News Archive by Year

2023

WKC website survey registration page screenshot

ウェブサイト改良に向けたアンケート実施中

WHO神戸センターは現在、当ウェブサイトの改良に向けて取り組んでいます。

その一環としてユーザーアンケートを実施しています。ぜひみなさんの貴重なご意見をお聞かせください!

数分で終わるアンケートはこちら

ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

Title slide for BMC supplement video series on research on population ageing and health systems' responses

人口高齢化に対応する保健医療制度 論文著者による解説動画を掲載

高齢者の人口が世界で増加の一途をたどるなか、アジア太平洋地域諸国において高齢化に対応していける保健医療制度の構築に関して、WHO神戸センターではこれまで複数の研究を助成してきました。このうち10件の関連研究が2022年11月に学術誌『BMC Health Research Policy and Systems』の論文特集に掲載されました。

これらの研究の重要性や、各研究が示唆することについて、本特集の編集委員および5名の著者が簡潔に解説した動画をこちらからご覧いただけます。

※編集委員によるビデオは日本語字幕付き、そのほかは英語のみ

当センターのローゼンバーグ・恵美、冨岡慎一、サラ・ルイーズ・バーバーによる一連の研究に関する論説はこちらからお読みいただけます。

BMC Health Research Policy and Systems』論文特集に掲載された論文全10件の一覧はこちら

Juntendo lecture 14JULY2023

サラ・ルイーズ・バーバー所長 順天堂大学大学院の学生にオンライン講義

2023714日、順天堂大学大学院修士課程国際老年政策学にて、WHO神戸センター所長、サラ・ルイーズ・バーバーがオンライン講義「Economic and human resource aspect of aging and long-term care」を行いました。学生たちはテーマに積極的に取り組み、介護労働力のジェンダー側面、費用対効果の高い介入策の選択、年齢差別との闘い、人口高齢化の文脈におけるデジタル技術の応用などに関心を示しました。その中でも特に、WKCが神戸大学、神戸市の協力を得て実施した認知症患者の認知機能低下に関する研究に関心を示しました。

IAGG 2023 unmet needs session poster

医療やケアの未充足ニーズに関するグローバル・リサーチコンソーシアムをアジア/オセアニア国際老年学会議で発表

第12回 アジア/オセアニア国際老年学会議(IAGG-AOR 2023)が、6月12~14日に横浜で開催されます。

学会2日目には、高齢者における医療やケアの満たされないニーズ(アンメットニーズ)に関するWHO神戸センターとの共同研究について、オーストラリア・ニューカッスル大学の研究者らがポスター発表を行いました。この他、2023年後半に発足する予定の、アンメットニーズに焦点を当てた新たなグローバル・リサーチコンソーシアムについての発表も行います。

世界の人口高齢化は、保健医療制度にとって大きな意味をもちます。一方で、世界におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の進捗をモニタリングする現行の方法では、高齢者の医療に対する複雑なニーズが十分に捉えられていません。不足する情報を補うため、当センターは、高齢者の受診控えに関するシステマティックレビューとメタ分析、および60歳以上人口を対象に、80を超える国の調査データの二次解析をもとに高齢者の未充足ニーズの発生率を推測する研究を行いました。

これらの研究からは、保健医療全般における未充足のニーズに関して、より多くのデータを利用可能にし、データの質を向上させていく必要性が明らかになりました。特に高齢者の未充足ニーズや社会的ケアにおける未充足ニーズに関するデータが求められています。本研究の次の段階として、当センターはニューカッスル大学の研究者と連携し、この分野の研究を推進するグローバル・リサーチコンソーシアムの発足に向けて協議を行なっています。このプロジェクトでは、世界の専門家が集まり、高齢者の医療と社会的ケアのアンメットニーズに関する一連の会議を開催してきました。専門家は、専門分野、地域、性別、キャリアステージの多様性が確保されるように選出されました。会議を通じて優先すべき研究領域が特定され、アンメットニーズの測定方法を相互に比較できるようにすることや低所得国でのデータの取得などが含まれました。多くの国では、介護や支援を含む社会的ケアが医療と比べて整備が遅れているため、人々のニーズが満たされているかを評価する基準を標準化しにくく、より状況に応じたアプローチが必要となる可能性が示唆されました。グローバル・リサーチコンソーシアムの立ち上げによって、各種定義や測定方法、研究方法に関する合意を進めていく場がつくられ、高齢者のアンメットニーズに関する国際的な応用研究プログラムへの道を開く一歩となることが確認されました。

アジア/オセアニア国際老年学会議では、プロジェクトチームを代表し、ニューカッスル大学のジャニン・シャンリー氏が6月13日に発表を行いました。

当センターは、国際的な議論を進め、革新と研究を促し、健康に関する研究課題に取り組むために、世界中の専門家との連携を重視しています。その一環として、この新たなグローバル・リサーチコンソーシアムを支援し、世界中の高齢者の医療・社会的ケアのアンメットニーズに対する理解を深めて対応を改善する取り組みを進めています。詳細はこちらをご覧ください。

コミュニティ・レジリエンスの強靭化対策に関するワークショップを開催

 

WHO神戸センターが助成する研究プロジェクトの一環として、2023年3月14~16日、韓国の仁川にある国連防災機関(UNDRR)Global Education and Training Institute (GETI)にて、ワークショップが開催されました。保健医療や災害管理の最前線で活躍する21名の専門家が8カ国から参加し、コミュニティと公衆衛生システムのレジリエンス(回復力)の強靭化するための主要な対策を策定・評価しました。

本研究プロジェクトは、オーストラリア、バングラデシュ、ブラジル、チリ、日本、スロベニア、トルコ、米国の各都市で「Disaster Resilience Scorecard for Cities(都市の災害回 復力スコアカード)」を適用し、各都市の災害回復力の現状を把握・分析し、次に取るべき災害リスク対策を都市別に検討しました。

このワークショップでは、参加者が各都市で得られた結果を共有・検討し、コミュニティ・レジリエンスの強靭化対策において主要なアクションをまとめました。これには、災害危機管理における公衆衛生かの幅広いアプローチの奨励、新型コロナウイルス感染症から得た教訓に基づく保健医療サービスの迅速な拡大、生態系のニーズとそれがレジリエンスに及ぼす影響についての理解の促進、およびメンタルヘルスやウェルビーイングに関するサービスの重視が含まれます。ワークショップに参加したWHO神戸センターの茅野龍馬医官は、多部門にわたる社会全体のアプローチに基づいて都市のレジリエンスを高めるための災害危機管理対策の重要性を強調しました。

本ワークショップに関するUNDRRのニュースリリースはこちらから。

 

WHO / Amrita Chandradas

大学生のメンタルヘルスの向上:デジタルを活用した認知行動療法の最適化

メンタルヘルスは、全体的なウェルビーイングを保つ上で欠かせない要素であり、大学生にとっては特に重要です。新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響も相まって、学生たちが直面する問題に対する効果的なメンタルヘルス対策の必要性が高まっています。

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)と京都大学は、大学生に対するデジタルを活用したメンタルヘルス対策を最適化するための研究プロジェクトを実施しました。

大学生は、幸福感や学業成績、社会的関係に悪影響をおよぼすようなメンタルヘルスの問題をしばしば抱えています。このような問題は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで社会的孤立が深まることで助長されました。これに対して、各大学はオンラインでの治療法、特にインターネットを利用した認知行動療法(CBT)を開発し、これらがうつ症状や不安症状の緩和に有望であることが示されました。

「ヘルシーキャンパストライアル」は、スマートフォンアプリによるデジタルCBTの有効性を検証し最適化することを目的とした、多施設共同ランダム化比較試験です。本試験は、2018年~2021年に関西および中部地方の5つの大学から募集した1,093名の参加者を対象としました。

参加者の特性と、過去のメンタルヘルスプログラムにおける特定のコンポーネントに基づき、研究者らは一人ひとりのうつ症状がどの程度改善するかを予測できるモデルを構築しました。デジタルCBTコンポーネントの最適化アルゴリズムにより、大学生が直面するうつ症状に対するガイダンスや治療を、一人ひとりに最適なものにできます。また本研究からは、自分のうつ症状を定期的に確認するだけでも、うつ症状の軽減に有意な影響があることが示唆されました。この知見は世界各国・地域において、試験デザインや公衆衛生・臨床における意思決定に影響を与えるでしょう。得られた知見やアルゴリズムは、国内の大学や地方自治体に紹介される予定です。

フォトクレジット:WHO / Amrita Chandradas

 

広島大学大学院にて講義

WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官は、2023年5月25、広島大学大学院の医療政策・国際保健概論にて、英語でのオンデマンド講義を行いました。ローゼンバーグ技官は、 “The role of the WHO in the global governance of health and disease” を主題に、新型コロナウイルス感染症パンデミックにおけるGlobal Health Governance(GHG)の重要性を、International Health Regulations (2005) などの実例を交え説明しました。さらに、GHGの課題やWHOならではの役割を示し、講義を締めくくりました。また、 茅野龍馬医官も同講義の一環として、次週6月1日に “The transition of MDGs/SDGs and global health” の講義を行う予定です。 

健康危機発生時における標準化されたリアルタイムでのヘルスデータ報告システムに関する論文発表

日本は、過去10年間に何度も大地震を経験し、甚大な健康被害や壊滅的な社会的影響を受けており、災害による健康問題のさらなる理解と、迅速な対応が必要とされています。それに関連して、WHO神戸センターが助成し、広島大学が主導した研究プロジェクトより、リアルタイムでの標準化されたヘルスデータ報告システムの論文が発表され、学術誌「Prehospital and Disaster Medicine」に掲載されました。

日本版災害時診療概況報告システムJ-SPEED は、2018年に発生した北海道胆振東部地震の際に、32の災害医療チーム(Emergency Medical Team - EMT)の標準診療日報として使用されました。災害医療チームはJ-SPEED診療日報を利用し、患者数や、EMT診療時に相談を受けた健康上の問題などの情報が収集し、緊急対策本部に報告することができます。収集されたデータの分析結果によると、EMTが対応した32日間で739件の健康相談があり、そのうち97.6%は最初の2週間に行われていました。相談者のほとんどは65歳以上で、女性が大半を占めていました。最も多く報告された健康問題は、災害ストレス関連の症状(15.2%)で、次いで、創傷(14.5%)、皮膚疾患(7.0%)でした。この研究により、災害による健康被害を可視化するためには、標準化されたデータ収集方法と報告システムが重要であることが本研究により明らかになりました。こうした知見は、データに基づく被災地の医療ニーズの分布と推移を把握し、EMTの対応調整を可能にするとともに、エビデンスに基づいた実践を確立するために役立ちます。

本論文を共同執筆したWHO神戸センターの茅野龍馬医官は、緊急災害時のヘルスデータ管理の強化には、標準化されたデータ報告システムを用いてエビデンスを提供し、災害による健康問題への理解を深めた上での対応の重要さを強調しました。

Yumiya Y, Chimed-Ochir O, Kayano R, Hitomi Y, Akahoshi K, Kondo H, Wakai A, Mimura S, Chishima K, Toyokuni Y, Koido Y, and Kubo T. (2023). Emergency Medical Team Response during the Hokkaido Eastern Iburi Earthquake 2018: J-SPEED Data Analysis. Prehospital and Disaster Medicine, 1-6. doi:10.1017/S1049023X23000432

世界災害救急医学総会にて健康危機リサーチネットワークのメンバーが発表

世界災害救急医学会(The World Association for Disaster and Emergency Medicine: WADEM)の年次総会が5月にアイルランドのキラーニーで開催され、WHO神戸センターで災害・健康危機管理の研究分野を担当する茅野龍馬医官が出席しました。

WHOはこの総会で、災害・健康危機管理に関するセッションを主催し、WHO本部のカイ・フォン・ハーブー氏と茅野医官が共同して、WHOにおける防災と災害・健康危機管理に関する取り組みや研究事例について話し合いました。茅野医官が座長をつとめたパネルディスカッションでは、WHO災害・健康危機管理に関するグローバルリサーチネットワーク(Health EDRM RN)のメンバーが登壇し、現在進行中の研究活動を報告し、ウェビナーや研修プログラムの共催、国際的な共同研究プロジェクトなど、グローバルな協働を促進する上でHealth EDRM RNが果たしている役割の重要性を強調しました。また、アジア太平洋災害精神保健ネットワーク (The Asia Pacific Disaster Mental Health Network) などの研究パートナーの設立や、出版物「WHO災害・健康危機管理枠組」(2019年)および「WHO災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」(2022年改訂)の共同執筆を例に、これまでの活動実績を発表しました。

パネルディスカッションでは今後の戦略についても触れ、研修コースの設立、地域・世界規模での会議における協働やネットワーキング、またエビデンス普及に向けた戦略の強化などについて議論しました。WADEM総会の関連情報については、#wadem2023もご確認ください。

 

協力をいただいた以下の方々に感謝します。

アンドリュー・ラヴェル氏(米国、世界災害救急医学会)

ヴァージニア・マレー教授(英国、英国健康安全保障庁)

オドゲレル・チメドオチル氏(広島大学)

ベンジャミン・ライアン氏(米国、ベイラー大学)

カイ・フォン・ハーブー氏(WHO)

久保達彦氏(広島大学)

 

写真:改訂版WHOガイダンスを紹介する久保達彦氏、オドゲレル・チメドオチル氏、カイ・フォン・ハーブー氏、ヴァージニア・マレー教授、茅野龍馬医官、ベンジャミン・ライアン氏。

画像提供:WADEM

 

older person in a care centre

世界各地の高齢者の満たされていないヘルスケアのニーズを把握する予測モデルの検討

人口高齢化が進むにつれて、高齢者の保健医療に対するニーズは複雑化しています。一方、多くの国ではそうしたニーズがすべて満たされているわけではなく、サービスが提供されていなかったり、アクセスしにくかったり、負担可能な価格ではなかったりします。高齢者の保健医療に対する未充足のニーズ(アンメットニーズ)を測定することは複雑で多面的な課題であり、標準化された定義も合意された測定方法もありません。ニーズが部分的に満たされている場合もあれば、困難や遅れがありながらも満たされる場合、また、満たされる時と満たされない時があるという場合もあります。保健医療と社会的ケアのサービスが提供され、アクセスできたとしても、それらが必ずしも患者の問題に適した方法で提供されていなかったり、患者が満足できるものでなかったりする場合もあります。既存の調査方法では、アンメットニーズを抱える人の把握や、ニーズが満たされていない理由の理解について、必ずしも正確に捉えられないのが現状です。

WHO神戸センターが支援する最近の研究では、統計的モデルを用いてこのような情報を把握し予測する方法について検討しました。

保健医療におけるアンメットニーズに関する既存の研究では、自己申告に基づいてアンメットニーズを測定することがほとんどです。しかし自己申告による調査だけでは、ニーズの認識やケア利用に対する意向など、バイアスをもたらす多くの要因に左右され、ケアを受けられなかった理由や、需要または供給に関する障壁、サービスカバレッジの改善方法について、詳しい情報が得られません。WHO神戸センターが以前支援した自己申告を用いた調査研究においても、明らかになったアンメットニーズの割合には非常に大きな幅がありました。

そのため本研究では、アンメットニーズの指標となり得る複数の変数からなる統計モデルを特定し、実際の発生率をより正確に予測することを目的としました。それには個人的要因(年齢、性別、教育レベル)、促進要因(社会的・経済的支援)、状況要因(保健医療制度や環境)などが含まれます。

この研究からは、個人的・社会的・状況的な要因が予想以上に強い影響力をもつため、普遍的に適用できるモデルの構築は困難であることが明らかになりました。アンメットニーズの発生率を測定する上で、特定の要因がもつ影響力が国によって大きく異なることが分かり、普遍的な測定方法を開発する妨げとなりました。一方で、高齢者の保健医療におけるアンメットニーズは、世界のほとんどの国で発生している主な課題であることに変わりはなく、アンメットニーズの一因となる各国や地域に固有の背景を理解するために、さらなる研究が必要です。

アンメットニーズに関する当センターの活動については、こちらをご覧ください。

ワーキングペーパー:低・中・高所得国における高齢者のアンメットニーズの測定:理論的・分析的なモデルの構築

本ワーキングペーパーの執筆者は次の通りです。
Barbara Corso、Kanya Anindya、Nawi Ng、Nadia Minicuci、Megumi Rosenberg、Paul Kowal、Julie Byles