2017-08-24

WKCフォーラムレポート「高齢化するアジア、そして世界で期待される福祉用具の役割」

高齢化が進行するアジア地域のみならず、いまや世界中で福祉機器(Assistive Technologies)は、高齢者の生活を支える重要な役割を果たしています。障がいの有無にかかわらず、高齢者の日々の活動を助けたり、健康の維持や社会参加をサポートしたりと、なくてはならない存在なのです。



8月24日、WHO神戸センターは第11回リハビリテーション工学と支援技術に関する国際会議(i-CREATe 2017)、第 32回リハ工学カンファレンスin神戸と共同でWKCフォーラム「高齢化するアジア、そして世界で期待される福祉用具の役割」を開催し、約200人が参加しました。

 

基調講演ではデンマークのCreative ImpactディレクターHenrik Hjorth氏が「デンマーク人から見た”支援のある生活”-高齢化にまつわる問題に着目して-」をテーマに講演しました。お掃除ロボットや運送ロボットなどのロボット介護機器の活用して「エイジング・イン・プレイス*」を支援する取り組みを紹介し、その中で見えてきた課題について語りました。デンマークでは日本と同様に地方自治体が介護サービスや支援を提供。財源など限られたリソースの中、難しい対応が求められている現状や、各自治体で「自宅で慣れ親しんできた技術を」と、実施したプロジェクトの経験を共有する全国規模の情報データベースを開発した事例などが紹介されました。

Hjorth氏は「エイジング・イン・プレイスの諸施策には人の手による支援と技術的な支援の両方が必要ですが、これらをどのようなバランスで取り入れるかは、人による支援を希望する受益者と、ロボット介護機器も利用してコストを削減し、人手不足を補いながら、質の高いケアを提供したいと考える自治体とそれぞれの意向が反映されます。そしてそこには、高齢者の尊厳と自立という課題があるのです」と話し、ロボット機器と人によるサービスの両方を開発を手がける企業の例を紹介しました。「介護モデルを作成するプロセスに高齢者を巻き込むこと。そして政策には財政面だけでなく高齢者の生活の質に配慮することが必要」と強調しました。

基調講演に続き、障がい者向けの福祉機器の重要性とその利用例に関する3つのプレゼンテーションが行われました。利用者と一緒になって機器の開発、改良、共同設計を進めるアプローチは高齢者のニーズへの応用が期待できます。

 

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)の奥平真砂子氏は、障がいに関する劣等感を乗り越え、自分を受け容れて、前向きに歩み出した自らの体験について話し、さくら車いすプロジェクトの篠田浩之氏とアジア姿勢保持プロジェクト(ASAP)の松本和志氏は、海外の車椅子利用者支援で直面した課題について語りました。そして、福祉機器の寄贈という従来型の支援ではなく、技術支援もあわせて実施することで利用者のニーズを満たす新たな支援の形について掘り下げて語りました。

本フォーラムは、日本語同時通訳・手話通訳のもと、英語で進行されました。

参加いただきました皆様、ありがとうございました。

*エイジング・イン・プレイス(aging-in-place):高齢者が住み慣れた地域で生きがいや尊厳を保ち、活動的で有意義な人生を送るというライフスタイル・コンセプト

基調講演プレゼンテーション

フォーラム開催のご案内