中国、インドネシア、ベトナムの災害弱者に対する気候関連災害の影響:保健医療の対策と評価指標に関するスコーピング・レビュー

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実施期間:

2019年12月~2021年1月

連携機関:

代表研究機関: グリフィス大学環境・公衆衛生センター(オーストラリア)
参加研究機関:広東省疾病予防管理センター ・公衆衛生院(中国)、精華大学医院管理研究院(中国)、シアクアラ大学(インドネシア)、ハノイ公衆衛生大学(ベトナム)、 ダナン医療技術・薬科大学(ベトナム)
主導研究者: Cordia Chu(グリフィス大学環境・公衆衛生センター)

研究対象地域:

中国、インドネシア、ベトナム

総予算:
US$ 59,500

 

背景

気候変動がもたらす災害は世界中で増加しており、その結果、甚大な公衆衛生の負担が生じています。こうした健康リスクは、効果的な適応戦略と対策の開発、および、その継続的な改善により軽減することが可能です。保健医療に関する注目すべき対策が世界的に増えてはいるものの、それらに関する科学的文献は少なく、各国が最適な対策を立案、実施できるほど知見が統合されていません。アジアにおいて、中国、インドネシア、ベトナムなどの国々は特に気候変動の影響を受けやすいことから、対策に有益な情報や行動が必要とされています。

目的

本プロジェクトは、中国、インドネシア、ベトナムにおける、気候関連災害の健康への影響への適応戦略、特に災害弱者対策に関する既存の研究をマッピングすることを目的としています。

研究手法

スコーピングレビューの実施と報告には、システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目(PRISMA声明)、および、スコーピング・レビューのための拡張版(PRISMA-ScR)チェックリストを適用しました。本レビューは、Medline、Scopus、Embase、Google Scholarで検索できる、1997年(京都議定書発行年)以降に発表された英語、中国語、インドネシア語、ベトナム語の査読付き研究論文および灰色文献を対象としました。研究チームは、本レビューのための主要な研究や政策文書を特定するために、文脈依存の検索用語とローカルデータソースを用いてマニュアル検索を行いました。 検出された政策文書の分析には、WHO災害・健康危機管理枠組みに基づく主題分析法を用いました​。

研究結果

検索の結果10,139の文献がレビューの対象となり、そのうち298の文献に全文レビューを行いました。その結果、ほとんどの文献が、下痢、デング熱、手足口病などの感染症や、個別の災害(例:洪水、熱波、台風)に起因するメンタルヘルス課題に焦点を当てていることがわかりました。また、3か国すべてにおいて、災害弱者を特定するために脆弱性評価を行っている研究が少ない(n=26)ことがわかりました。気候関連災害に関連した脆弱性を特定するための定義、アプローチ、方法は3か国で異なり、比較は困難でした。具体的な対策に関するエビデンスは、熱波に特有の適応戦略に関する研究が見られた中国を除き、他の国からはほとんど結果が得られませんでした。  

3か国それぞれの主な文献レビューの結果:

中国:中国の気候政策の多くは、排出量の削減に焦点を当てていました。検索で得られた政策文書は、単一の災害対策(洪水など)と特定の感染症や外傷への対応に重点を置いていました。その最大の理由は、国内で運用されている確立された疾患報告システムにあります。

インドネシア:気候関連災害に対して脆弱なグループとして、5歳未満の子供、障害のある人、社会経済的地位の低い人、女性が政策文書上で示唆されていました。気候関連災害と健康に関する適応策のほとんどは、依然として国レベルで行われており、地域レベルでは実施されていません。

ベトナム:気候変動の健康リスク、災害弱者、適応策に関して、本レビューにより見つかったベトナムでの研究は限定的でした。入手可能な出版物のほとんどは、農業、建設、環境、天然資源、および農村開発における単一ないしはいくつかのタイプの災害に対する適応戦略を説明していますが、保健医療についての言及はありませんでした。

示唆

本レビューの結果から、中国、インドネシア、ベトナムの3か国すべてが、健康に影響に及ぼす気候関連災害を経験しており、最も危険にさらされている人々の脆弱性を軽減するための適応戦略が緊急に必要とされていることが確認されました。政府および国際機関からの資金は、適応戦略の開発を目的とした研究と人材育成や設備投資に優先的に使われなければなりません。気候リスクは、保健セクターの新しい規制、政策、メカニズムにおいて適切に考慮されるべきです。政策と適応策は、多くの場合、汎用的アプローチを用いて州レベルで立案されますが、効果的な実践のためには、地方政府や自治体など、適切なレベルで、特定のタイプの災害に対する亜集団および脆弱な集団に合わせた実行可能な政策と慣行を開発することが必要とされています。

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