2023-06-13

医療やケアの未充足ニーズに関するグローバル・リサーチコンソーシアムをアジア/オセアニア国際老年学会議で発表

IAGG 2023 unmet needs session poster

第12回 アジア/オセアニア国際老年学会議(IAGG-AOR 2023)が、6月12~14日に横浜で開催されます。

学会2日目には、高齢者における医療やケアの満たされないニーズ(アンメットニーズ)に関するWHO神戸センターとの共同研究について、オーストラリア・ニューカッスル大学の研究者らがポスター発表を行いました。この他、2023年後半に発足する予定の、アンメットニーズに焦点を当てた新たなグローバル・リサーチコンソーシアムについての発表も行います。

世界の人口高齢化は、保健医療制度にとって大きな意味をもちます。一方で、世界におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の進捗をモニタリングする現行の方法では、高齢者の医療に対する複雑なニーズが十分に捉えられていません。不足する情報を補うため、当センターは、高齢者の受診控えに関するシステマティックレビューとメタ分析、および60歳以上人口を対象に、80を超える国の調査データの二次解析をもとに高齢者の未充足ニーズの発生率を推測する研究を行いました。

これらの研究からは、保健医療全般における未充足のニーズに関して、より多くのデータを利用可能にし、データの質を向上させていく必要性が明らかになりました。特に高齢者の未充足ニーズや社会的ケアにおける未充足ニーズに関するデータが求められています。本研究の次の段階として、当センターはニューカッスル大学の研究者と連携し、この分野の研究を推進するグローバル・リサーチコンソーシアムの発足に向けて協議を行なっています。このプロジェクトでは、世界の専門家が集まり、高齢者の医療と社会的ケアのアンメットニーズに関する一連の会議を開催してきました。専門家は、専門分野、地域、性別、キャリアステージの多様性が確保されるように選出されました。会議を通じて優先すべき研究領域が特定され、アンメットニーズの測定方法を相互に比較できるようにすることや低所得国でのデータの取得などが含まれました。多くの国では、介護や支援を含む社会的ケアが医療と比べて整備が遅れているため、人々のニーズが満たされているかを評価する基準を標準化しにくく、より状況に応じたアプローチが必要となる可能性が示唆されました。グローバル・リサーチコンソーシアムの立ち上げによって、各種定義や測定方法、研究方法に関する合意を進めていく場がつくられ、高齢者のアンメットニーズに関する国際的な応用研究プログラムへの道を開く一歩となることが確認されました。

アジア/オセアニア国際老年学会議では、プロジェクトチームを代表し、ニューカッスル大学のジャニン・シャンリー氏が6月13日に発表を行いました。

当センターは、国際的な議論を進め、革新と研究を促し、健康に関する研究課題に取り組むために、世界中の専門家との連携を重視しています。その一環として、この新たなグローバル・リサーチコンソーシアムを支援し、世界中の高齢者の医療・社会的ケアのアンメットニーズに対する理解を深めて対応を改善する取り組みを進めています。詳細はこちらをご覧ください。