Q&A(COVID-19):気候変動

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19):気候変動

2020年4月22日|Q&A

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COVID-19と気候変動との関連性についてのよくある質問と回答です。

WHOはCOVID-19のアウトブレイクを継続的に監視し、対応しています。このQ&Aは、COVID-19についての詳しい情報や、世界中の人々への影響、この病気に対する介入の有効性などが明らかになった場合に更新されます。

COVID-19の最新情報はどこで入手できますか?

COVID-19に関する最新情報は、WHOのコロナウイルスに関するページから定期的にご確認ください。

COVID-19が発生する場所は、天候や気候によって決まるのでしょうか?

いいえ。天候(気象条件の短期的な変化)と気候(長期的な平均値)のいずれも、COVID-19の伝播に強い影響を与えるという決定的なエビデンスは今のところありません。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスは、寒くて乾燥した気候から高温多湿の気候まで、世界のあらゆる地域で蔓延しています。

SARS-CoV-2の主な感染経路は、人と人との濃厚接触による直接的な感染か、感染者が咳やくしゃみをした際に発生する呼吸器の飛沫による感染であると考えられています。ウイルスに曝露された表面に触れることでも感染する可能性がありますが、これは主な感染経路ではないと考えられています。温度や湿度は、ウイルスがヒトの体外で生き残る期間に影響を与えるかもしれませんが、その影響は人と人との接触による影響の度合いに比べて小さいと考えられています。

したがって感染の連鎖を断ち切るためには、人と物理的に距離を置くことと手洗いが不可欠です。これらはあらゆる場所や季節を通して、自分自身を守るための最も効果的な方法です。

気候変動はCOVID-19を悪化させますか?

気候変動とCOVID-19の発生や伝播に直接的な関係があるというエビデンスはありません。現在この病気の流行は人間の間で起きているため、伝播を減らし、患者を治療することに重点を置いて対処すべきです。

しかし、気候変動は間接的にCOVID-19への対応に影響を与える可能性があります。気候変動は健康を決定する環境要因を弱らせ、保健医療制度にさらなるストレスを与えるからです。より一般的に言えば、新興感染症のほとんど、そして近年の感染症の世界的流行のほとんどが野生動物に由来するものであり、人間が自然環境にかけている圧力の増加によって病気の発生につながっている可能性があるというエビデンスがあります。保健医療システムの強化、野生動物や家畜、人間に起こる感染症の監視体制の改善、および生物多様性や自然環境保護の強化によって、将来的に他の新種の病気が発生するリスクを減らすことができます。

COVID-19を抑制するための対策により、大気汚染や温室効果ガスの排出量は減少しましたか?

大気汚染は深刻な健康被害をもたらします。大気汚染により毎年約700万人が死亡しており、脳卒中、肺がん、心疾患による死亡者の3分の1は大気汚染が原因です。世界人口の90%以上がWHOの屋外大気指針ガイドラインレベルを満たしていない場所に住んでおり、そのうち約3分の2は、気候変動の原因でもある化石燃料の燃焼によって引き起こされています。

COVID-19の伝播を抑える取り組みにより、経済活動が低下し、一部の地域では大気の質が一時的に改善されました。一方、気候変動の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスは大気中に長く存在するため、一時的な排出削減では大気中の濃度に与える影響は限られています。2020年の初月の世界各地の観測所における二酸化炭素の濃度は、2019年よりも高くなっています。

COVID-19への対応によって環境に関する改善があったとしても、公平性や環境衛生、グリーンエコノミーへの正当な移行を促進するための明確な取り組みがなければ、COVID-19対策が終わった途端に、汚染を引き起こす経済活動の急速な拡大によって状況が悪化する可能性があります。

COVID-19の拡大によって起きた短期的な環境上のメリットはいずれも、許容できない人的・経済的コストを伴います。大気や気候に関する計画的かつ持続的な行動に代わるものではありません。

水不足はCOVID-19などの感染症にどのような影響を与えるのでしょうか?

各地域社会で基本的な衛生習慣を実践し、COVID-19の感染を減らすためには、適切で安全な水と衛生設備へのアクセスが不可欠です。医療施設に安全な水と衛生設備があることは、感染症を予防し、抗菌薬耐性の拡大を抑え、質の高いケアを提供するために非常に重要です。

世界の医療施設の4つに1つは基本的な水の供給が不足しており、20億人以上の人々に直接的な影響を与えています。世界の人口の約80%が、すでに何らかのかたちで水不足を経験しています。気候変動によって、消費、食糧生産、個人の衛生、および感染症を含む医療ケアのための水が、さらに利用できなくなる脅威にさらされます。

COVID-19への世界的な対応から得られる、気候変動への対応に通ずる学びとは何でしょうか?

COVID-19のパンデミックは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」であり、多くの人命を奪い、地域社会に深刻な影響を与えています。気候変動の脅威は徐々に増大しており、21世紀を代表する公衆衛生上の脅威となる可能性があります。しかし共通の教訓を得ることができます。

  • 健康に対する短期的・長期的な脅威から人々を守るためには、保健医療制度が資源不足にならず公平に維持され、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進していくことが欠かせません。
  • 健康にまつわる安全保障を世界的に確保するためには、感染症の発生から異常気象、気候変動に至るまで、すべてのハザードに対する備えが必要です。
  • 健康を左右する環境要因であるきれいな空気、水と衛生設備、安全で栄養価の高い食品などを利用できるようにすることは、あらゆる健康リスクから身を守るために不可欠です。WHOは、世界の健康被害の約4分の1は、回避可能な環境リスクによって起きていると推定しています。
  • 早期の対応が命を救います。パンデミックにしても気候変動にしても、そうした明確な脅威への対応が遅れると、人的・社会経済的なコストが増大します。
  • 不平等性は、特に社会的に最も弱い立場にある人々の健康とウェルビーイングを確保する上で大きな障害となっています。社会的・経済的な不平等は、健康リスクの不平等として現れます。COVID-19や気候変動のような地球規模の公衆衛生上の脅威に直面するとき、私たちの力は、そうした最も弱い保健制度のレベルであるということを意味します。