News Archive by Year

2022

災害・パンデミック後の長期的なメンタルヘルスの経過に関するシステマティックレビュー

災害後に生じるメンタルヘルスの課題は、いかなる人にも起こり得ます。今年の世界精神保健デーでは、災害の直後だけでなく、災害発生から時間が経過している場合のメンタルヘルスについて、特に子どもや青年にフォーカスし、考えていきます。

WHO神戸センター(WKC)が資金提供した研究により、過去に起きた緊急事態や災害が、現時点での精神衛生に与える影響の大きさが明らかになりました。カーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士が率いる多国籍チームは、英語、中国語、日本語で示された200以上の研究の結果を統合し、うつ病と不安の割合が災害後何年も高いレベルを維持し、特に子供や青年ではその割合が著しいことを示しました。

「平均して、災害の影響を受けた人々の24%が、曝露後の最初の6ヶ月間に臨床的に重要な心的外傷後ストレス症候群(PTSS)を発症し、28%がうつ症状を発症し、23%が不安症状を発症する。」

このように多言語で行われたシステマティックレビューは過去に前例がありません。メンタルヘルスの有病率は経時的に緩やかな改善を示しましたが、有病率の変化はメンタルヘルスのタイプにより異なることが明らかになりました。PTSSの有病率は暴露後数年で有意に改善し、回復の経過に関して年齢による差は観察されませんでした。

しかし、うつ病と不安症状の有病率は災害後何年も高いレベルを維持し、子供と青年は大人と比較した場合、災害直後またその後何年も、有意に高い率を示しています。

「これらの研究結果は、被災地において、子どもや青年の心理的ニーズを配慮した持続可能なメンタルヘルスケアシステムを確立する必要性を示している。」

地震とパンデミックは、心的外傷後ストレス症状(PTSS)の高い有病率と関連しており、この結果は、地震の多い日本には特有なリスクがあることを示しています。そのため政策立案にあたっては、災害の物理的・社会的側面への迅速な対応を検討する必要があります。この研究は、復興の初期段階や災害から数年経過した段階において、PTSS、うつ病、不安症状に対処するために、適切な介入が必要であることを示唆しています。

研究結果はこちらでご覧いただけます。

主席研究員であるカーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士からの説明をご覧いただけます。こちら

Elizabeth A. Newnham, Enrique L.P. Mergelsberg, Yanyu Chen, Yoshiharu Kim, Lisa Gibbs, Peta L. Dzidic, Makiko Ishida DaSilva, Emily Y.Y. Chan, Kanji Shimomura, Zui Narita, Zhe Huang, Jennifer Leaning, Long term mental health trajectories after disasters and pandemics: A multilingual systematic review of prevalence, risk and protective factors, Clinical Psychology Review, Volume 97, 2022.  

  • School of Population Health, Curtin University 
  • Curtin enAble Institute 
  • Asia Pacific Disaster Mental Health Network 

 

神戸学院大学で講義

当センターのローゼンバーグ恵美技官は、10月6日(木)に神戸学院大学法学部の学生を対象に、国際保健分野におけるWHOの役割とユニバーサルヘルスカバレッジへの取り組みについてオンライン講義を行いました。とりわけ同学部の山越裕太准教授による研究論文、『世界保健機関の内的変容と課題~財政、ネットワーク、新型コロナウイルス感染症』を引用しながら、2000年頃を境としたWHOの役割や立場の変化、それと関連する財政事情、また、この度のパンデミックにおいて果たした役割などについてお話しました。

日本赤十字広島看護大学で講義

当センターのローゼンバーグ恵美技官は、9月16日(金)に日本赤十字広島看護大学の3年生を対象に、WHOの役割や国際救援看護師に求められる能力などについてオンライン講義を行いました。同講義は、国際救援や開発協力に関わる国際機関の活動と役割を理解することを目的に、普段は国際赤十字の活動拠点のあるスイス・ジュネーブで同大学が行っている研修の一部ですが、今年はパンデミックとウクライナ人道危機によって国際的な移動の安全が確保できないことから日本でオンライン形式で行われています。

Picture of Dr Sarah Louise Barber - Director WKC

「敬老の日」に寄せて WHO神戸センター所長からのメッセージ

本日、9月19日、日本では敬老の日を迎えます。

高齢者が社会に貢献されてきたことを称え、感謝する日です。WHO神戸センターは、長きにわたり兵庫県と神戸市にご支援をいただいていますが、この兵庫県に『敬老の日発祥のまち』(多可町)があることを嬉しく思います。

日本は100歳以上の高齢者(百寿者=センティネリアン)が非常に多いことで世界的に知られています。この方々をはじめ、地域社会に多大な貢献をされている全ての高齢者に敬意を表します。

人々が健康で活動的な生活を長い間続けるには、高齢者の多くのニーズに対応した総合的な医療や社会システムが確立されていることが必須です。WHO神戸センターは高齢者が経済的困難に陥ることなく長期にわたって必要な支援を受けられるよう、持続可能な公的財政システムに関する研究や提言も行っています。

WHO神戸センターは、日本の関西地域をはじめ、世界中の研究機関や研究者と協力をし、すべての高齢者が医療と社会福祉サービスを適切に受けられるようにするための研究を続けています。その一例として、現在、京都大学と協力して、関西地域の高齢者が必要な医療サービスを受ける際に直面する経済的・社会的な課題を社会福祉士の知見に基づいて明らかにし、それらへの対処法も提案しようとしています(詳細はこちらをご覧ください)。

こうした研究の成果は、高齢者の健康面や社会面でのニーズに対応する施策を講じるのに役立てもらえるよう、地元自治体の政策立案者と共有されます。また、同じような問題に直面する世界中の国々とも共有されます。WHO神戸センターのミッションの詳細はこちらをご覧ください。

オーストラリア・インドネシア政府共同研修プログラムにて講演

WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、2022年9月14日にオーストラリア政府とインドネシア政府が共同で開催した研修プログラムにて、「Health Emergency and Disaster Risk Management (Health-EDRM)」について包括的な講演を行い、様々な保健課題に対するWHOの取り組みや災害・健康危機管理Health Emergency and Disaster Risk Management (Health-EDRM)のコンセプト、リサーチプロジェクトについて話をしました。 

神戸大学大学院保健学研究科で講義

WHO神戸センターの茅野龍馬医官は、2022年9月1日に神戸大学大学院保健学研究科で、International Course for Health Sciences(ICHS)にて、博士課程の学生を対象に、オンライン講義を英語で行いました。「Health Emergency and Disaster Risk Management」というテーマで、様々な保健課題に対するWHOの取り組みや災害・健康危機管理Health Emergency and Disaster Risk Management (Health-EDRM)のコンセプト、リサーチプロジェクトについて話をしました。 

関西学院大学主催の国連セミナーで講義

関西学院大学が2022年8月26日に開催した「国連セミナ」にて、WHO神戸センターの茅野龍馬医官が講義を行いました。本セミナーは、国連機関の役割や持続可能な開発目標(SDGs)、および世界が直面している課題について、学生たちが現役の国連職員から直接学ぶ機会となっています。茅野医官はオンラインで登壇し、「グローバルヘルスとWHO 21世紀の保健課題とCOVID-19」というテーマを主軸に学生へ向けて話をし、国連機関でのキャリア形成についても有益なインプットを提供しました。 

WKCフォーラム 2022 Our planet, our health -私たちが考える地球規模の健康課題- 開催のご案内

今年の世界保健デーのテーマは「Our planet, our health(私たちの地球、私たちの健康)」です。未曽有の感染症、高齢化、災害危機管理など、グローバルな対応と国やコミュニティー間の連帯が必要となる健康課題は数多く存在します。このような背景から、 WHO神戸センターは今年、様々なグローバルヘルスの課題について学び、議論する機会となる学生フォーラムをオンラインにて開催する運びとなりました。

パネルディスカッションにはグローバルヘルスの専門家が登壇予定です。ブレイクアウトセッション(視聴者参加型セッション)では環境、スポーツ、経済、教育など12のテーマで健康課題について参加者と議論を深めます。健康問題に個々人が取り組むための第一歩となるような議論を皆さまと共に作り上げます。私たちの健康について一緒に考えてみませんか。

 

フォーラム概要

日時:2022925日(日)13:00-16:10

プログラム内容はこちら

参加対象:日本国内の中高生(高専生含む)、大学生、大学院生
※1 基調講演とパネルディスカッションは上記の学生に限らず、一般のすべての方が視聴できます。
※2 教育関係者や一般の社会人等、学生以外の方で、他の学生と同様に分科会の議論に参加を希望される方については、個別にご相談ください。

オンライン配信参加方法:事前にこちらのURLよりお申し込みください。

 

締切り:2022923日(金)正午

主催:WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)

共催:inochi WAKAZO project

「WHOサマースクール」開催について

兵庫県神戸市にあるWHO神戸センター(WKC)は、地元貢献事業の一環として将来、国際保健分野で活躍する学生たちへの啓発・育成プログラムを毎年開催しています。

国際社会は大きな歴史の岐路に立っています。未曽有の感染症、紛争や政治的対立、経済格差など国際社会が直面する課題は様々です。このような地球規模の課題に取り組み、持続可能な社会を実現するために、私たちは何ができるでしょうか。

今回開催する「WHOサマースクール」では、WHOや日本に拠点がある国連機関の職員との対話や参加者同士のディスカッションを通して、コロナ禍で人類が直面する健康課題を含む、さまざまな地球規模の課題への理解を深めます。そして、探究課題に取り組み、その成果を925日の「WKCフォーラム」にて発表いたします。

尚、サマースクールおよびフォーラムは基本的にオンライン開催となります。

 

【開催概要】

主催:WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)

日程:20229521日「WHOサマースクール」および25日「WKCフォーラム」

実施場所:オンライン、WHO神戸センターオフィス(感染状況により判断)

プログラム内容:詳細についてはこちらの募集要項をご確認ください

参加対象:日本国内の高校生、大学生、大学院生(留学生を含む)

応募先:wkc@who.int  までメールにてご応募ください
 

締切り:2022819日(金)17:00

誰一人取り残されることのない医療福祉制度を考える、WKCフォーラム開催の報告

7月28日、WKCフォーラム「複合課題をもつ世帯 周縁化された人々への支援には どのような制度・対策が必要か?~誰一人取り残さない支援へのチャレンジ~」が開催されました。超高齢社会の先頭を走る日本社会では、医療に関する経済的問題や現場の課題が山積しています。背景には、専門職内および専門職間で課題や対策が共有されにくい現状があります。当日は、約150名の自治体関係者、研究者、市民が参加し、それぞれの立場から出された共通の課題や、課題への対策、関連する制度のあり方について確認し、誰一人取り残されることのない医療福祉制度の構築について議論を交わしました。

 

【開催概要】

複合課題をもつ世帯 周縁化された人々への支援には どのような制度・対策が必要か?
~誰一人取り残さない支援へのチャレンジ~

日時:2022年7月28日(木) (17:00–19:00)

会場:WEB会議システムによるオンライン開催(Zoom)

参加費:無料(要事前登録、先着300名)

共催:京都大学 大学院医学研究科 医療経済学分野・WHO神戸センター(WKC)