持続可能な資金調達

西太平洋地域における経済および保健医療財政に対する人口高齢化の影響について

背景

人口高齢化は、WHO西太平洋地域における4つの優先事項のひとつです。人口高齢化は保健医療分野を超えて大きく影響をもたらすことから、保健医療財政や経済における人口高齢化のマクロ的な関わりを理解することが重要です。

この研究は、人口高齢化は保健医療支出増加の主な要因ではなく、今後もそうならないという先行研究の報告に基づいています。人口の高齢化が進んでいるものの高齢者がまだ多くない国々では、高齢者向けのサービスの対象範囲やサービスへのアクセスを拡充するのに必要な費用がまだ調達可能であり、人口構成が比較的若い今こそが保健医療制度への投資開始の好機であるという仮説について、国別の研究やデータを用いて検証を行います。

 

目標

  1. 6か国(ベトナム、モンゴル、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド)において、年齢と人口の構成が保健医療支出の傾向に与える影響について研究

  2. (同6か国において)人口高齢化による経済的な効果に、健康や障害などの要因がどのように影響するかについて研究

 

研究手法

  1. 6か国それぞれについて、国際連合が発表している人口データを使用して、将来の保健医療費増大に対し見込まれる高齢化の影響を数値化します。利用可能な場合は各国の実際のデータを用い、人口の年齢構造に応じて予想される保健医療費について各国ごとに考察します。

  2. 6か国について、それぞれ回帰分析を用いて、高齢者の健康および障害と経済的産出量、労働力参加やその他の指標との関連を推計します。この分析には国際労働機関(ILO)、保健指標・保健評価研究所(IHME)、世界銀行が公開しているデータを用います。統計モデルの分析結果をもとに、各国のデータやシナリオに適用し、国ごとに簡潔な報告書を作成します。

 

期待される成果

人口高齢化は保健医療支出の傾向の大きな要因ではないことを示す研究知見が期待されます。

人口高齢化に対応する持続可能な保健医療財政

 

背景

人口高齢化と高齢者にかかる保健医療費の増加により、政策立案者は高齢化がもたらす健康医療費の際限ない増加を懸念しています。人口高齢化は、保健医療財源を確保する国の能力に影響を及ぼし、いかに資金を調達するかが鍵となっています。WHO神戸センターは、欧州保健制度政策研究機構と提携し、本機構が発行する高齢化の経済学に関する論文集の一部として、年齢層の変化が健康医療費の動向と中長期的な健康医療費の調達能力に及ぼす影響について研究を行います。

研究手法

欧州連合(EU)と日本、インドネシアのデータを使用して、所得税、物品サービス税、固定資産税、そして社会負担から保健医療財源を確保する能力に対して、高齢化が及ぼす影響についてのシミュレーションを行います。次に、EUのデータを使用して、年齢と人口予測による保健医療費用パターンの調査を行います。そして、高齢者に対するサービスの量、価格、強度と対象範囲の上昇をシミュレートする一連の仮定シナリオを構築します。

結果

現時点で比較的若年層が多く、急速に人口の年齢構成が変化しつつある国では、中長期的に見て全ての財源が大幅に増大する可能性があります。課題は、この可能性を活用するために徴税の仕組みを改善し、保健医療の優先順位を上げることです。年齢の高い層が大きな割合を占める国では、人口高齢化の結果として、労働市場と主に関連する社会負担からの収入が大幅に減少するものと予想されます。そしてまた、人口高齢化に起因する健康医療費の増大による追加的負担は、2060年までの一人当たりの年間増大の1%未満であることも分かりました。高齢者に対するサービスの量、価格、強度と対象範囲が上昇するとの最も極端な仮定シナリオにおいてさえ、EU諸国の健康医療費の増大は、人口高齢化単独により予想される増大を0.85ポイント(%)上回るに過ぎず、この値は日本では1.0ポイント(%)、インドネシアでは1.67ポイント(%)です。

結論

本研究により、保健医療財源の確保を労働市場と関連する社会負担と保険料によるものから移行することの重要性と、その結果として、保健医療を受ける資格と社会負担の支払いとを切り離すことの重要性が明らかになりました。人口高齢化そのものは、保健医療費用を増大させる主な要因とはならないと考えられます。どのようにサービスに財源が確保され提供されるのか、又はサービスと医薬品に対して支払われる価格、その対象範囲はどのように決定されるのかといった、政策の選定が主要な役割を果たします。

高齢者の継続的なケアにおける価格設定

 

背景

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現は、高齢者の保健医療の権利の保障をも意味しています。経済的な意味でのアクセスの公平性は、保健医療を受ける権利を高齢者が確実に手にするために必要な要素です。前回実施した研究では、特に継続的で長期にわたる保健医療に関して、ほとんどの国で高齢者の公的負担へのアクセスが限られていることが明らかになりました。この場合、公的医療保険の財源と給付対象者への給付金を決定する評価法がとられています。一般的には、各高齢者の状況、身体機能、認知機能の総合的な状態に基づいて負担割合を調節することにより行われています。

研究手法

様々な保健医療制度、調達と価格設定と、幅広い政策目標を達成するための資金調達制度改善に向けた取り組みに関する、10カ国の事例研究が実施されました。各事例研究では、高齢者に対する施設ケア、在宅ケア、住居型ケア、介助について、その組織や対象範囲、財源、給付制度を明らかにしています。高齢者の継続的なケア関連のサービス提供者に対する価格設定や価格統制の対象も特定するものであり、これには、持続可能な財源確保、サービス提供者の利益の保証や、高齢者が利用出来る価格設定などの目的が含まれます。概要報告書では、高齢者のケアにおける価格設定や価格統制の「最適事例」をまとめ、各国にアクションを促すための政策に関する提言を行っています。

保健医療における価格設定とユニバーサル・ヘルス・カバレッジのための示唆

背景

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実施にあたって、誰を公益の対象とするのか、どのサービスを対象とするのか、いくら支出するべきかを政策立案者は決定しなければなりません。UHC実現に向けて財政支出が増加する中、財政支出に見合う価値はどれくらいか、人々のニーズに応えるためには資金提供やサービス編成をどのように決定すれば良いのかという点に、各国からの注目が集まっています。価格政策は、給付、医療提供者への支払い、保健医療の民間部門の資源の利用に関してどのように決定するかということと密接に関わっています。しかし、価格設定と価格交渉のプロセスについてはほとんど明らかにされていません。

方法                                                                                                                                                              

さまざまな保健医療制度、サービス導入と価格設定の実践、幅広い政策目標達成のための資金調達制度改善の公約に関する9カ国の事例研究が実施されました。どのような状況にも対応できるような唯一のモデルというものは存在しないことを認識した上で、各国、特に低・中所得国におけるアクセスや導入しやすさを向上させ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた国際公約の実現を支援するため、本研究は、最適事例を創出し、将来的な研究領域を特定することを目的としました。

結果                                                                                                                                                                 

価格計算の方法は、支出、量、アウトカムに関するデータ収集システムの能力に左右されます。価格統制、価格差別の回避、質向上に向けたインセンティブの付与という点で、片務的な価格方針の方が概して上手く機能しています。例えば、予約のない外来受診の繰り返し、入院、警鐘事象に関する費用の削減など、量の制御や質の改善を目的として価格設定は用いられています。地方や遠隔地の施設および低所得の患者や高額療養を要する患者を多数治療している施設のために価格を調整するなど、公衆衛生の幅広い目標を達成するためにも価格調整が行われています。

結論                                                                                                                                                                

全体的な価格設定の枠組みは、透明性の高い方法である必要があります。このプロセスを管理監督する第三者機関を設立している国も複数あります。データ・インフラストラクチャへの投資が重要です。政策に向けて情報提供するには系統的な検証と評価が必要とされます。他国での教訓については、規制環境や制度面での能力など、各国独自の状況での実現可能性に基づいて評価すべきであると考えられます。