2019-05-30

2019年世界禁煙デー WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター) 所長 サラ・バーバーからのメッセージ

毎年5月31日に、世界保健機関とその協力機関は世界禁煙デーを記念して、喫煙と受動喫煙が有害で死に至る一方で、死亡や疾患を確実に防ぐことのできる要因でもあるという認識を高める活動を行っています。2019年は、喫煙者だけでなく、あらゆる人の肺の健康に対するたばこの脅威に焦点をあてています。

喫煙は肺がんの最大の原因であり、世界ではたばこが原因と考えられる肺がんで毎年約120万人が亡くなっています。喫煙者は非喫煙者より肺がんに22倍かかりやすく、結核に2倍かかりやすくなります。世界で新たに結核と診断された患者の20%以上は、たばこが原因の可能性があります。

たばこの煙は室内の空気を汚染します。吐き出される煙と同様に、たばこの燃焼部分から出る煙にさらされることは、受動喫煙であることが知られています。この煙を吸い込んだ非喫煙者は、肺がん、慢性閉塞性肺疾患、結核、ぜんそくにかかるリスクが高まります。喫煙者の子供においては肺の機能が低下し、成人後、慢性的な呼吸器疾患にかかる恐れがあります。

たった1本のたばこでも肺にダメージを与えます。吸い込んだ煙は、粘液や異物を取り除く働きをする気道内の構造を麻痺させるため、煙に含まれる有害物質が肺に入りやすくなります。日本では人口の約18%がたばこを吸っており、受動喫煙が原因で毎年約15,000人が亡くなっています。

しかし、禁煙を始めるのに遅すぎるということは決してありません。肺の機能は、たばこを止めてから2週間のうちに改善します。

日本では最近、屋内での喫煙に関する法規制が強化されました。2019年7月から、学校、病院や診療所、行政機関の庁舎、児童福祉施設では屋内での喫煙が禁止されます。東京都、千葉市、静岡県、北海道などのいくつかの自治体は、県民や市民を守るため、より厳しい全面禁煙の条例を導入しています。ますます多くの事業者が職場での喫煙を禁止することでたばこではなく健康の促進を選び、従業員の禁煙を支援しています。

これらは、有害な受動喫煙から人々を守るための重要な一歩ではありますが、充分とは言えません。日本国内の小さな飲食店の約55%は、その広さを基に法規制から免除されます。つまり、その顧客や家族、従業員はたばこの煙にさらされる状況が続くということです。喫煙専用室は、人々を受動喫煙から守ることには非効果的であるにもかかわらず、事務所、ホテル、鉄道などの公共空間でその利用が今後も続くことになります。

日本は、電子たばこや加熱式たばこ(HTP)の最も成長著しい市場の一つです。加熱式たばこも他のたばこ製品と同様に規制するべきであり、加熱式たばこや電子たばこの受動喫煙から周囲の人々を保護する必要があるとWHOは勧告しています。

まもなく日本は、ラグビーワールドカップ2019日本大会で、その文化とおもてなしの心を披露することになっています。参加国の多くは屋内全面禁煙に関する法律を既に導入しており、健康にもビジネスにも好ましい影響を認めています。屋内禁煙の影響についての研究では、バーやレストランの経営に好ましい影響を与えるか、もしくは影響しないかのいずれかであるという結果が得られています。

日本は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ実現に向けて、質の高い保健医療に国民全員が確実にアクセスできるように進めてきたことで、世界を主導する立場にあることを証明してきました。2019年のラグビーワールドカップと2020年のオリンピックは、全面禁煙の法規制の範囲を拡大し、加速させるための絶好の機会です。最も効率的なたばこ規制の政策・法律を導入し実施することは、喫煙者だけでなく、あらゆる人の肺の健康にとって重要です。