2012-04-07

世界保健デー2012: 高齢化と健康

WHO神戸センターでは、世界の関係機関と緊密に連携し、WHOの「Age-Friendly Cities(高齢者にやさしい都市)」の指標を開発するなど、高齢者にやさしい環境についての研究を行なっています。所在が日本にあることを利用して、日本固有の知見や経験を活用しながら、国内の研究者と協同して、健やかな人生をより長く過ごせるような介入策や政策を特定するための研究を行なっています。


WHO神戸センターは、今年の世界保健デーを記念して、日本における高齢化と健康に関する優先課題について考えるためのフォーラムを地元神戸で開催します。

世界保健デー2012記念フォーラム(4月7日)
『健康な高齢社会を目指して~世界最長寿国日本の軌跡と今後の展望』

テーマ:
  • 高齢化と健康に関する国内外の動向
  • 今後のビジョンとその実現に向けて必要な取り組み
スピーカー:

(登壇順、敬称略)
アレックス・ロス(WHO神戸センター)
武井貞治(厚生労働省国際課国際協力室)
狩野恵美(WHO神戸センター)
辻哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構)
鈴木隆雄(国立長寿医療研究センター)
近藤克則(日本福祉大学健康社会研究センター)
坂東眞理子(昭和女子大学)

モデレーター:

(敬称略)
家森幸男(武庫川女子大学国際健康開発研究所)

世界保健デーは、世界保健機関(WHO)が設立された1948年4月7日を記念して制定されたものです。毎年、各国の指導者から一般の人々にいたるまで、あらゆる人に参加を呼びかけ、世界的に影響を及ぼしている保健課題の1つに焦点をあてたグローバルなキャンペーンが展開されます。そのテーマは年毎に異なります。

"Good health adds life to years"

2012年の世界保健デーのテーマはAgeing and Health(高齢化と健康)であり、"Good health adds life to years" (健康であってこその人生)をスローガンとしています。今年のテーマは、65歳以上の老年人口の割合が世界最大である日本にとって、特に係わりの深いテーマです。生涯、良好な健康状態を保つことで、いかに暮らしが豊かで実り多いものになるか、そして家族やコミュニティにとって必要な人材であり続けられるかといったことに焦点をあてます。

世界の高齢化に関する主要統計

  • 現在の世界の60歳以上の人口は、1980年と比べて倍増しています。
  • 80歳以上の人口は、2050年までの間に、現在の4倍近い3億9500万人に達すると考えられます。
  • 今後5年以内に、65歳以上の人口が、5歳未満の子どもの人口を上回ると考えられます。
  • 2050年までには、65歳以上の人口が、14歳未満の子どもの人口を上回ると考えられます。
  • 世界の全高齢者の過半数が低所得国または中所得国に暮らしています。この割合は2050年までに80%に達すると考えられます。

人口構成の変化に伴う新たな課題

  • 低所得国においても、高齢者の多くは非感染性疾患により亡くなっています。
  • 高齢者は慢性疾患のリスクが高まるため、社会の高齢化が進むにつれて、障がいをもつ人の数が増加しています。
  • 世界中の高齢者の多くが虐待の危険にさらされています。
  • 長期介護のニーズが高まっています。
  • 世界的にみて、寿命が延びるにつれて、アルツハイマー病などの認知症患者の数が急激に増加します。
  • 災害などの非常時には、高齢者は特に危険にさらされやすくなります。

固定観念の打破

多くの伝統的社会では、高齢者は「長老」として尊敬される存在です。しかし、高齢の男女があまり尊重されていない社会もあります。高齢者の疎外は、公式な制度などによって生じるものから、私的偏見などに起因するものまで様々です。これらを「年齢差別(Ageism)」と呼びます。すなわち、年齢によって、個人やグループに対して固定観念を抱いたり差別したりするということです。これらの固定観念により、高齢者が、社会的・政治的・経済的・文化的・精神的な活動、市民活動などに全面的に関わることが阻まれるという状況が生じています。

主要なキャンペーン・メッセージ

  • WHOは、生涯にわたって健康なライフスタイルを維持することにより、より多くの命を救い、健康を守り、特に高齢期における障がいや苦痛を軽減することを奨励します。
  • 高齢者にやさしい環境づくり、病気の早期発見と予防および治療を行うことで、高齢者の福祉は改善できます。
  • 今すぐに行動を起こさなければ、人口の高齢化は、社会経済発展あるいは人間開発目標の達成を阻害することになります。
  • 高齢者は社会にとって価値のある人的資源です。高齢者が、自分は尊重されていると実感できることが必要です。
  • 生涯にわたり健康であれば、年を重ねることによってもたらされる恩恵を最大限に享受することができます。
  • 高齢者を大切にし、高齢者が積極的に日常生活を送れるような体制を整えた社会は、世の中の変化に上手く適応できるでしょう。

行動宣言

高齢期において良好な健康状態を保つために、次の行動が必要となります。

  • 生涯にわたって健康を促進する。
  • 高齢者の健康と社会参加を促進するような、高齢者にやさしい環境をつくる。
  • プライマリー・ヘルスケア、長期介護や緩和ケアへのアクセスを確保する。
  • 高齢者を尊重し、家庭や地域での生活を支援する。

マルチメディア

神戸で聞いてみました:『健康に歳をとるために、あなたはどんな事に気をつけていますか?』

WHO記者発表