災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス

Implementation:

2018年~2020年

Implementing partners:

編者:マイク・クラーク(クイーンズ大学ベルファスト)、ヴァージニア・マレー(イングランド公衆衛生庁)、エミリー・YY・チャン(香港中文大学)、トレイシー・オ・サリバン(オタワ大学)、茅野龍馬(WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター:WKC)、ジョナサン・アブラハムズ(WHO健康危機管理局(WHE))

 

著者:WHO本部(WHE、WKC)、WHO地域事務局(汎米保健機関/アメリカ地域事務局、アフリカ地域事務局、東地中海地域事務局、欧州地域事務局、南東アジア地域事務局、西太平洋地域事務局)を含む17か国92名の著者

Location of research:

世界各国

Total Budget:
80,000米ドル

背景

防災の重要な側面として保健医療がますます認識されるようになり、その結果、災害・健康危機管理(Health-EDRM)が近年、研究、政策、実践における重要な領域となってきています。WHO第13次総合事業計画(GPW13)、仙台防災枠組み2015-2030、持続可能な開発目標(SDGs)、国際保健規則(IHR)などの世界規模の枠組みでは、災害等の危機による健康への影響の低減や、強靭な保健制度の確立を目指して、健康に関する目標や目的、指標が設けられています。このため、災害や緊急事態発生時の健康危機管理には、実現可能な最良のエビデンスに裏打ちされた政策と行動が重要になります。しかし、Health-EDRM分野では研究が全般的に不足しており、基盤となるエビデンスは非常に限られています。これを補おうと、WHO災害・健康危機管理に関するグローバルリサーチネットワーク(TPRN)が、Health-EDRM分野の研究方法を記載したガイダンスの作成を開始しました。

 

方法
2018年10月、WHO神戸センターは、TPRNやその他の主要な研究機関等から第一線の専門家を集め、Health-EDRM研究における重要なニーズを同定する専門家会合を開催しました。会議では、5つの優先研究課題の1つとして「研究の方法と倫理」が同定され、研究方法に関する手引書を喫緊に整備して、Health-EDRMの研究と倫理に関する重要課題に取り組む必要があることが議論されました。特に、Health-EDRM研究が世界共通の用語と協調する必要性や、倫理的審査のプロセスをスムーズかつ迅速に進める仕組み、研究アイディア創出や研究成果の評価への被災地域の当事者をはじめとした様々な関係者の参画促進、統一見解などの参考資料の整備などが課題として挙げられます。

 

成果
Health-EDRMの研究手法に関するWHOガイダンスは17カ国92名により執筆される41節からなり、内容はHealth-EDRM分野の多岐にわたっています。本書は、導入、問題の同定と理解、問題の評価とスコーピングスタディの立案、研究デザイン、研究のプロセスと利点に関する特別章、研究者になるための手引き、の全6章からなっています。また、幅広いケーススタディを紹介しており一国での事例が26件、多国間または世界的な事例が33件含まれています。Health-EDRM分野の第一線の専門家6名が編集を担当しており、21か国59名のピアレビュアーによる査読を受けることになっています。2020年にWHO神戸センターのウェブサイトで、オープンアクセスで公開される予定です。

 

展望
Health-EDRMの研究手法に関するWHOガイダンスは、Health-EDRM研究を強化・促進し、政策と実践に役立つエビデンスの構築に寄与すると考えられます。本書は、Health-EDRM分野の医療従事者、学術界、政府機関や関係省庁、国際機関、地域団体や市民社会団体など、幅広い関係者にとって大いに役立つでしょう。

論文

1. Aung MN, Murray V, Kayano R. Research Methods and Ethics in Health Emergency and Disaster Risk Management: The Result of the Kobe Expert Meeting. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(5):E770. doi: 10.3390/ijerph16050770.