Q&A(COVID-19):職場における安全衛生

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19):職場における安全衛生

2020年6月26日 | Q&A

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COVID-19に対する公衆衛生的・社会的対策の調整に関する検討事項

職場でCOVID-19にうつる可能性はありますか?

COVID-19には、主に呼吸器からの飛沫または汚染された物や表面を触ることによって感染します。職場にいる間、仕事での移動中、市中感染が発生している地域への出張中、また職場への通勤の際に、ウイルスにさらされる可能性があります。

職場でCOVID-19にかかるリスクはどの程度ありますか?

職場でCOVID-19にさらされるリスクは、人との距離が1メートル未満になる可能性や、COVID-19の感染疑いがある人と頻繁に接触する可能性、また汚染された物や表面に触れるかどうかに左右されます。

職場におけるCOVID-19への曝露に対するリスクアセスメントおよび予防策の計画はどのようにすれば良いですか?

管理者は、労働安全衛生のアドバイザーによる支援を受けてリスクアセスメントを速やかに行い、予防策を講じるために曝露のリスクを正確に判断する必要があります。職務別に、また職場環境ごとに実施しなければなりません。

低い曝露リスク

他の人と頻繁に密接することがない職務や業務。このカテゴリーの労働者は、一般の人々や他の同僚との業務上の接触が最小限となります。具体例として、リモートワーク(在宅勤務)を行う人、他者と頻繁に密接することがない事務職員、リモートでの応対業務従事者などが挙げられます。

中程度の曝露リスク

他の人と頻繁に密接する職務や業務。このリスクレベルに該当すると考えられるのは、人が密集した職場環境(スーパーマーケット、バスターミナル、公共交通機関、その他少なくとも1メートルの物理的距離を確保することが難しい業務など)で、人と頻繁に近い距離で接触する労働者、または、同僚と頻繁に密接する必要がある業務です。具体例としては、小売店、宅配業者、宿泊施設、建設業者、警察や保安、公共交通機関、水道・衛生関連の現場で働く人々が挙げられます。

高い曝露リスク

COVID-19感染の可能性が高い人と密接する職業や業務、および、ウイルスで汚染されている可能性がある物や表面に触れる職業や業務。具体的には、COVID-19感染もしくは疑いがある人の搬送時にしきりで隔てられていない状態での運転、COVID-19感染者への家事や在宅ケアの提供、死亡時にCOVID-19感染もしくは疑いのあった遺体との接触などが挙げられます。このカテゴリーに該当する職業には、家事労働者、ソーシャルワーカー、個人向け旅客運送・宅配業者、COVID-19感染者の家で作業する必要のある住宅関連の修理業者(配管工、電気工)などがあります。

職場のリスクアセスメントは誰が実施すべきですか?

雇用者や管理者が、労働者と相談の上、業務関連のCOVID-19曝露リスクのアセスメントを実施し、定期的に更新する必要があります。その際、産業保健サービスの支援を受けて行うことが望ましいです。

職場のリスクアセスメント実施時に検討すべき重要事項は何ですか?

各リスクアセスメントの実施時には、環境、業務、脅威、利用可能な個人防護具などの資源、予防策の実現可能性を検討します。これに加え、雇用者が用意している寮など、労働者が共同生活を営む施設も対象とすべきです。保安や警察などの生活に必要な公的サービス、食料品小売店、宿泊施設、公共交通機関、配送業、水道・衛生関連、その他の現場で働く人々は、労働安全衛生上、危険にさらされるリスクが高くなっています。年齢や基礎疾患によってCOVID-19の重症化リスクが高い可能性のある労働者のリスクアセスメントは、個別に検討する必要があります。

職場の開放、閉鎖、再開、業務の一時停止や規模縮小について、雇用者はどのように決定すべきですか?

職場の閉鎖や再開、業務の一時停止や規模縮小の決定は、リスクアセスメント、予防策の実行能力、コンプライアンスの程度、各国当局からの勧告を考慮して行う必要があります。

どのような職場でも取るべき重要なCOVID-19予防策は何ですか?

すべての職場と、そこにいるすべての人々が取るべきCOVID-19の感染予防策としては、こまめな手洗いまたはアルコール系消毒剤、咳エチケットなどの呼吸器衛生、国の勧告に従った1メートル以上の物理的距離の確保、距離の確保が難しい場合のマスク着用、環境の定期的な清掃と消毒、不要不急な移動の制限が挙げられます。職員や管理者がCOVID-19に対する認識を深めるためには、明確な方針とメッセージ、研修、教育が不可欠です。またCOVID-19感染者やその接触者の管理も欠かせません。体調が優れない、または症状が現れた労働者に対しては、自宅待機と自主隔離を行い、医療機関またはCOVID-19担当の地域の相談窓口に連絡し、検査や診察について相談するように求めましょう。

中等度のリスクがある職場や業務で取るべき追加の対策は何ですか?

中等度のリスクがある業務を行う職場では、共用の部屋、表面、床、洗面所、更衣室など、たびたび触れる物や場所の日常的な清掃および消毒を1日に少なくとも2回行う必要があります。物理的距離を確実に1メートル以上確保できない場合は、休業を検討しましょう。休業できない場合は、換気を増やし、定期的な手指衛生の実施を促すとともに、水しぶきが発生する清掃に関しては適切なマスク、ゴーグル、手袋、作業服の使用方法に関する研修を行った上で、適切に着用するように職員に求めましょう。職員が持ち帰ることのないように、作業服は職場で着替え、洗濯できるようにします。

高リスクの職場や業務で、追加して取るべき対策は何ですか?

高リスクの職場では、休業の可能性を判断する、もしくは定期的な手指衛生を促すなどの措置を講じましょう。COVID-19感染もしくは疑いのある人がいる自宅で業務を行わなければいけない労働者には、医療用マスク、使い捨てガウン、手袋、目の防護具を提供します。感染の予防と制御に関する対策および個人防護具の使用について労働者に研修を行いましょう。基礎疾患がある、妊娠している、もしくは60歳以上の労働者には、高リスクの業務を割り当てないようにします。

職場で物理的距離を確保する際に考慮すべきことは何ですか?

WHOは、職場を含むあらゆる状況において、人と人との距離を少なくとも1メートルとって物理的距離を確保することを推奨しています。密集した職場では感染が起こり得るため、労働者1人につき10平方メートル以上の十分なスペースを提供することを推奨しています。国によってはさらに広く物理的距離をとるように勧告している場合もあり、これに従う必要があります。

国や地域の勧告を遵守できるように、業務上実現可能であり労働者と雇用者の双方が許容できる方法で、物理的距離の確保に関するガイドラインを実行しましょう。職場の外や、地域、寮においても、物理的距離の確保を遵守するように促しましょう。

雇用者と労働者との間でのリスクアセスメントや協議は、職場において物理的距離の確保に関する対策をたて、実行する際に非常に重要となります。作業場の改修や、共用スペース・車両の利用に関する変更、時差出勤、スプリットチーム(班交代)制、職場での物理的な交流を減らすその他の対策などが必要な場合もあります。

職場で物理的距離を確保することが特定の業務において実行できない場合は、その業務を一時的に停止できるかどうか検討しましょう。停止できない場合には、仕切りやついたての使用、マスク、手指衛生の促進、換気、消毒など、追加の予防策を講じます。

物理的距離の確保だけではCOVID-19の感染を防ぐことはできないため、手指衛生や咳エチケット、頻繁にに触れる物や表面の清掃と消毒、換気、マスクの着用、体調不良時は外出しない方針など、公衆衛生の他の対策と組み合わせることが重要です。

雇用者の権利、義務、責任はどのようなことですか?

雇用者と労働者、その勤め先の組織は、COVID-19を予防・制御するために保健当局と協力しなければなりません。職場関連の予防策には、管理者と労働者およびその代表者の間での協力が不可欠です。労働安全衛生において労働者と雇用者がもつ権利と責任に関する国際労働基準を十分に尊重する必要があります。

雇用者は、労働者およびその代表者と協力しながら、職場でCOVID-19を予防・抑制するための技術面・管理面での制限に関する対策を計画・実行し、リスクアセスメントに従って個人防護具や防護服を提供する必要があります。このような対策は、労働者の側に支出が伴うものであってはなりません。

60歳以上または基礎疾患があるなど、重症化リスクの高い労働者を守るためには、産業保健サービスの勧告に基づき、特別な対策が必要です。非公式経済やデジタル労働プラットフォーム*の労働者、中小企業の労働者、家庭内労働者や移民労働者が取り残されるようなことがあってはならず、仕事や生活においてそうした人々の健康と安全を守る必要があります。* インターネット経由で仕事の受発注を行う、新しい働き方の形態。

いかなる理由があっても、COVID-19に関する情報へのアクセスや予防、労働衛生サービス、精神衛生・心理社会的な支援などにおいて、職場内で社会的な偏見や差別があってはなりません。

業務上の曝露によりCOVID-19に感染した場合には、労災とみなされる可能性があります。そのような決定が下された場合は、国際労働基準および労災補償に関わる国の方針に従い、雇用者は報告して補償を行う必要があります。

労働者の権利、義務、責任はどのようなことですか?

労働者は、労働安全衛生および感染の予防と制御のために職場で定められた対策に従い、雇用者が提供する研修に参加する責任があります。労働者は、生命と健康に差し迫るような重大な危機をもたらす状況があった場合、監督者に報告しなければなりません。それが生命と健康に差し迫るような重大な危機をもたらす状況であると正当な理由をもとに考えられる時は、労働者はいかなる場合でもそのような状況から逃れる権利をもっており、権利を行使したことにより不当な結果がもたらされないように保護される必要があります。

COVID-19の予防・抑制のために、職場ではどのように計画をたてれば良いですか?

職場では、リスクアセスメントの結果と疫学的状況に応じて、事業計画の一環としてCOVID-19を予防・抑制するための行動計画を策定する必要があります。

この行動計画および予防策は、定期的にモニタリングを行い更新しなければなりません。労働者およびその代表者は意見を反映してもらい、COVID-19に対する職場での行動計画の策定やモニタリング、更新のプロセスに参加する必要があります。予防策の有効性をモニタリングし、予防策を労働者や来訪者、顧客、取引先、下請け業者が順守しているかどうかを把握しておくことが非常に重要です。職場でCOVID-19の感染者か疑いのある人が出た場合は、この計画を見直して更新する必要があります。

公的な対策が解除されたら直ちに業務を再開できますか?

業務再開の根拠については、複数の職業や業務のリスクアセスメントに従って予防策を講じた上で、前もって慎重に計画しておかなければなりません。休業期間中に、機械や施設を十分に保守点検できていないことによるリスクなど、安全衛生に関して考えられるリスクはすべて評価する必要があります。業務の再開を急ぎ段階を追って慎重に再開しなかった場合、命が危険にさらされ、社会的・経済的な活動回復への動きを台無しにするおそれがあります。

WHOは職場の入り口での検温を推奨していますか?

体温によるスクリーニングでは、COVID-19に感染している人すべてを検出することはできません。ある人がすでに感染力を持っていても、ウイルスの潜伏期間中または他の症状が出現する直前を含め、感染や発症の初期には発熱していない場合もあるためです。熱があっても、仕事に行けなかった場合に起こりうる不利益を考えて、解熱剤を服用して熱を下げる人もいるかもしれません。検温に頼るだけでは、職場でのCOVID-19の拡大を止めることはできないでしょう。

職場での検温は、職場でCOVID-19を予防・制御する一連の対策の1つであると捉えられます。労働者には、できれば質問票を用いて自身の健康をモニタリングし、自宅で定期的に検温するように促す必要があります。職場では「体調不良時は外出しない」方針や傷病休暇に関する柔軟な方針を採用し、COVID-19と同じような症状がある労働者には出勤させないようにしましょう。

WHOは労働者が職場(事務所など)でマスクを着用することを推奨しますか?もし推奨するなら、どのようなタイプのマスクが良いでしょうか?

マスクの着用については、リスクアセスメントの結果によります。中等度または高リスクの職業や業務、60歳以上の人、基礎疾患のある人には、医療用マスクおよびその他の個人防護具を提供する必要があります。現在、布マスクや口と鼻を覆うフェイスカバーは、物理的距離を確保できない場合に、若い人および症状のない人に推奨されています。これにより、(COVID-19に感染している可能性があるが症状はない)人から他者へのウイルス拡散を防ぐことができます。低リスクの職場でのマスクまたは口と鼻を覆うフェイスカバーの着用に関する方針は、国または地域のガイドラインに従う必要があります。マスクも正しく使用されない場合には、ある程度のリスクがあります。

職場の換気や空調の使用に関する指示はありますか?

どのような職場においても、新鮮できれいな空気が必要です。中等度または高リスクの職業および業務では、自然換気または機械換気(空気の再循環はない方が良い)によって換気速度を上げることをWHOは推奨しています。空気を再循環させる場合は、定期的にフィルターを清掃する必要があります。

COVID-19の流行下では、労働者に対してどのような精神衛生・心理社会的支援が必要ですか?

COVID-19は、病気や死、社会的な疎外感、隔離、生活の糧を失うことに対する恐れなど、あらゆる懸念や心配と関連しています。不安や抑うつなどの症状は、COVID-19に関連してよく見られる反応です。精神衛生および心理社会的支援は、すべての労働者が受けられるようにしなければなりません。包括的にリスクアセスメントを行うことは、業務における精神衛生上のリスクの特定と軽減に役立つでしょう。

「職場における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への公衆衛生的・社会的対策」に関するガイドライン全文は、こちらからご覧いただけます。