2016-02-24

WKCフォーラムレポート「感染症との闘い」を開催 ~エボラ出血熱との闘いを語る~

WHO神戸センターとG7神戸保健大臣会合推進協議会は、フォーラム「感染症との闘い ~神戸・ひょうごから、グローバル・ヘルス・ガバナンスを考える~」を2月24日、神戸市内で開催しました。当日は医療関係者、保健所、検疫所関係者をはじめ、行政関係者、市議会議員、研究者、学生など約250人が参加しました。

冒頭で山本光昭氏(兵庫県健康福祉部医監)がG7神戸保健大臣会合主催地を代表して挨拶し、グローバル・ヘルス・ガバナンスや人間の安全保障が地元兵庫県や神戸市にとっても重要な課題であると話しました。

その後、挨拶に立ったWHO神戸センターのアレックス・ロス所長は、ジカ熱やデング熱、ネパールや台湾の地震やフィジーの台風など近年の災害や健康危機に対して、さまざまな組織の緊密な連携のもと保健制度や社会制度、生活の再建に取り組まなければならないと話しました。

 

続いて最初の講演ではWHO神戸センターの茅野 龍馬テクニカル・オフィサー(健康危機管理担当)が「グローバル・ヘルス・ガバナンス」をテーマに講演。エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)やジカ熱を例に、ボーダーレスの時代には感染症はいかに早く、広く拡大するかを示し、その対応には政府・国際機関のみでは不十分で、地元自治体やコミュニティとの協働、市民が「自分ごと」として、関わることが大切であると強調しました。そして、高齢者や災害弱者にフォーカスを当てた健康危機管理がWHO神戸センターの研究課題のひとつであり、WHO神戸センターはこれからも感染症に関する情報をタイムリーに兵庫県や神戸市と共有し協働していくと語りました。

そして、シエラレオネ保健省のサミュエル・カーボ氏が「エボラ出血熱との闘い」をテーマに講演し、初動時にはエボラ出血熱に関する専門知識が不足し、感染症対策への備えや監視・データ収集体制などが不十分だったこと、また適切な埋葬方法の普及などコミュニティの協力を得ることが難しく、多くの苦労があったと話しました。また、それらの教訓を生かして、現在では新たな対応システムが確立され各地域に整備されているとし、他国へのアドバイスとして、コミュニティでの保健システムの充実、感染制御や安全の保証システムの確立、必要物資の確実な調達の確保、監視・研究システムの強化をあげ、コミュニティと国家間のスムーズなコミュニケーションが必要だと強調しました。

次にシエラレオネ・コノ地区医療管理者の ロナルド・カルション・マルシュ医師が、エボラに関する知識や経験もなく、防御服などの備品も不足する中、いかに現場でエボラ出血熱に立ち向かったかを話しました。「医者がエボラ出血熱を流行させている」というデマが広がり、民衆が暴徒化し、病院や医師への襲撃が勃発。感染の疑いのある患者でさえ他の施設に移送する必要があり、それによって感染が拡大した。WHOやCDC(アメリカ疾病管理予防センター)など国際支援を受けて、最終的には感染拡大を食い止めることができた。特に、地域の首長に協力を仰ぐことで、コミュニティの人々の協力を得ることができたと話しました。

最後にWHO本部の保健サービス及び危機管理部シャムズ・ババ-ル・シェド次長が講演し、エボラ出血熱に対するWHOの対応について話しました。その中で、WHOや他の国際機関が健康危機に対するグローバル・ヘルス・ガバナンスを考える中で、「現場の声」がいかに重要かを改めて痛感したと語りました。マルシュ医師やカーボ氏のように第一線で闘う人たちとの協働の上にWHOは持続可能で強靭な保健システムの再建に向けた提言を加盟国、とりわけエボラ感染国に対して行うことができる。また、保健システムの再建には、基礎的な保健サービスの早期再開、コミュニティとの連携、医療従事者の安全確保や質の高いサービスの供給などが早期に必要で、それぞれの地域の保健システムの確立がグローバル・ヘルス・ガバナンスにつながると話しました。最後に、健康危機や災害への備えや対応においてもユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進が基礎になると締めくくりました。