2016-02-23

エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)を目指して -スペイン、ビルバオ市の取り組み

WHO神戸センターは、エイジフレンドリーシティを適切に評価するための指標をまとめた新しいガイド「Measuring the Age-friendliness of Cities: A Guide to Using Core Indicators(エイジフレンドリーシティ評価:コア指標に関するガイド)」を発表いたしました。(言語:英語(原版)、中国語、フランス語、スペイン語)

今回発表された指標は「交通機関へのアクセス」「社会参加」など、物的・社会環境、QOL、公平性の各側面を評価するための合計16項目で、国際的な専門家会議や自治体への聞き取り調査、12カ国15地域でのパイロット試験を経て、最終決定されました。

パイロット試験に参加した都市のひとつ、スペイン北部の都市圏ビルバオ市では、特に公共の移動・交通手段へのアクセスを重視しています。ビルバオ市は今回のパイロット試験を通じて、住民の住宅から徒歩圏内(500m以内)に2つ以上の公共交通網へのアクセスの整備を推し進め、その割合を現在の84%から今後100%にまで押し上げることを目標とすると表明しています。他の参加地域もそれぞれ評価結果を今後の行動計画に反映させるなど、様々に活用しています。

<結果と考察>

12カ国15地域で行われたパイロット試験において、データの有無や入手方法にばらつきが見られたものの、参加地域が各指標を独自に算出することに成功しました。その際、状況に合わせて評価方法を適切に調整する柔軟性と創造性が重要であることがわかりました。

一方、環境要因が地域の中に公平に行き渡っているか見る「公平性」の考慮が重要であるという認識はあるものの、実際の評価は難しいことがわかりました。

また、地域の高齢者や住民との直接対話などを通じてデータの妥当性を検証したり、事業への応用について意見を聞いたりすることで、評価の質と価値が高められることがわかりました。

<本研究の意義>

世界の人口の大半が既に都市部に住み、今後も世界規模で人口高齢化が進むことを考慮すると、WHOが提案するエイジフレンドリーシティ(AFC)環境の整備がいっそう重要になると考えられます。また、取り組みを確実に実行するために、その必要性、実効性、効率性、公平性などに関するエビデンスを積み上げていくことが必要であり、明確な指標を使用した調査や評価の実施が不可欠です。今回WHOが発表したガイドは、それを世界規模で推進するためのツールのひとつで、実施されたパイロット評価試験によって、その有用性が示唆されました。

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