2012-05-31

世界禁煙デー2012記念フォーラム: 「たばこ産業の干渉を阻止しよう」

WHO神戸センターは、2012年5月31日、世界禁煙デーを記念して、公開フォーラム「たばこ産業の干渉を阻止しよう」を神戸にて開催しました。

学界、地方自治体、市民団体等からの60名を超える参加者とともに、日本におけるたばこ政策にみられるたばこ産業の干渉について、見識や意見の交換を行いました。

二時間にわたるフォーラムでは、神奈川県に続き今年兵庫県でも受動喫煙防止条例が採択されるなど、強化されつつあるたばこ規制の取り組みを弱体化させようとするたばこ産業の戦術が浮き彫りにされました。

2004年のたばこ規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組み条約)採択以降、日本は、たばこ市場におけるたばこ産業の業務に関連する法律と、人々の健康を守るためのたばこ規制計画との間で苦労してきました。国立がん研究センター がん対策情報センター たばこ政策研究部長 望月友美子博士は、たばこ規制枠組み条約およびそのガイドラインに基づいた効果的なたばこ規制政策の施策実施における日本の取り組みが不十分であると指摘、その結果として人々の健康が脅かされていることから、命を守るという観点からたばこ規制政策に対する国民意識を高める必要があると論じました。

WHO神戸センター・コンサルタントの柏原美那氏は、日本たばこ産業が意図的に繰り広げる喫煙マナー向上の推進を取り上げ、そのたばこ規制政策への影響について発表しました。たばこ産業の喫煙マナー戦略が、たばこがもたらす健康への影響から人々の注意をそらす目的で使用され、また、たばこ規制政策弱化をねらい地方自治体とのパートナーシップを構築しようとしている現実を紹介しました。

神奈川県は、2009年に屋内の公共の場所での喫煙を制御するための条例を施行した日本初の自治体です。しかし、条例策定の際には、やはりたばこ産業の干渉に苦しめられました。元神奈川県議会議員の関口正俊氏は、実際に展開されたたばこ産業による世論操作について発表。これは、たばこ会社がその従業員に強いて、神奈川県が条例導入に際して実施した世論調査に介入、屋内の公共の場所でのたばこ規制に反対する票を投じさせたというものでした。

プレゼンテーションに続いて、兵庫県医師会副会長 足立光平博士の進行で活発なディスカッションが行われました。ここでは、おもに、神奈川県・兵庫県の両県が体験し、また、日本に広く見られる傾向でもある、たばこ産業のマーケティングとたばこ規制政策実施を妨害する戦略について討議されました。

フォーラムは、WHO神戸センター所長のアレックス・ロスの閉会挨拶をもって終了しました。人々の健康を守るためには、たばこ規制枠組み条約の完全な順守が重要であり、これからも、WHOは、たばこ規制施策強化を通じて健康増進に尽力することを表明して締めくくられました。

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