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2013

IAGG/WHO特別シンポジウム~エイジフレンドリーシティー: 測定・評価の問題

第20回国際老年学会議

2013年6月23日~27日 韓国・ソウル

WHO神戸センターは、2013年6月、韓国ソウル市で開催された第20回国際老年学会議において、『IAGG/WHO特別シンポジウム~エイジフレンドリーシティー:測定・評価の問題』を主催しました。このシンポジウムは、WHOエイジフレンドリーシティー・グローバルネットワークに正式参加したばかりのソウル市の協賛を得ました。

国際老年学会議は、国際老年学会 (International Association of Gerontology and Geriatrics; IAGG) の主要な活動です。4年ごとに開催されるこの国際会議には、多くの世界的に認められた老年社会学や老年医学の専門家が集まり、基調講演、招待シンポジウム、論文やポスター発表のセッションなどを通じて、お互いの知識や経験を共有します。第20回国際老年学会議は、2013年6月23日から27日にかけて、韓国のソウル市で開催されました。

IAGG/WHO特別シンポジウムは、WHO神戸センターが現在進めているエイジフレンドリー・シティー(高齢者にやさしい都市) の評価指標開発における、これまでの経過と成果の発表が中心となり、座長はジョン・ベアード、WHO高齢化・ライフコース部局長(ジュネーブ本部)が務めました。他にも、西太平洋地域を中心とする健康都市国際連合(Global Alliance for Healthy Cities)や日本老年学的評価研究 (JAGES)のそれぞれの参加都市や、WHOのグローバルネットワークに参加しているカナダのオタワ市、韓国のソウル市などにおけるエイジフレンドリー・シティー関連の取り組みやその評価方法などについて発表が行われました。会場の参加者との活発なディスカッションからは、WHO神戸センターによる今後の指標開発の展開に関係する重要な見解が多く得られました。


IAGG/WHO特別シンポジウム

エイジフレンドリーシティー: 測定・評価の問題

プログラム:

プレゼンテーション: (英語版)

関連リンク

公衆衛生アドバイス: 夏の暑さから健康を守るために

今年も夏の暑さが気になる季節になりました。クールビズの開始や、夏休みの計画など様々な取り組みや行事があります。しかし、厳しい暑さにさらされることは公衆衛生上のリスクを高め、十分な注意が必要となります。気温はしきい値を超えて1度上がるごとに死亡率は2~5パーセント増加すると言われています。

10年前の2003年、ヨーロッパを襲った夏に熱波により死亡率が上昇しました。いくつかの都市においては、熱波による死亡率が予想されたピーク時のレベルより4倍から5倍高くなり、最終的には12カ国で死亡者数が7万人以上増加しました。このリスクの高まりは、「都市部のヒートアイランド現象」と呼ばれており、都市部では周辺の郊外部に比べて5度以上気温が高くなります。高温はオゾン層に悪影響を及ぼし、粒子状物質による大気汚染を悪化させると言われています。

また、人口増加、高齢化や都市化は熱ストレスのリスクを高める要因ともなります。2050年までに、途上国の都市部に住む65歳以上の人口が少なくとも3倍増加すると予想されています。また、2050年代には、現在20年に1度程度の割合で起こっている熱波などの事象が、平均2年から5年に1度の割合になることが予想されています。これにより、熱ストレスとその対策は、今後数十年のグローバル、国、地域レベルにおける健康課題や優先事項になると考えられます。

2013年5月、WHO神戸センターでは、テクニカルレポート「異常高温から人々を保護し、人体への悪影響を最小限に抑制:兵庫県のヒート・ヘルス行動枠組みの作成に向けて」(“Protecting the public and minimizing health effects from heat: towards the development of a Heat-Health Action Framework for the Prefecture of Hyogo, Japan” (WHO, 2013) - 英語版) を発表しました。

このレポートは、兵庫県における熱中症を予防するための包括的な公衆衛生システムの構築への取り組みを支援するために作成されました。本レポートの作成においては、国および地方自治体の関係者を交えての証拠基盤の構築が行われました。

証拠基盤の構築と経験から得られた教訓は、気候と健康、保健医療関連サービスとの間の様々なレベルでの緊密な協力体制を敷き、新たな環境・健康面における課題に対応する必要があるということです。例えば、2003年にヨーロッパを襲った熱波の後、現時点で17カ国においてヒート・ヘルス行動計画が確立されています。

地域レベルでは、天気予報では、高温が健康に害を与える可能性がある場合の警告だけでなく、オゾンや粒子状物質による大気汚染のレベル、花粉や紫外線についての情報も提供されます。このようなサービスが、行動のためのガイダンスや計画に適切に組み込まれることにより、個人やコミュニティーが健康への害を回避・抑制することを可能にし、健康を守ることに繋がると言えます。

個人レベルにおいては、夏場の暑さに対処するにあたっては、以下の事柄に留意することが大切です。

1.暑さへの対応力を養い、暑さに備えた生活態度を心がける。

  • 日中、なるべく日差しに直接当たらないようにする
  • 水を多めにかつ定期的に飲む
  • 服装に配慮して、軽く、袖の短いゆったりとした綿素材のものを身につける(「クールビズ」を実践)
  • 屋外では、日焼け対策を万全に
  • 果物や野菜を食べ、こってりした食事やアルコールは避ける。コーヒーの飲み過ぎにも注意
  • 喫煙は慎む
  • 熱中症の兆候を知っておく、また、発症時の応急手当ができるようにしておく

2.周辺環境への目配りを

  • 家や職場など屋内で過ごす際には、できるだけ屋外の気温に近く、28℃を目処にエアコン温度を設定。扇風機を活用する。
  • 日中の暑い時間帯、直射日光を受ける窓には遮光を施す
  • 発熱を伴う不必要な電化製品等(白熱灯など)の電源は切る
  • 地域のニュース番組や保健当局から発信される注意報など、情報収集は怠りなく

留意点:
乳幼児、高齢者、ホームレスなどの生活困窮者、また、病弱であったり障害があるなど、より影響を受けやすい人々にとって、暑さのもとに身を置くことは、健康を損なうのみならず、生命の危険も招きかねません。事実、炎天下での激しい運動などりより、誰しもが暑さのために増幅した健康リスクにさらされるのです。

新・原著論文: 「路上喫煙禁止区域内に設置された喫煙所がもたらす健康への影響に関する調査研究」

WHO神戸センターは、路上喫煙禁止区域内に設けられた喫煙所がもたらす健康への影響に関する調査研究を行い、その成果を学術論文として Kobe Journal of Medical Sciences に発表しました。

日本は2004年に世界保健機関たばこ規制枠組条約 (FCTC) に署名、本条約の締約国としての規程実施が進められるも、国の政策としての履行状況は限定的であると言わざるをえません。世界的にみると、飲食スペース、海岸、公園、学校などが屋外禁煙対象となっています。しかしながら、日本では、屋外禁煙区域内のほとんどに喫煙所が設けられているのが現状で、受動喫煙防止の妨げとなっています。本研究では、路上喫煙防止条例が施行されている兵庫県神戸市において、喫煙所が及ぼす空気質への影響を調査しました。2012年8月、路上喫煙禁止区域内に設置された喫煙所で、粉塵計を用いた空気質測定を実施しました。

Yamato, H, Mori, N, Horie, R, Garcon, L, Taniguchi, M, Armada, F. Designated Smoking Areas in Streets Where Outdoor Smoking is Banned. Kobe Journal of Medical Sciences, Vol. 59, No. 3, pp. E93-E105, 2013

新・原著論文:「日本の10大都市における非感染性疾患による死亡の地域間格差」(邦題)

WHO神戸センターは、日本の10大都市における非感染性疾患による死亡の地域間格差について調査し、学術論文を Journal of Urban Health に発表しました。

近年、非感染性疾患および健康の社会格差の増大が、世界中の特に都市部において大きな問題となっています。人口の高齢化現象は、これらの問題をさらに複雑にしています。日本は、このような新たな問題に対処しながら、これまでの高い健康水準を維持するという課題に直面しています。本研究では、日本の10大都市に焦点を絞り、公式に公開されている標準死亡比を用いて、主要な非感染性疾患による死亡率の相対的な都市間および都市内地域間の格差を明らかにしました。

第8回ヘルスプロモーション世界会議

第8回ヘルスプロモーション世界会議が、フィンランド・ヘルシンキにおいて2013年6月10日~14日の日程で開催されました。今回は、「Health in All Policies(HiAP - 全ての政策に健康の視点を) 」をテーマに、ヘルスプロモーションの実際的な実施に焦点が当てられました。

この世界会議は、1986年にカナダ・オタワで開催された第1回会議以降、数年ごとに開かれており、ヘルスプロモーション分野の進展のための主要イベントとして位置づけられています。WHO神戸センター にとっても、都市部の健康、多部門連携による保健事業といった研究分野について発表する重要な機会となっています。第8回を数える今回の会議で、WHO神戸センターは、ヘルスプロモーションのための画期的な資金調達について講演するとともに、センターが取り組む研究分野から3つのセッションを主催しました。

詳しくは:イベント・レポート - 英語版

第5回アフリカ開発会議 (TICAD V)

2013年6月1日~3日、神奈川・横浜市において第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催されました。TICAD Vにはアフリカ地域51カ国からの首脳級代表団に加え、政府、国際機関、民間セクター、市民社会の代表等3,000名以上が参加し、最終日には民間主導の成長促進などを掲げた「横浜宣言」と、具体的な取り組みを盛り込んだ「横浜行動計画」が採択されました。

WHOからも、マーガレット・チャン事務局長、中谷比呂樹事務局長補(エイズ・結核・マラリア・特定熱帯病担当)、フランシス・カサロWHOアフリカ地域事務所ディレクター(疾病対策・予防担当)、アレックス・ロスWHO神戸センター所長他1名が代表団として会議に加わり、アフリカそして世界におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(すべての人々が安心して必要な保健医療サービスを享受できる制度)実現の重要性を強調するとともに、開発パートナーとの積極的な議論を行いました。

TICADプロセスの詳細については、外務省TICADサイトをご参照ください

世界禁煙デー 2013年5月31日 – たばこの宣伝、販売促進、スポンサー活動を禁止しよう

5月31日は世界禁煙デーです。毎年、世界保健機関(WHO) とその世界中のパートナーは、この日を記念して、喫煙がもたらす健康リスクを強調するとともに、たばこの消費削減に向けた効果的な政策への提言を行っています。喫煙は、世界的に最も予防可能な死亡原因であり、現在、世界の成人10人に1人の死がたばこに起因しています。



今年、2013年のテーマは 「たばこの宣伝、販売促進、スポンサー活動を禁止しよう」 です。



世界禁煙デーは、政府・産業・市民社会の関係者が、喫煙防止のために、また、たばこ製品の宣伝、販売促進、スポンサー活動の禁止のために何ができるかについて考える機会を提供します。



『たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO FCTC)』では、全締約国に対し、この条約がそれぞれの国について効力を生じた後5年以内に、あらゆるたばこの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的な禁止を求めています。実際に、包括的なたばこの宣伝禁止が、喫煙を始める、または継続する人の数を減少に導いていることが明らかになっています。統計によると、たばこの宣伝・スポンサー活動の禁止は、たばこの需要を低減させるための最も費用効率の高い方策のひとつであり、たばこ規制にとってのベスト・バイ、いわゆる一番のおすすめ策といえるのです。

目標



喫煙の流行により、世界では年間600万にものぼる人々が死に追いやられています。このなかには受動喫煙が原因とされる非喫煙者の死亡60万人が含まれています。もしこのまま何の対策もとらなければ、喫煙の流行による年間死亡数は2030年までに800万人に増加すると予測されており、これらの予防可能な死亡の80%以上は、低・中所得国に暮らす人々で占められるとされています。



世界禁煙デーの究極の目標は、現在の、また未来の世代を深刻な健康への影響から守ることのみならず、喫煙ならびに受動喫煙がもたらす社会、環境、経済に対する弊害からの保護に寄与することにあります。

2013年のキャンペーンの具体的な目的は:

  • 喫煙の開始や継続をより少なく抑えることを目指し、たばこの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止のため、各国に、WHO FCTC第13条(「たばこの広告、販売促進およびスポンサー活動」)、ならびにガイドラインの実践を促す
  • たばこ規制を弱体化させようとするたばこ産業の動き、とりわけ、たばこの宣伝、販売促進、スポンサー活動の包括的禁止を失速、停滞させようとする試みに対抗するため、地方・国・国際レベルでの取り組みを推進する

詳しくは、WHO世界禁煙デー2013 のウェブサイト(英語版)をご覧ください。

関連リンク: WHO World No Tobacco Day 2013 website - 英語版

世界禁煙デー2013 ポスター

校外学習・スタディーツアーの受入れ

2013年5月10日 -- 兵庫県立芦屋国際中等教育学校の生徒30名が当センターを訪問、国連やWHOの役割、WHO神戸センターの研究、そして国際協力の仕事に関する校外学習を行いました。

WHO神戸センターでは、地域貢献の一環として依頼に応じて中学校・高校、大学からの校外学習やスタディーツアーの受入れを行っています。 

アーバンハートの評価実施

WHO神戸センターでは、2011年から2012年にかけて、インドネシア共和国、イラン・イスラム共和国、ケニア共和国、モンゴル国、フィリピン共和国、及びスリランカ民主社会主義共和国の各国政府との協力により、都市における健康の公平性評価ツール(アーバンハート)の試験的導入に関する独自評価を実施しました。

これらの独自評価報告書は、アーバンハートを健康の公平性に取り組むためのツールとして活用を考えているすべてのステークホルダーにとって、実際にアーバンハートを試験的に導入したそれぞれ異なる状況にある自治体からの経験と教訓を学べる、貴重な情報源です。WHOにとっても、これらの報告書は、アーバンハートの活用を検討している自治体に対しより適切な支援を行うための重要な資料となります。

アーバンハート評価報告書はこちら - 英語版

中国・大連市の職員研修団を受入れ

2013年4月25日から26日まで、WHO神戸センターでは、中国・大連市からの職員研修団の受入れを行いました。この事業は、厚生労働省、社団法人国際厚生事業団、及びWHO中国事務所との協力により実施されました。

2日間の訪問中、WHO神戸センターでは、保健に関する多部門間連携(ISA)、禁煙都市、健康的な都市計画と公衆衛生、健康危機管理などセンターが実施している研究分野の説明に加え、アーバンハートの研修を実施しました。また、研修団はWKC職員と共に「人と防災センター」を訪問、阪神淡路大震災と防災について学びました。

訪問の最後に、今後も双方のパートナーシップを継続していくことを確認しました。