終末期の高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデル:スコーピング・レビュー

フォトクレジット: Banyule City Council
実施期間:

2017年9月~12月

連携機関:

キングス・カレッジ・ロンドン

研究対象地域:

Global

総予算:
US$ 40,000

かつてない速さで高齢化が進む現代、加齢によって徐々に進む機能低下に適応しながらも、高齢者が充実した生活を送るためには保健サービスと社会サービスの再編が国際的にも重要視されています。

本研究では、終末期の高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデルに関するエビデンスを包括的に集約しました。検討対象は各国の保健、社会、福祉サービスとし、特に低・中所得国に注目しました。

 

手法                                                                           

本研究ではシステマティック・レビューを対象とした迅速なスコーピング・レビューが用いられ、MEDLINE、CINAHL、EMBASE、Cochrane Database of Systematic Reviewsに登録されている2000~2017年発表の文献を検索し、参照検索で補足しました。そして、高齢者の生活の質を最大限に高めるサービスモデルの有効性を検討したレビュー論文の中から、サービス提供の対象集団の50%以上が60歳以上で、サービス提供が最期の1~2年とされているレビュー論文を選定しました。検索結果は個別にスクリーニングし、選定されたレビュー論文の質をAMSTARに基づき評価、ナラティブにデータの記述、集約を行いました。

 

結果                                                                                  

検索したレビュー論文2238件中、72件(Cochraneレビュー9件を含む)が条件を満たし、総計784,983人のデータを検討しました。地域的には南北アメリカ(52/72)、ヨーロッパ(46/72)の研究が多数を占めました。これらのレビューで生活の質の向上を目指すサービスモデルを1)身体機能に重点を置く総合的な高齢者ケアと、2)症状や不安に重点を置く総合的緩和ケアに分類しました(図1)。両モデルが目指すアウトカムはそれぞれ異なりますが、共通する要素には「人中心のケア」「サービス利用者と提供者への教育」「多職種によるサービス提供」などがあげられます。レビューでは117のアウトカムが特定され、そのうち21%がメタ解析された結果、生活の質(4件中4件)、個別の症状(5件中5件)への効果が示されました。全体的に経済学的分析はあまり行われていませんでした。

 

結論                                                                          

目指すアウトカムは異なるものの、総合的な高齢者ケアまたは総合的緩和ケアに分類されたサービスモデルは、終末期の高齢者の生活の質の向上と症状改善に効果を示しました。両者に共通する要素が存在することからも、分類を越えたサービスの融合と患者のニーズや求めるアウトカムに応じたサービス提供の必要性が強調されました。今後への提言としてはヘルスケアとソーシャルケアを包含した経済学的分析や、健康格差の背景要因を理解するために必要なあらゆる財源の検討などがあげられます。

図1. 終末期の高齢者の生活の質を最大限に高める包括的なサービスモデル