Q&A(COVID-19):集団免疫とロックダウン

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19):集団免疫とロックダウン

2020年10月15日|Q&A

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「集団免疫」とは?

「集団免疫(Herd immunity)」とは「population immunity」とも呼ばれ、予防接種のしきい値に達した場合に、あるウイルスから集団を守ることができるという概念です。

集団免疫は、ウイルスへの曝露によるものではなく、予防接種によってウイルスから集団を守ることで達成される必要があります。

ワクチンは、私たちの免疫システムを訓練して、病気と闘うタンパク質である「抗体」を作るようにしています。ワクチンは私たちを病気にせずに作用します。予防接種を受けた人々は、問題になっている病気に罹患したり、伝播させたりすることから守られるので、感染の連鎖が断ち切られます。詳しくはCOVID-19とワクチンのページをご覧ください。

集団免疫を安全に達成するためには、集団の大部分がワクチンを接種する必要があり、それによって集団全体に拡大するウイルスの量を減らすことができます。つまり、全ての人が予防接種を受けなければ保護されないわけではなく、集団免疫の達成によって、アレルギーなどで予防接種を受けることができない脆弱な集団の安全も確実に守ることができます。

特定の病気に対する集団免疫を達成するために抗体を持つ必要がある人の割合は、それぞれの病気によって異なります。例えば、麻しん(はしか)に対する集団免疫を得るには、集団の95%が予防接種を受ける必要があります。残りの5%は、ワクチン接種をした人の間で麻しんが拡大しないことによって守られることになります。ポリオの場合、その割合は約80%です。

安全で効果的なワクチンで集団免疫を達成することで、疾患を防ぎ、命を救うことができます。

集団免疫に関する科学については、WHOのチーフサイエンティストであるソーミャ・スワミナタン博士のインタビューをご覧ください。

COVID-19と闘う方法としての「集団免疫」について、WHOはどのように考えていますか?

人々をウイルスに曝露させることで「集団免疫」に到達しようとする試みは、科学的に問題であり、非倫理的です。年齢や健康状態にかかわらずCOVID-19を集団全体に拡大させることは、不必要な感染・苦痛・死亡につながります。

ほとんどの国の大多数の人々が、このウイルスへの免疫をもっていない状況です。血清有病率調査によると、ほとんどの国で、COVID-19に感染したことがある人は人口の10%未満です。

COVID-19に対する免疫については、まだ調査中です。COVID-19に感染したほとんどの人は、最初の数週間以内に免疫反応が出ますが、その免疫反応がどれくらい強いのか、どれくらい持続するのか、あるいは人によってどのように違うのかは分かっていません。また、2度目の感染をした人も報告されています。

COVID-19の免疫をより深く理解するまでは、集団がどれほどの免疫を持っているか、その免疫がどのくらいの期間持続するのかを知ることは難しく、将来の予測もできません。こうした状況の中では、人に感染させることで集団内の免疫力を高めようとするいかなる計画も排除すべきです。

高齢者や基礎疾患がある人は重症化と死亡のリスクが最も高いとされていますが、リスクがあるのはそうした人だけではありません。

最後に、ほとんどの感染者は軽度または中等度の病状になり、一部の人は病気を経験しない一方で、多くの人は重症化し、入院しなければなりません。私たちはLong COVID(長期的につづく新型コロナウイルス感染症)と呼ばれる現象も含めて、COVID-19の長期的な健康への影響を理解し始めたばかりです。

詳しくは、10月12日のWHOの立場の概要を要約したCOVID-19の説明の冒頭の挨拶をお読みください。

COVID-19の免疫について分かっていることは何ですか?

COVID-19に感染したほとんどの人は、感染後の最初の数週間以内に免疫反応が出ます。

その保護作用がどれだけ強く、どれだけ持続するかについては、現在も研究が進行中です。WHOはまた、免疫反応の強さや長さが、症状なし(「無症候性」)、軽症、重症など、感染の種類によって異なるかどうかについても調べています。症状がない人でも、免疫反応は出現するようです。

血清有病率調査のデータによると、全世界の調査対象者のうち、感染していたのは10%未満でした。つまり世界の人口の大部分が、まだこのウイルスに感染しやすい状態ということになります。

一般的な風邪や、SARS-CoV-1、中東呼吸器症候群(MERS)などの他のコロナウイルス関連の感染症では、他の病気と同様に、それぞれのウイルスに対する免疫が時間の経過とともに低下します。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスに感染している人も、他の感染症と同様に抗体や免疫ができますが、どのくらいの期間続くのかはまだわかっていません。

免疫の詳細についてはマイク・ライアン博士とマリア・バンケルコフ博士の対談をご覧ください。

COVID-19対策としての「ロックダウン」について、WHOはどのように考えていますか?

「ロックダウン(都市封鎖)」とも呼ばれる大規模な物理的距離の確保や移動の制限は、人と人との接触を制限することで、COVID-19の伝播を遅らせることができます。

しかしこれらの措置は、社会的・経済的な生活をほとんど停止させるため、個人・コミュニティ・社会に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。このような措置は、貧困状態にある人や移民、国内避難民、難民などの不利な条件に置かれた人々に対して、不釣り合いなほどの影響を与えます。こうした人々の多くは、過密で資源不足の環境で暮らし、生活のために日雇いの労働に頼っています。

WHOは、いくつかの国では一定の時点で、時間稼ぎのために自宅待機命令やその他の対策を出さざるを得なかったことを認識しています。

政府は、全ての症例の検出・隔離・検査・治療を行うためのキャパシティを構築し、全ての接触者の追跡・隔離を行い、住民の関与・自立・社会的対応を推進することを可能にするためにできることを全て行うことによって、「ロックダウン」によって与えられた時間を最大限に活用しなければなりません。

WHOは、各国が現地の状況に基づいて、必要な時に必要な場所で的を絞った施策を行うことを期待しています。