2015-02-20

WKCフォーラムレポート「災害にレジリエントな高齢化社会とコミュニティーの構築にむけて」

阪神・淡路大震災から20年の年月が流れました。この機会を記念して、WHO神戸センター(WKC)は兵庫県立大学地域ケア開発研究所と共に、2015年2月20日神戸市中央区の兵庫県看護協会にて公開フォーラム「災害にレジリエントな高齢化社会とコミュニティーの構築にむけて」を開催し、43名が参加しました。

この20年の間、日本国内はもとより、国外でも様々な災害に見舞われました。増え続ける災害、そしてその被害を最小限に留め、より災害に強い地域社会を作るために、国そして世界レベルでの備えや緊急対応はどうあるべきか、そしてよりよい復興を遂げるためには、地域で何が必要とされるかが議論され続けています。2005年の第2回国連防災世界会議では、参加国が防災に力を入れるという同意のもと、兵庫行動枠組が採択されました。また、3月14日から18日まで、仙台において第3回国連防災世界会議が開催され、兵庫行動枠組の評価が行われます。現在も、この20年間の世界の国々における取り組みの評価、また新たな課題の設定に関する協議が進行中ですが、この会議で、次の防災への課題を果たすべく「ポスト兵庫行動枠組」として審議・採択される予定です。

日本は世界に先駆けて超高齢化社会を迎えており、その結果、1995年の阪神淡路大震災でも、2011年の東日本大震災においても、死者の半数以上を高齢者が占める等、多大な影響を受けています。また、災害による影響は身体的な被害だけに留まりません。災害によって失われるものは、地域社会とのつながりや、その地域での医療サービスなど、個々の住民を取り巻く社会とのつながり全てが絶たれてしまうのです。そして、一度災害によって壊されてしまった地域社会の再生には多くの時間を要します。しかし、日頃から災害に強い地域社会では、この再生過程が異なることが指摘されています。被災した後に再生しようとする力、回復力をレジリエンスと呼びますが、このレジリエンスは、地域のメンバーである住民や、住民を支える様々なシステムが日頃どのように活動・機能しているかで大きく左右されます。高齢社会では、このような日頃からの備えが脆くなりがちです。

このような社会状況に踏まえて今回のフォーラムでは、看護・社会福祉・医療、心理学の分野から5名の専門家を迎え、超高齢化社会でのレジリエントな社会の構築に関しての講義ならびにコメントを発表する形で討議を展開しました。

京都大学大学院特定准教授の三谷先生は、東日本大震災後の高齢者が抱える健康問題について、震災関連死を予防するため、避難所生活による健康リスク、災害時の高齢者の脆弱性を疫学的観点から考察しました。WHO神戸センターのコンサルタント加古氏は、世界レベルでの高齢化の進捗状況と、高齢化社会での防災のあり方、災害からの回復時・リハビリテーション期を焦点にし、高齢化社会と防災のあり方について発表しました。神戸市垂水区役所保護課長の岡本氏は、自身の地域福祉課での活動を基に、阪神淡路大震災後に生じた被災高齢者の見守りやコミュニティーの再生について、脆弱になりがちなコミュニティーを震災時だけでなく平時から支え続ける必要性について報告しました。兵庫県立大学地域ケア開発研究所所長の山本教授は、阪神淡路大震災時の仮設住宅における看護職による健康相談や住民の方々の輪づくりなどの活動や、各地域における「まちの保健室」活動の紹介とともに、この活動を通しての健康・生活調査の結果を踏まえて、被災高齢者の身体とともに社会的なサポートの重要性を講演しました。相馬中央病院内科診療科長の越智先生は、福島県相馬市での経験を基に、被災地における長期的な健康被害を阻止することの必要性、特に避難行動による健康被害や、放射線を避けることで生じる健康被害など福島の高齢者が抱える問題を報告しました。

また、阪神・淡路大震災から20年を振りかえって、講演者から次の点が指摘されました。

  • 社会からの孤立や高齢者自身の健康管理能力の向上といった、災害後の心理社会的な課題に取り組むことが重要である。
  • 震災から20年を経て、各機関での災害時の役割認識が整ってきた結果、災害緊急対応に携わるそれぞれの組織の細分化や専門性の発展に伴い、災害後の対応がより自律的に行われるようになっている。
  • 連携・包括的な活動は、災害支援において大切なことであるが、そのためには日頃からの関係機関の間でのコミュニケーションが不可欠である。
  • 防災は日常の生活に取り入れられるべきことであり、また高齢化社会では、高齢者の防災活動への参加がより必要になってくる。

プログラム・講演者

プレゼンテーション