2023-05-31

大学生のメンタルヘルスの向上:デジタルを活用した認知行動療法の最適化

WHO / Amrita Chandradas

メンタルヘルスは、全体的なウェルビーイングを保つ上で欠かせない要素であり、大学生にとっては特に重要です。新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響も相まって、学生たちが直面する問題に対する効果的なメンタルヘルス対策の必要性が高まっています。

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)と京都大学は、大学生に対するデジタルを活用したメンタルヘルス対策を最適化するための研究プロジェクトを実施しました。

大学生は、幸福感や学業成績、社会的関係に悪影響をおよぼすようなメンタルヘルスの問題をしばしば抱えています。このような問題は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで社会的孤立が深まることで助長されました。これに対して、各大学はオンラインでの治療法、特にインターネットを利用した認知行動療法(CBT)を開発し、これらがうつ症状や不安症状の緩和に有望であることが示されました。

「ヘルシーキャンパストライアル」は、スマートフォンアプリによるデジタルCBTの有効性を検証し最適化することを目的とした、多施設共同ランダム化比較試験です。本試験は、2018年~2021年に関西および中部地方の5つの大学から募集した1,093名の参加者を対象としました。

参加者の特性と、過去のメンタルヘルスプログラムにおける特定のコンポーネントに基づき、研究者らは一人ひとりのうつ症状がどの程度改善するかを予測できるモデルを構築しました。デジタルCBTコンポーネントの最適化アルゴリズムにより、大学生が直面するうつ症状に対するガイダンスや治療を、一人ひとりに最適なものにできます。また本研究からは、自分のうつ症状を定期的に確認するだけでも、うつ症状の軽減に有意な影響があることが示唆されました。この知見は世界各国・地域において、試験デザインや公衆衛生・臨床における意思決定に影響を与えるでしょう。得られた知見やアルゴリズムは、国内の大学や地方自治体に紹介される予定です。

フォトクレジット:WHO / Amrita Chandradas