2011-05-25

16億人の健康を保護する挑戦

WHO神戸センターは、「健康危機管理(感染症対策)と緊急災害医療」をテーマにWHO西太平洋地域事務局(以下WPRO、在マニラ)から二人の専門家を招き、神戸大学大学院医学研究科と合同でフォーラムを行いました。

WPROが統括する37の国と地域は人口が多く(総人口16億人)、文化、経済状況、地理や気候条件などが多様で、自然災害や健康危機が比較的多いところです。それゆえ、WPROの対応にはいつも柔軟性が求められます。

アート・ペシガン技官は、自身が長年関わってきた緊急災害人道支援の経験から学んだ教訓として、初動段階での迅速かつ適切な人材の長期派遣(3ヶ月以上が望ましい)や、条件(経験、資金、理解)の異なる複数パートナー間の連携調整の難しさを指摘しました。国連諸機関は、「人道支援改革」を打ち出し、人道危機が起こった際に国連機関や他の国際的パートナーがそれぞれの得意分野を分担して主導する「クラスター・アプローチ」を導入、WHOは「保健医療」のクラスターを主導し地域、パートナー連携の強化を目指しています。

また、WPRO地域では国際的脅威になりうる感染症が年間 200 件以上発生しています。近年SARS、トリインフルエンザ(A/H5N1)を始め多くの新興感染症がこの地域で起こっており、その健康被害、経済被害は国にとって大きな損害です。松井珠乃医官は、情報収集、意思決定、対策決定を含むWHOの感染症対策の骨格を紹介しました。「不確実性に如何に向き合い、適切な対策の決断をしていくか」が常に試されます。また、各国政府の災害、健康危機への対応能力を強化するための人材開発・研修もWHOの大きな役割の一つです。

フォーラムは100人ほどの参加者を集め、発表の後は活発な質疑応答が行われました。