News Archive by Year

2017

認知症の「グローバル・アクション・プラン」WHO総会で採択

スイスのジュネーブで開催された第70回WHO総会で、5月29日、“Global Action Plan on the Public Health Response to Dementia, 2017-2025”が採択されました。これを受けて、世界各国で行動計画と戦略の立案・更新が進められます。この行動計画は、日本のみならず、高齢化が進む世界各国での認知症への対応を推し進めるものです。

WHO神戸センターでは、神戸大学と共同して、認知症ハイリスクの高齢者を対象とした早期発見・早期介入をめざす研究を進めています。

今回の行動計画は、認知症患者さんや、そのご家族、介護者の方の生活改善や地域・国レベルでの負担軽減を目指した総合的な内容で、具体的には認知症に関する啓発や認知症に優しい社会づくりの推進、認知症リスクの低減や診断、治療、ケアの改善などが含まれています。

タバコ はあらゆる人をおびやかす

5月31日は世界禁煙デーです。今年の世界禁煙デーのテーマは「タバコは成長の脅威」です。WHOでは世界が直面するタバコ問題に立ち向かい、人々の健康や開発を進めるために各国政府や各団体が積極的な対策を進めるよう求めています。

また、一人ひとりがタバコのない世界を作っていくためにできることがあります。タバコを使用しない。禁煙を始める。禁煙のサポートを受ける。
そうすることによって自分自身の健康を守ることに、また、副流煙にさらされている友人や小さな子どもたち、大切な家族を守ることにもつながるのです。

テドロス・アダノム・ゲブレイェスス博士がWHO次期事務局長に

現在開催ジュネーブでされているWHO総会で、23日、WHO加盟国はエチオピアのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス博士を次期事務局長に選出しました。エチオピア政府の推薦を受けたゲブレイェスス博士は今後7月1日に事務局長に就任し、任期は5年。2007年1月から事務局長を務めるマーガレット・チャン博士の後継者となります。

プレスリリース(英語)

日本、世界一の長寿国を維持-世界保健統計2017

5月17日にWHOが発表した「世界保健統計2017」によると2016年の男女合わせた日本人の平均寿命は83.7歳で、世界一を維持しました。

男女別に見ると、日本人女性の平均寿命は86.8歳で、WHO加盟国で首位の座を維持。一方、日本人男性は80.5歳と女性より6歳下回り、昨年同様に、スイス(81.3歳)、アイスランド(81.2歳)、オーストラリア(80.9歳)、スウェーデン(80.7歳)、イスラエル(80.6歳)に続いて、イタリア(80.5歳)と同位の6位でした。

詳細は世界保健統計2017(英語)をご覧ください。世界保健統計はWHO加盟国(194カ国)の最新の保健統計データを持続可能な開発目標(SDG)の保健に関するターゲットごとに解説。現在、世界の保健分野でどのような進展があり、どのような課題があるかを示しています。

世界保健統計2017(英語)

アレックス・ロスWHO神戸センター前所長 兵庫県功労者表彰を受賞

5月17日、平成29年兵庫県功労者表彰式が兵庫県公館で授賞式が執り行われ、アレックス・ロスWHO神戸センター前所長は国際協力の分野の功績が評価され兵庫県功労賞(国際協力功労賞)を授与されました。WHO神戸センターからの受賞は初めてで、ロス前所長は「このように名誉ある賞を受賞できたことに心から感謝申し上げます。これまでのWHO神戸センターの国際保健分野での取り組みが評価されたと思います。兵庫の教訓を世界へ、世界の知見を兵庫へと取組んできたセンタースタッフのおかげだと思います。兵庫県、神戸市は高齢化対策、保健制度、健康危機への対応においても、世界を牽引するリーダー的存在だと思います」と述べています。

WHO神戸センター 新所長にサラ・ルイーズ・バーバー博士が就任

5月1日、サラ・ルイーズ・バーバー博士がWHO神戸センター新所長に就任しました。バーバー博士は2011年10月から所長を務めた前任のアレックス・ロス氏から引き継ぎます。

バーバー博士はヘルス・エコノミスト及び保健政策の専門家で、WHO神戸センター所長就任前はWHOアフリカ地域事務局で保健政策アドバイザーを務めていました。それに先立ち、WHOインドネシア及びWHOカンボジアの保健政策アドバイザーや、WHO中国の保健システム開発チームのリーダー、WHO南アフリカ事務所所長などを歴任し、WHOの戦略及び政策の分野で実績を重ねました。

バーバー博士は南アフリカ、中国、インドネシア、メキシコの技術支援のプロジェクトを立ち上げ、当該国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の進展に寄与。また、過去25年間にわたり、医療経済や政策研究の分野で幅広く論文を発表してきました。バーバー博士は米国カリフォルニア大学バークレー校から経済評価の分野で博士号を取得しています。

バーバー博士は「世界は今、これまで直面したことのない新たな課題や、人口高齢化に対応していくことが求められています。WHO神戸センターはこれからも質の高い研究を通して、各国が新たな課題に対応できる保健制度を構築できるよう支えていきます。また、このように「新たな健康課題に革新的なイノベーションを創出する」という役割はWHO全体の中でも貴重な役割であり、地元兵庫県、神戸市から日本で得られた多くの教訓を世界に向け発信するというとても重要な役割を担っていると考えています」と語っています

WHO神戸センターは世界中が高齢化に直面する中でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現するために、制度的な、社会的な、技術的なイノベーションを創出していくための政策研究に取組むグローバル研究センターです。

うつ病:一緒に話そう 世界保健デー2017

世界保健デーは、WHO が設立された 1948 年 4 月 7 日を記念して設けられたものです。 「世界保健デー」には、毎年、 国際保健医療に関するテーマが選ばれ、啓発キャンペーンが展開されます。

2017年の世界保健デーのテーマは「うつ病」です。

うつ病は、どこの国でも、どんな人でも、何歳であっても、誰もが影響を受ける可能性がある病気です。うつ病は精神的苦痛を引き起こし、日常の簡単なこともうまくこなせなくなることがあります。ときに家族や友人との人間関係が壊れてしまう、仕事をして収入を得ることが難しくなる、ということや、最悪の場合、自殺につながるケースもあります。自殺は、15-29歳における2番目に多い死因です。しかし、うつ病は、予防すること、治療することができます。うつ病がどのようなものなのか、どのように予防や治療ができるのかについて理解を深めましょう。それは、うつ病に対する偏見を取り除き、より多くの人たちが、必要な助けを求められる環境をつくっていくことにつながります。

うつ病とは?

  • うつ病という病気では、悲しい気持ちがずっと続いたり、普段は楽しめることへの興味がなくなったりして、普段どおりの生活が送れない状態が、2週間以上続きます。
  • それに加えて、うつ病には、一般的に次のような症状が見られます。元気が出ない、食欲不振あるいは過食、不眠あるいは過眠、漠然とした不安、集中力と注意力の低下、決断ができなくなる、落ち着きがなくなる、自己評価が低くなり自信がなくなる、罪の意識を感じる、将来に対して希望がもてなくなる、自傷や自殺について考えてしまう。

スローガン

うつ病:一緒に話そう

キャンペーンの対象

うつ病は、誰もが影響を受ける可能性がある病気です。今回の啓発キャンペーンは、年齢や性別、社会的地位に関わらず、世界中のすべての人を対象にしたものです。中でも特に影響を受けやすい3つのグループ(青少年や若者、妊娠適齢期の女性(特に出産後)、60代以上)に着目して、WHOは今回、啓発資料を作成いたしました。

キャンペーン・メッセージ

  • うつ病は、どこの国でも、どんな人でも、何歳であっても、誰もが影響を受ける可能性がある病気です。
  • うつ状態になるリスクは、貧困や失業、大切な人の死や、恋愛・婚姻関係の破綻、身体の病気やアルコールや薬物の使用によって増加します。
  • うつ病は精神的苦痛を引き起こし、日常の簡単なこともうまくこなせなくなること、ときに家族や友人との人間関係が壊れてしまうことがあります。
  • 最悪の場合、自殺につながるケースもあります。
  • うつ病は予防、治療が可能です。心理療法や抗うつ剤を使ったりすることで治療できます。
  • うつ病に対する偏見を取り除くことで、より多くの人たちが、必要な助けを求められる環境をつくっていくことにつながります。
  • まずは信頼できる人に相談してみましょう。それが回復への第一歩となります。

関連リンク:

WHOアサモア・バー事務局次長が神戸を訪問

2017年4月6日、アサモア・バーWHO事務局次長が初めて神戸を公式訪問し、井戸敏三兵庫県知事、玉田敏郎神戸市副市長を表敬訪問しました。

まずはじめに、アサモア・バーWHO事務局次長は1996年から20年間にわたって続く地元の皆さんや神戸グループの温かいご支援に心からの感謝の意を表しました。

井戸知事への訪問では、井戸知事が2007年にジュネーブのWHO本部をご訪問された時の思い出に触れ、改めて、兵庫県が神戸センターを支え、育ててくれたことへの謝意を伝えました。そしてこれまで16年間、県民の健康と安全を守るため力強いリーダーシップを発揮する井戸知事を賞賛しました。



玉田副市長への訪問では、神戸医療産業都市の目覚しい発展と、世界レベルのバイオメディカル研究の進展について触れ、阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして果たす有意義な役割に敬意を表しました。

井戸知事、玉田副市長からは昨年のG7神戸保健大臣会合開催に向けた神戸センターの貢献に対して、また、5年間にわたるロス所長のリーダーシップへの謝意が述べられました。

アサモア・バーWHO事務局次長は、神戸センターが担う役割がWHO内においても、地元においても、独特の位置づけであるとし、「グローカル」な役割を担って、これまでの実績に基づいて、これからも兵庫・神戸から世界に向けて情報発信していくと強調しました。

そして、神戸センターが多国籍のチームで幅広い領域のイノベーション研究(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、イノベーション、高齢化、そして健康危機)を展開していく中においても、日本の経験が急速に高齢化する世界でも貴重であるとの認識が示されました。

アサモア・バー次長の関東訪問

3月31日、WKCが神奈川県との協力で実施した第1回UHCリーダーシッププログラムの閉会式で挨拶。このプログラムは高齢化を見据えた保健システム強化に目したものであり、カンボジア、マレーシア、ベトナム、シンガポール、日本の専門家や行政官が参加した。

4月3、4日、神奈川県を訪問。黒岩神奈川県知事及び県の幹部職員と面会し、また、ヘルスケア・ニューフロンティア構想の関連施設を訪問した。

4月7日、ダグラス・ベッチャー非感染症疾患予防部長とともに塩崎恭久厚生労働大臣を表敬訪問し、東京の屋内施設を含む公衆の場所での完全禁煙の必要性について議論した。二人は2000年の東京オリンピック及びパラリンピックの前に完全禁煙の実現を望むマーガレット・チャンWHO事務局長からの要望書を大臣に手渡した。

参考リンク

Tobacco Free Initiative (TFI) - 英語版

WHO神戸センター新研究「日本の知見を世界に向けて発信-高齢化とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する研究」 

WHO神戸センターはこのたび、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて高齢人口を対象とした保健と介護の政策と保健システム構築に関する研究を募集する運びとなりました。 今回の募集はWHO神戸センターの長期研究計画(2016-2026)に添って、下記の5つの領域の保健システムに関する革新的な研究を関西地域 の研究施設( 研究者)を対象に広く呼びかけるものです。課題の選考は厳格で専門的な査読審査を経て実施されます。

<5つの領域>「地域ベースの統合型ケアシステム」「非感染症対策」「保健医療人材育成」「技術イノベーション」「健康危機」

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を各国が2030年までに達成するためには、公衆衛生政策の立案や展開における科学的なエビデンスが必要とされています。超高齢社会であり、1961年に国民皆保険制度を確立した日本には多くの知見の蓄積があり、日本の保健システムには世界に向け発信できる教訓が多くあると考えています。

詳しくはこちら- 英語版

高齢社会に高校生は何ができるのか? 「ひょうご・こうべワールド・ミーツ for YOUTH」開催

WHO神戸センターとG7神戸保健大臣会合推進協議会は、G7神戸保健大臣会合開催記念「ひょうご・こうべワールド・ミーツ for YOUTH」を2月11日、神戸国際展示場で開催しました。(兵庫県教育委員会と大阪大学で第4回高校生「国際問題を考える日」と共同開催)。兵庫県下の高校生を中心に約600人が参加し、さまざまなプログラムを通して、グローバル・ヘルス(国際保健)や国際協力などについて研究発表し、意見をぶつけ合い、共に考えました。

 

基調講演では、まず、大阪大学大学院人間科学研究科 大谷 順子 教授が講演し、世界各地での国際機関勤務の経験や、阪神・淡路大震災から東日本大震災、四川大震災まで実施したフィールドワークなどを紹介し、「外国語習得は必須です。英語だけでなくアジア言語にも興味を持って。また、内向的にならず、見て、聞いて世界で羽ばたいて」と高校生にエールを送りました。

次に講演に立ったWHO神戸センターの茅野 龍馬 テクニカル・オフィサーはWHOの役割と感染症との闘いの歴史を紹介し、21世紀の保健課題として、治療法のない感染症や世界的な高齢化の進行、生活習慣病の蔓延などをあげ、感染症と非感染症のダブルバーデンについて強調しました。高校生へのメッセージとして「いまの時間を大切に可能性を広げてほしい」と語りました。

続いてパネルディスカッション「高齢化社会を踏まえたこれからの日本」(コーディネーター:野崎 慎仁郎 WHO神戸センター 上級顧問官)では、兵庫県の高校生4 名がそれぞれの研究を発表し、兵庫県立尼崎稲園高等学校1年の大島海織さんは、「65歳以上=高齢者という定義は実態にはあっていない。定義の引き上げが必要」と論じ、兵庫県立洲本高等学校1年の神田啓祐さんは「淡路島の平野部に交通網を整備したコンパクトシティを作ることで、日常生活に必要な施設を集中させ、高齢者のコミュニケーションや雇用機会を創出できるのでは」と提案しました。

 

続いて兵庫県立龍野高等学校2年田村真惟さんは「日本は高齢者が社会参画するチャンスをもっと増やして、一人ひとりの高齢者が生きがいを持って健康に長生きする手本を世界に示すべきだ」と訴え、最後に神戸市立葺合高等学校2年小林華さんは「高齢者は経済的観点からも社会的観点からも大きなメリットをもたらす。優れた能力は雇用につながり、働く親の子どもの世話や、地域の安全、伝統の継承など、多くの役割を担う」と強調しました。

会場からのQ&Aでは多くの質問が相次ぎ、「高齢者に対する偏見にどう向き合うのか」「具体的にどのような働きかたがあるのか」「高齢者の雇用は若者の雇用を奪うのでは」「高校生ができること」など、白熱した議論が展開されました。

 

午後からは国際的な団体・企業・大学等による活動紹介ブース(30団体)やミニ講演会(13団体)、高校生によるポスターセッション(84演題)の発表を通じて、活発に意見が交わされました。









 

 

最後に講評として、大阪大学全学教育推進機構の柿澤寿信特任講師は「教科書には載っていない、答えがひとつではない難しい問題に取組むなかで、悩み、試行錯誤する過程が財産になる」と述べ、閉会の挨拶でアレックス・ロスWHO神戸センター所長は「高齢化や新たな保健課題など、不透明な世の中ではあるが、一方、グローバル時代のいま、意外と世界は小さい。これから自分がどのように世界に貢献していくことができるのか、じっくり考えてもらいたい」と締めくくりました。

参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。

 

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