AMR)」「カンボジアの下痢性疾患」「感染症問題について」「母子を支える新たなコミュニティづくり」「高齢化社会における健康長寿」のテーマについて半年間討議を重ねてきました。

当日はその成果を発表します。また各校の研究・活動発表、専門家等を招いたパネルディスカッション、ポスターセッションなどのプログラムを通して「ひょうご・こうべ高校生宣言~私たちにできる国際貢献~」を採択します。また、その宣言文をG7神戸保健大臣会合の前日、9月10日に開催される「WHOフォーラム」の場でマーガレット・チャンWHO事務局長に手渡す予定となっております。

また、ポスターセッションにおいては、県下の高校から約50演題の申し込みがあり、各校の国際的な取り組み・研究についての発表があります。
なお、本フォーラムの準備、運営、宣言文の草稿案などは全て実行委員会を中心に高校生の手によって実施されてます。実行委員会総務・広報グループのリーダーの神戸大学附属中等教育学校6年(高校3年)の森田恵美里さんは「兵庫県から世界へ高校生の思いを届けるために、実行委員全員で最高のハイスクールサミットをつくり上げます」と語っています。

ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット

日時:2016年8月21日(日)10時から16時半(開場9時30分)
会場:神戸国際会議場 国際会議室 他
(〒650-0046 神戸市中央区港島中町 TEL 078-302-5200)
対象:高校生と保護者のみ(学校ごとに事前登録が必要)合計約300人
一般参加不可

ひょうご・こうべ保健医療ハイスクールサミット実行委員会
兵庫県立兵庫高等学校、兵庫県立日高高等学校、兵庫県立龍野北高等学校
神戸市立葺合高等学校、神戸大学附属中等教育学校、武庫川女子大学附属高等学校
(総務・広報グループ(8名)、宣言書草稿作成グループ(5名)、
ポスターセッション運営グループ(5名)の3グループに分かれて活動)

プログラム(内容が一部変更になる可能性があります)

10:00-10:30 開会式
Alex Ross WHO神戸センター所長
井戸敏三 兵庫県知事
久元喜造 神戸市長
塩崎恭久 厚生労働大臣(調整中)

10:30-11:40 セッション1:各校代表によるプレゼンテーション
(武庫川女子大学附属高等学校、神戸市立葺合高等学校、兵庫県立兵庫高等学校)

11:40‐13:30 昼食及びポスターセッション

13:30‐14:30 セッション2 :各校代表によるプレゼンテーション
(神戸大学附属中等教育学校、兵庫県立日高高等学校、兵庫県立龍野北高等学校)

14:30-16:00 セッション3 :パネルディスカッション「国際保健、私たちにできること」
参加者:6校代表の高校生、G7及び関係国出身者、専門家10名程度
モデレーター:
兵庫県立大学片田範子副学長、WHO神戸センター野崎慎仁郎上級顧問官

同時進行でポスターセッション(約50演題)、各校のブース展示

16:00‐16:30 「ひょうご・こうべ高校生宣言~私たちにできる国際貢献~」採択
Alex Ross WHO神戸センター所長から感謝状の贈呈
16:30 閉会式

WKCフォーラムレポート「いま、改めて世界の健康を考える」を開催 ~ 伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~

9月に神戸で開催されるG7神戸保健大臣会合を約100日後に控え、関西学院大学、WHO神戸センター、G7神戸保健大臣会合推進協議会は共催でフォーラム「いま、改めて世界の健康を考える ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~」を6月8日、兵庫県西宮市の関西学院大学にて開催し、学生など約100人が参加しました。

 

冒頭の挨拶で山本 光昭氏(兵庫県健康福祉部医監)はG7神戸保健大臣会合ではG7伊勢志摩首脳宣言の附属文書として発表された国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョンをベースに議論が展開されていく。ぜひ学生の皆さんも世界の健康、保健の課題に関心を持って議論に注目してほしいと述べました。

講演ではWHO神戸センターのアレックス・ロス所長が「いま、改めて世界の健康を考える ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~」をテーマにG7伊勢志摩サミットで検討された保健課題「公衆衛生危機対応のためのグローバルヘルス・アーキテクチャー(国際保健の枠組み)強化」「危機への予防・備えにも資するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進」「薬剤耐性(AMR)への対応強化」の概要と背景について説明しました。

 

世界が直面する保健課題は数多く、エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、新型インフルエンザ、デング熱、ジカ熱国境を越えて拡大する感染症の問題や、動物由来の病原体の増加、自然災害、人口の高齢化や急速に進む都市化など、一国の対応では不十分で、国際的な連携と対応が必要と述べました。

また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現し、誰もが基本的な医療を受けることができる“誰一人取り残さない”保健システムの強化が必須と訴え、各国が国際保健規則(IHR)を遵守し、仙台防災枠組に沿って共に協調して行動できるようにWHOが作成したWHO Comprehensive Health Emergency Programme(WHO健康危機管理プログラム)を紹介。各国が新感染症のアウトブレイクを予防し、発生後は即座に対応していくためには強靭な保健制度の確立が必要と話しました。日本国政府はこのWHO健康危機管理プログラムに約5000万ドル(約55億円)の資金拠出を表明しています。また、昨今の情報技術やバイオテクノロジー技術を起用することで課題への対応は可能としました。

また、ロス所長はWHO神戸センターの活動についても紹介。「UHC」「イノベーション」「高齢化」をテーマに、特に高齢化を考慮しながらUHCの実現をめざすための研究を進め、国の内外の研究者と連携しながら日本の知見を海外に、また海外から国内に知識交流を進めると話しました。

 

そして、前国連児童基金(UNICEF)駐カザフスタン事務所代表の久木田純教授(関西学院大学SGU招聘客員教授)とのトークセッションでは「世界市民として活躍するためには」をテーマに語り、将来国際舞台で働くことを望む学生の皆さんへのメッセージとして「世界の保健に対して情熱を持つこと」「NGOやインターンシップ、JPOなどを利用して海外で働くチャンスをつかむこと」と語りました。WHO神戸センターではインターンやボランティアを受け入れています。

 

そして最後に、9月に開催されるG7神戸保健大臣会合について市民のみなさんに興味を持ってもらうためイベントなどを開催して周知を行う兵庫県、神戸市、G7神戸保健大臣会合推進協議会に感謝の辞を述べてフォーラムをしめくくりました。

 

プログラム

プレゼンテーション

リンク

G7伊勢志摩サミット- 国際保健に関する取り組みを発表 WHO総会-新しい健康危機管理プログラムと健康と高齢化に関する新戦略が採択

5月27日 G7伊勢志摩サミットの首脳宣言が本日採択され、喫緊の保健医療課題に直面する国や地域のための国際保健に関する積極的な取り組みが示された。これには、公衆衛生危機への対応、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進、健康でアクティブな高齢化、新しい世界的なUHC2030協調プラットフォーム、薬剤耐性菌(AMR)対策などへの対応が含まれている。

これを受けて、本年9月11日、12日に開催されるG7神戸保健大臣会合において、掘り下げた議論がなされる予定となっている。

現在スイスのジュネーブで開催されているWHO総会において、加盟国は感染症のアウトブレイクや人道危機に対するWHOの対応力を強化するための新しいWHO健康危機管理プログラムによる重要な構造改革を採択した。

WHO加盟国、オーストラリア、ドイツ、日本及びスウェーデンはこの新しいプログラムのために資金協力を表明した。特に日本国政府はこのWHO健康危機管理プログラムに約5000万ドル(約55億円)の資金拠出を表明した。

この支援表明に対し、マーガレット・チャンWHO事務局長は「私は特に日本国政府の約5000万ドルの資金拠出を歓迎したい。日本はこれまでも長期にわたりWHOの健康危機管理に支援を続けてくれているパートナーであるが、今回の追加的な支援の表明は、我々の新しい健康危機への取り組みへの期待と信頼の現れである」と謝意を示した。

「日本国政府はWHOが公衆衛生危機管理の中核機関として、オペレーションの能力強化を進めていくことを期待する」と太田房江厚生労働大臣政務官は述べている。

また、WHO加盟国は「高齢化と健康に関するWHO新戦略と行動計画2016-2020」を採択した。本戦略の目的は全ての加盟国が健康な高齢化に対応する行動を取ることを約束することにある。現在の保健システムを高齢者に対応するように調整し、また、高齢者に優しい環境づくりの推進が必要とされている。戦略は持続可能で全ての人々に対応するUHCの推進、長期的な介護システムの必要性、効果測定指標の改善、モニタリング及び研究の推進を想定している。公平性と人権の重要性、特に高齢者自身の政策決定への関与を強く推奨している。

WHO神戸センターは世界中のWHO各部局との緊密な連携の下、UHC、イノベーション、高齢化に関する研究活動を通じてこれらの活動をサポートしていきます。

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WKCフォーラム「いま、改めて世界の健康を考える」開催のお知らせ ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~

関西学院大学、WHO神戸センター、G7神戸保健大臣会合推進協議会は共催でフォーラム「いま、改めて世界の健康を考える ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~」を下記のとおり開催します。

いよいよ今月26日と27日には伊勢志摩サミットが開催されます。また、9月11日、12日には神戸市内でG7神戸保健大臣会合が開催され、保健分野における国際的な課題についてG7の保健担当大臣が議論します。
健康であることは誰にとっても重要です。各国政府は国民の健康を守るためにどのような政策を取ればいいのでしょうか?ボーダレス時代の昨今では、一国での対策だけは不十分で、各国、国際機関、その他多くのステークホルダーの連携が必要となります。また主要先進国の力強いリーダーシップが期待されます。

今回のG7サミットでは保健についてどのような課題が議論されるのでしょうか?世界を見渡せば、保健に関する課題は数多いことがわかります。一例を挙げますと、国境を越えて拡大する感染症の問題です。エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)や新型インフルエンザ、デング熱、ブラジルなどで流行が続くジカ熱など、急速に拡大する感染症に対する対応は急務です。
また、世界中で起きる災害と健康危機の問題です。熊本やエクアドルでの地震、津波やサイクロン、洪水や地すべりなど、災害時の健康の問題についても対応が必要です。
そして保健システムの強化についてです。保健システムが整っていない国では突然起きる感染症の拡大や災害時の健康危機に対応することができません。各国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現し、誰もが基本的な医療を受けることができるために、保健システムの強化が必須となります。

広範囲にわたる健康、保健に関する課題について、世界はどのように対応してけばいいのでしょうか?今回のフォーラムでは「世界の健康について」学生の皆さんと一緒に考えてまいります。
またWHOやWHO神戸センターの役割について紹介させていただき、将来国際機関で活躍したいと希望する学生さんのために、国際人として望まれることについても議論を行います。

G7神戸保健大臣会合開催記念講演会・トークセッション  「いま、改めて世界の健康を考える ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~」さらなる推進

日時: 2016年6月8日(水) 15:10-16:40(開場14:40)
会場: 関西学院大学 図書館ホール
  (〒662-8501 西宮市上ヶ原1-1-155 TEL 0798-54-6442)
対象: 学生、一般市民150人(先着順・申し込み必要(詳細)・参加費無料)
言語: 英語・日本語(同時通訳あり)

<プログラム>
15:10-15:20 開会
関西学院大学SGU招聘客員教授 久木田 純教授
(前国連児童基金(UNICEF)駐カザフスタン事務所代表)

15:20-15:25 挨拶
兵庫県健康福祉部医監 山本 光昭

15:25-15:55 講演 「いま、改めて世界の健康を考える ~伊勢志摩サミットからG7神戸保健大臣会合に向けて~」 WHO神戸センター所長 アレックス・ロス

15:55-16:10 久木田教授とロス所長のトークセッション
「世界市民として活躍するためには」

16:10‐16:30 質疑応答(会場の皆さんとのオープン・ディスカッション)

16:40 閉会

<参加申し込み(一般参加)>
申込み専用サイト(https://goo.gl/F2LgtP)から登録。申込締切:2016年6月6日(月)。

「いま、改めて世界の健康を考える」講演会ご案内

都市部の健康に関するグローバル・レポート発表ー都市部における人々の健康、 改善は見られるものの「健康格差」は顕著

WHO神戸センターは国連人間居住計画(UN-Habitat)と共同で「都市部の健康に関するグローバル・レポート:持続可能な開発のために、公平でより健康な都市を」を発表しました。

このレポートで約100カ国の都市部に住む人々の健康について分析したところ、世界の都市人口の増加が進む一方で、特に富裕層と貧困層との間の健康格差が顕著であることが示されました。
例えば、91カ国の都市部の世帯における水道水へのアクセスを検討した結果、わずか半数が水道水へのアクセスを有し、上位20%の最富裕グループは下位20%の最貧困グループの2.7倍のアクセスを有することが示されました。アフリカ諸国ではその差がおよそ17倍です。
また、都市部には現在、約37億人が暮らし、2030年までにさらに10億人が都市に住むと予測されています。その増加は低・中所得国にて著しく、増加人口の90%を占めるとされています。

これらの状況を鑑みると、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)-世界中のすべての人々が必要な時に基礎的な保健医療サービスを経済的負担に苦しむことなく受けられること-を2030年までに確実なものとする持続可能な開発目標(SDGs)の達成がいかに重要であることがわかります。

改善は見られるものの「健康格差」は顕著

低・中所得国79カ国において都市部の5歳未満の子どもの平均死亡率について分析した結果、下位20%の最貧困グループでは上位20%の最富裕グループの約2倍であることが示されました。 また、分析対象となった9割の国において、都市部の貧困層では5歳未満の子どもの死亡率削減というミレニアム開発目標(MDGs)が達成できませんでした。
このレポートはSDGs達成のために各国が都市部における健康格差の問題とその決定要因に早急に対応することの重要性を訴えています。また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) の推進において成功を収めた各都市(広州市、ラゴス(ナイジェリア)、リマ(ペルー)、サンフランシスコなど)の革新的な事例を紹介しています。

「約10億人が都市部のスラム地域や非正規居住区に暮らしている現実を考えると、特にそうした社会的に不利な立場の人々に焦点をあてながら健康格差を浮き彫りにして縮小させることが急務です。このレポートは健康格差の縮小に向けて、また、SDGsの達成に向けて、各国政府や地方自治体が実際に活用できるツールを提供しています」とマリー-ポール・キーニーWHO事務局長補(保健システム・イノベーション担当)は語ります。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のさらなる推進

多くの都市で保健医療サービスのカバレッジが改善している一方、現在、世界では少なくとも4億人には基本的な人権としての保健医療へのアクセスがありません。医療保険制度も不十分であったり、存在すらしていないのです。このレポートでは9つのUHC指標について94カ国の都市部のデータを新たに分析し、都市部におけるUHCダッシュボードとして掲載しています。それによると保健医療サービスのカバレッジにおいて都市部では国家レベルよりも総じて進展は見られるものの、都市内格差が顕著でした。

「人々」と「健康」を重視した街づくりが重要

都市化の進行とともに、健康を取り巻く新たな課題が台頭してきています。非感染性疾患と感染性疾患の二重負担、大気汚染、安全な水と衛生設備へのアクセスの問題、栄養不良(低栄養と過栄養)、運動不足や健康危機への備えなどがその例です。これらに対応していくためには各国政府、地方自治体ともにUHCのさらなる推進が必要となります。また、このレポートでは非感染性疾患(NCDs)管理のための包括的な介入策や、住宅や交通なども考慮した住民の健康を重視した街づくり、将来の都市計画についても具体的な提案をしています。

「都市部における健康を増進するためには、保健医療システムの強化だけでは不十分で、都市部の環境整備が重要です。このように相互に密接に関連し、影響しあう要因に積極的に投資することが、結果的には効率的でシナジーを生み、SDGs達成への近道であると考えます」とアレックス・ロスWHO神戸センター所長は語ります。

「都市の経済が活発でインクルーシブ(包摂的)であるためには人々の健康が重要です。このレポートはSDGs達成のための協働の可能性について言及しており、今年10月エクアドルのキトで開催される第3回国連人間居住会議(ハビタット3)と、そこでとりまとめられる人間居住に係る課題の解決に向けた国際的な取組方針、ニュー・アーバン・アジェンダ、に向けた布石となると思います」とジョアン・クロスUN-Habitat事務局長は語ります。

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Executive Summary

WKCフォーラムレポート「感染症との闘い」を開催 ~エボラ出血熱との闘いを語る~

WHO神戸センターとG7神戸保健大臣会合推進協議会は、フォーラム「感染症との闘い ~神戸・ひょうごから、グローバル・ヘルス・ガバナンスを考える~」を2月24日、神戸市内で開催しました。当日は医療関係者、保健所、検疫所関係者をはじめ、行政関係者、市議会議員、研究者、学生など約250人が参加しました。

冒頭で山本光昭氏(兵庫県健康福祉部医監)がG7神戸保健大臣会合主催地を代表して挨拶し、グローバル・ヘルス・ガバナンスや人間の安全保障が地元兵庫県や神戸市にとっても重要な課題であると話しました。

その後、挨拶に立ったWHO神戸センターのアレックス・ロス所長は、ジカ熱やデング熱、ネパールや台湾の地震やフィジーの台風など近年の災害や健康危機に対して、さまざまな組織の緊密な連携のもと保健制度や社会制度、生活の再建に取り組まなければならないと話しました。

 

続いて最初の講演ではWHO神戸センターの茅野 龍馬テクニカル・オフィサー(健康危機管理担当)が「グローバル・ヘルス・ガバナンス」をテーマに講演。エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)やジカ熱を例に、ボーダーレスの時代には感染症はいかに早く、広く拡大するかを示し、その対応には政府・国際機関のみでは不十分で、地元自治体やコミュニティとの協働、市民が「自分ごと」として、関わることが大切であると強調しました。そして、高齢者や災害弱者にフォーカスを当てた健康危機管理がWHO神戸センターの研究課題のひとつであり、WHO神戸センターはこれからも感染症に関する情報をタイムリーに兵庫県や神戸市と共有し協働していくと語りました。

そして、シエラレオネ保健省のサミュエル・カーボ氏が「エボラ出血熱との闘い」をテーマに講演し、初動時にはエボラ出血熱に関する専門知識が不足し、感染症対策への備えや監視・データ収集体制などが不十分だったこと、また適切な埋葬方法の普及などコミュニティの協力を得ることが難しく、多くの苦労があったと話しました。また、それらの教訓を生かして、現在では新たな対応システムが確立され各地域に整備されているとし、他国へのアドバイスとして、コミュニティでの保健システムの充実、感染制御や安全の保証システムの確立、必要物資の確実な調達の確保、監視・研究システムの強化をあげ、コミュニティと国家間のスムーズなコミュニケーションが必要だと強調しました。

次にシエラレオネ・コノ地区医療管理者の ロナルド・カルション・マルシュ医師が、エボラに関する知識や経験もなく、防御服などの備品も不足する中、いかに現場でエボラ出血熱に立ち向かったかを話しました。「医者がエボラ出血熱を流行させている」というデマが広がり、民衆が暴徒化し、病院や医師への襲撃が勃発。感染の疑いのある患者でさえ他の施設に移送する必要があり、それによって感染が拡大した。WHOやCDC(アメリカ疾病管理予防センター)など国際支援を受けて、最終的には感染拡大を食い止めることができた。特に、地域の首長に協力を仰ぐことで、コミュニティの人々の協力を得ることができたと話しました。

最後にWHO本部の保健サービス及び危機管理部シャムズ・ババ-ル・シェド次長が講演し、エボラ出血熱に対するWHOの対応について話しました。その中で、WHOや他の国際機関が健康危機に対するグローバル・ヘルス・ガバナンスを考える中で、「現場の声」がいかに重要かを改めて痛感したと語りました。マルシュ医師やカーボ氏のように第一線で闘う人たちとの協働の上にWHOは持続可能で強靭な保健システムの再建に向けた提言を加盟国、とりわけエボラ感染国に対して行うことができる。また、保健システムの再建には、基礎的な保健サービスの早期再開、コミュニティとの連携、医療従事者の安全確保や質の高いサービスの供給などが早期に必要で、それぞれの地域の保健システムの確立がグローバル・ヘルス・ガバナンスにつながると話しました。最後に、健康危機や災害への備えや対応においてもユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進が基礎になると締めくくりました。

エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)を目指して -スペイン、ビルバオ市の取り組み

WHO神戸センターは、エイジフレンドリーシティを適切に評価するための指標をまとめた新しいガイド「Measuring the Age-friendliness of Cities: A Guide to Using Core Indicators(エイジフレンドリーシティ評価:コア指標に関するガイド)」を発表いたしました。(言語:英語(原版)、中国語、フランス語、スペイン語)

今回発表された指標は「交通機関へのアクセス」「社会参加」など、物的・社会環境、QOL、公平性の各側面を評価するための合計16項目で、国際的な専門家会議や自治体への聞き取り調査、12カ国15地域でのパイロット試験を経て、最終決定されました。

パイロット試験に参加した都市のひとつ、スペイン北部の都市圏ビルバオ市では、特に公共の移動・交通手段へのアクセスを重視しています。ビルバオ市は今回のパイロット試験を通じて、住民の住宅から徒歩圏内(500m以内)に2つ以上の公共交通網へのアクセスの整備を推し進め、その割合を現在の84%から今後100%にまで押し上げることを目標とすると表明しています。他の参加地域もそれぞれ評価結果を今後の行動計画に反映させるなど、様々に活用しています。

<結果と考察>

12カ国15地域で行われたパイロット試験において、データの有無や入手方法にばらつきが見られたものの、参加地域が各指標を独自に算出することに成功しました。その際、状況に合わせて評価方法を適切に調整する柔軟性と創造性が重要であることがわかりました。

一方、環境要因が地域の中に公平に行き渡っているか見る「公平性」の考慮が重要であるという認識はあるものの、実際の評価は難しいことがわかりました。

また、地域の高齢者や住民との直接対話などを通じてデータの妥当性を検証したり、事業への応用について意見を聞いたりすることで、評価の質と価値が高められることがわかりました。

<本研究の意義>

世界の人口の大半が既に都市部に住み、今後も世界規模で人口高齢化が進むことを考慮すると、WHOが提案するエイジフレンドリーシティ(AFC)環境の整備がいっそう重要になると考えられます。また、取り組みを確実に実行するために、その必要性、実効性、効率性、公平性などに関するエビデンスを積み上げていくことが必要であり、明確な指標を使用した調査や評価の実施が不可欠です。今回WHOが発表したガイドは、それを世界規模で推進するためのツールのひとつで、実施されたパイロット評価試験によって、その有用性が示唆されました。

<書誌情報>

<関連リンク>