News Archive by Year

2013

中国・大連市の職員研修団を受入れ

2013年4月25日から26日まで、WHO神戸センターでは、中国・大連市からの職員研修団の受入れを行いました。この事業は、厚生労働省、社団法人国際厚生事業団、及びWHO中国事務所との協力により実施されました。

2日間の訪問中、WHO神戸センターでは、保健に関する多部門間連携(ISA)、禁煙都市、健康的な都市計画と公衆衛生、健康危機管理などセンターが実施している研究分野の説明に加え、アーバンハートの研修を実施しました。また、研修団はWKC職員と共に「人と防災センター」を訪問、阪神淡路大震災と防災について学びました。

訪問の最後に、今後も双方のパートナーシップを継続していくことを確認しました。

都市部における災害対応のための リーダシップ養成パイロット研修コースを開催

WHO神戸センターでは、地方自治体において緊急・災害発生時に保健医療支援を担当する幹部職員を対象とした研修コースを開発し、2013年2月24日(日)に20名の参加者を招いてパイロット研修コースを実施しました。この研修コースは、(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構より助成を受けて実施している「兵庫県内地方自治体における災害保健医療関連技術支援強化・イノベーションをめざすリーダーシップ養成プロジェクト(City LHITEプロジェクト)」の一環として実施しています。

研修コースは、地方自治体や都市部の医療従事者や保健衛生分野担当者を対象に、都市部における災害時の健康危機管理および災害対応における技術やイノベーションに関し、その知識とコンセプト、指針、そして対応戦略策定のための知識と理解を深めてもらうことを目的としています。研修は、以下の3つのモジュールに沿って実施します。

  1. 健康危機管理の指針
  2. 健康危機におけるリーダーシップ
  3. 緊急時の技術およびイノベーション

研修コースは、参加型グループワークショップを中心にデザインされており、お互いの経験を共有し、参加者のフィールドにおける経験に根ざした研修内容となっています。研修パッケージは、様々な医療・保健分野のトピックについて、参加者に必要な技術・情報が含まれています。

パイロット研修では、国、そして県、市レベルの専門家や担当者に対し、救急医療情報システム(EMIS)や災害派遣医療チーム(DMAT)といった日本にける災害時の保健医療支援スキームの最新情報を提供すると同時に、公衆衛生におけるリーダシップ研修を実施しました。参加者からは、実際に体験した災害対応や日本で発生した災害時の事例など、様々な実際の経験や事例が出され、この新しい研修コースをより深く理解することに役立てられました。

「City LHITEプロジェクト」における研修コースは、厳正なニーズ分析と健康危機における既存の研修コースを総覧・分析した上で設計されています。イノベーションと技術の分野において、当該プロジェクトのような都市部の健康危機管理、特にリーダーシップの養成に焦点をあてた研究事例は他にはありません。最近発生した大規模災害を通じて、より早くより効率的な医療支援を実施するためには、最新技術やイノベーションを活用しなければならないとの認識が高まっています。

本プロジェクトは、(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構、阪神淡路大震災記念 人と防災未来センター、兵庫災害医療センター、および長崎大学大学院歯薬学総合研究科との共同研究です。

国際協力・交流のお祭り「ワン・ワールド・フェスティバル」に参加

2013年2月2日~3日 -- 大阪・大阪国際交流センター(アイハウス)で開催された国際協力・交流のお祭り「ワン・ワールド・フェスティバル」にWHO神戸センターも参加しました。

晴天に恵まれ、多くの方々にご来場いただきました。WHO神戸センターの紹介ブースにも500名以上の方々に足を運んでいただき、急激な都市化による健康の公平性の危機、高齢化社会、そしてそれらグローバル問題に取り組んでいるWHO神戸センターの活動について説明を行いました。

また、3日(日)に行われたWHOを含む国連機関・国際機関支援団体6機関(UNEP、アジア開発銀行、UNHCR、世界銀行、日本UNHCR協会、日本WFP協会、WHO)によるキャリアセミナーには、立ち見を含め50名以上の参加があり、各機関の紹介に加え、これから国連機関への就職を目指す参加者との活発な意見交換が行われました。

ご来場頂きました皆様、ありがとうございました。

ワン・ワールド・フェスティバルについてはこちら

中嶋宏元WHO事務局長死去 -- 保健分野に大きな功績を残す

日本人初の国連機関トップとして世界保健機関(WHO)事務局長を務めた中嶋宏氏が26日(現地時間)、フランス西部ポワチエの病院で死去いたしました。84歳でした。

東京医科大学 において 薬理学と神経精医を専攻し、同大から 薬理学と神経精医を専攻し、同大から 医学(士) 及び 博士号を取得。博士課程修了後、パリ大学フランス国立健康医研究所にて 博士課程修了後、パリ大学フランス国立健康医研究所にて 12 年間研究を 行っ た後 日本に帰国し、ロシュの研究ディレクターに就任。

1974 年(昭和 49 年)世界保健機関( WHO )に入職 し、 薬剤政策管理部門チーフ と して、必須医 薬品に関する最初の専門家委員会事務局をつとめ、必須薬品のコンセプト作りに主導的な役割を果たしました。

1978 年(昭和53 年) から1988年までWHO 西太平洋地域事務局 長として勤務。1988年(昭和63年)に第4代WHO事務局長に選出され、1998 年(平成10年) 7月に引退するまで同職を務めました。

現在のWHOにおける多くの成功事業は中嶋氏の功績によるものです。中嶋氏のリーダーシップのもと成功を遂げた主な事業には以下のものがあります。

  • 1995年にWHOが推進を始めた結核のDOTS(直接観察監視下での短期治療)
  • マラリアの媒介昆虫制御
  • 小児疾患の統合管理
  • 小児期における予防接種グローバルキャンペーンの拡大

中嶋氏の数多くの功績の中に、1995年にWHO諮問委員会にてその設立が決定された、WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)の設立があります。

現在スイス・ジュネーブにおいて開催中のWHO諮問委員会において、マーガレット・チャンWHO事務局長は中嶋氏の訃報を伝えると共に、「中嶋氏にとって、人々の健康こそが、彼が主導した多くのイニシアティブの原動力でした。中嶋氏が最も力を注いだのがポリオの撲滅です。我々はその達成に近づいています。ポリオ撲滅に向け更なる努力を重ね、中嶋氏への賛辞としましょう」と述べました。

公衆衛生における中嶋氏の貢献をたたえ、WHO諮問委員会では、WHO加盟国、市民団体、WHO職員そして他の参加者による黙祷がささげられました。中嶋氏は、妻であるマーサさん、そして二人の息子さんを残して逝かれました。

2012

フィリピン・パラニャーケ市が2012年度 国際都市連合賞を受賞

健康都市連合(AFHC、事務局:東京)は、都市部に暮らす人々の保健と健康増進を目指す加盟都市の優れた取り組みを評価し表彰しています。

先ごろ開催された、第5回健康都市連合国際大会(2012年10月24日~27日 於:オーストラリア・ブリスベン)において、フィリピンのパラニャーケ市が、クリエイティブ・ディベロップメント賞を受賞しました。これは、WHO神戸センターが開発したアーバンハート(都市における健康の公平性評価ツール)の導入・実施による同市の健康の公平性に関する取り組みが高く評価されたものです。

受賞に際し、パラニャーケ市のフロレンシオ・ベルナベ市長は、「アーバンハートは、市の異なる地域における医療保健サービスの格差を究明し排除するための非常に貴重なツールである」と述べました。また、アーバンハートが、市のリプロダクティブヘルスと家族計画に関するプログラムと連携することにより、妊産婦の死亡数の減少ならびに小児予防接種率の増加に貢献していることが明らかになりました。

日本における徒歩通学と小児肥満予防の関連性

WHO神戸センターは、日本における徒歩通学と小児肥満の関連について調査し、学術論文を American Journal of Public Health に発表しました。本論文において、日本における徒歩通学が小児肥満予防につながったと結論づけ、各国ならびに各自治体において有用な教訓であると提案しました。

徒歩や自転車での通学は学童期の重要な運動手段です。昨今、先進国を中心に小児肥満予防の観点から徒歩通学を推進する動きがみられます。一方、日本では他の先進国に比べ、徒歩や自転車での通学が非常に高い率 (98.3%)で行われている現状があり、このような徒歩通学は1953年より実施されています。

日本では各自治体において、教育委員会が個別に存在し、公立小学校および中学校を管轄しています。これらの教育委員会は独自に地理、天候、交通の状況を考慮し、個々の通学方法を決定します。都市部においては、ほとんどの小中学校が徒歩圏内にあるため、徒歩通学が一般的な通学方法となっています。その地区の特徴によってさまざまな安全対策が取られており、保護者、学校職員、自治体ボランティアなどが通学の際に監督を行っている様子も多く見受けられます。

   

徒歩通学が運動習慣をもたらすことから、小児肥満の予防につながったと考えられます。これから徒歩通学の推進を考える各国の自治体への提言として、(1)徒歩通学の取組みの基盤を作るために、既存の学校ネットワークを活かし、日本で行われているような(教育委員会など) 地方組織の管轄によるものへと組み換えること (2) 安全対策を確立すること (3) 地域の特性によって臨機応変に対応することを挙げました。

 

 

関連リンク

  • The American Journal of Public Health

    "Walking to School in Japan and Childhood Obesity Prevention: New Lessons From an Old Policy"; Nagisa Mori, Francisco Armada, D. Craig Willcox.

    American Journal of Public Health: November 2012, Vol. 102, No. 11: 2068–2073.

 

第5回健康都市連合国際大会にて、「Health in All Policies(全ての政策に健康の視点を)と非感染性疾患」に関する講座を開催

オーストラリア・ブリスベン -健康都市連合が隔年で開催する国際大会の第5回大会が、同時開催の国際健康都市フォーラムと併せて、オーストラリア・ブリスベンにおいて2012年10月22日~31日の10日間の日程で開催されました。テーマは、「健康な都市化: 健康な人々–健康なコミュニティー」。大会期間中の10月24日、WHO神戸センターは、「Health in All Policies (HiAP: 全ての政策に健康の視点を)と非感染性疾患」と題し、4時間の講座を開催しました。

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2012 年 世界精神保健デー

10月10日は世界精神保健デーです。世界精神保健デーは精神保健における課題についての一般的な認知を広めるために始まりました。世界精神保健デー当日は、精神障害に関する公開討論や、予防やケアサービスなどへの投資を促す行事が世界中で行われます。今年のテーマは「うつ病: 世界的危機 」です。うつ病の患者は世界で3億5000万人以上。患者は世代や社会を超え、世界疾病負担を深める大きな要因となっています。うつ病の治療にはよく知られた効果的な治療方法がありますが、多くの国においてその治療へのアクセスが問題となっており、国によっては患者の10%以下しか適切な理療を受けられない現状があります。

「第6回世界都市フォーラム」にて、ネットワーキング・イベントを開催

イタリア・ナポリ -- 国連ハビタット(国際連合人間居住計画)が隔年で主催する「世界都市フォーラム」、第6回フォーラム(2012年9月1日~7日)期間中の9月3日(月)、WHO神戸センターは、「都市の将来に活力を:多部門連携をとおして取り組む都市の保健と健康の公平性」と題し、ネットワーキング・イベントを催しました。

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夏を健康に過ごすために

盛夏を迎え、休暇にクールビズ、屋外での健康的な運動など、楽しみ方は人さまざまです。しかし、厳しい暑さに対処するためには、十分な注意が必要です。とりわけ、乳幼児やお年寄り、ホームレスなどの生活困窮者、また、病弱であったり障害があるなど、より影響を受けやすい人々にとって、暑さのもとに身を置くことは、健康を損なうのみならず、生命の危険をも招きかねません。事実、炎天下での激しい運動などにより、誰しもが暑さのために増幅した健康リスクにさらされます。

厳しい暑さのもとでは、外的環境や個々の健康状態が身体を冷やす能力に影響を及ぼします。たとえば、湿度が高いと、身体から暑気をはらうに十分な発汗作用が妨げられてしまいます。また、高齢者においては、高温の状況でもしっかりと身体を冷やすことができるかどうかという側面で、循環器や呼吸器系の持病がもたらす影響が懸念されます。

一般的に、厳しい天候や気候現象は、人々が暮らす条件と相互に作用しながら、その影響という点において、他の自然災害に類したリスクをもたらします。

しかしながら、対策としての政策やプログラム、実際的な対応策や人材育成のツールなどを都市やコミュニティに取り入れることで、気候や災害のリスクに対してより回復力を高めることが可能です。世界の国々の政府は、熱暑への暴露に対する方策として作業枠組みの構築に努めており、ひいては、そのより広範な緊急災害管理システムへの統合が果たされるよう取り組みを続けています。

日々の暮らしや仕事を快適に、また、生産性の高いものにするために、夏場の暑さに対処するにあたっては、以下の事柄に留意しましょう:

1. 暑さへの対応力を養い、暑さに備えた生活態度を心がける

  • 新鮮な水を多めにかつ定期的に飲む。
  • 服装には配慮して、軽く、袖の短いゆったりした綿素材のものを身に付ける(「クールビズ」を実践)。
  • 屋外では、日焼け対策を万全に。
  • 果物や野菜を食べ、こってりした食事やアルコールは避ける。コーヒーの飲み過ぎにも注意。
  • 喫煙は慎む。
  • 熱中症の兆候を知っておく、また、発症時の応急手当てができるようにしておく。

2. 周辺環境への目配りを

  • 家や職場など屋内で過ごす際には、できるだけ屋外の気温に近く、28℃を目処にエアコン温度を設定。扇風機を活用する。
  • 日中の暑い時間帯、直射日光を受ける窓には遮光を施す。
  • 発熱を伴う不必要な電化製品等(白熱灯など)の電源は切る。
  • 地域のニュース番組や保健当局から発信される注意報など、情報収集は怠りなく。

夏は健康で楽しく過ごすべき季節です。正しい知識をもって、暑さがもたらすリスク軽減に備えることは、今夏を、そして次の夏を元気に過ごすことにつながります。

 

Downloads

Heat waves, floods and the health impacts of climate change: A prototype training workshop for city officials (WHO, 2010)