2019-06-17

WKC-OECD研究発表

WHO健康開発総合研究センター(WKC)と経済協力開発機構(OECD)は、全ての人が基礎的医療サービスを受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けた各国の取り組みの進展の加速を支援するために、保健医療における価格設定および価格規制に関する新たな研究についての発表を行った。

研究者達は9つの国・地域*に関する事例研究を完了し、特に低所得国と中所得国における価格の設定と規制に対して、得られた教訓を取りまとめ、更なる研究の対象となる領域を特定した。

研究のコーディネイターでありWKCの所長でもあるサラ・バーバー博士は次のように述べた。「価格設定と支払いに関する政策はUHCを推進させるための重要なツールである。価格政策は医療従事者と患者の双方に、どのような医療サービスが提供されるのか、また医療提供者にはどの程度の適正な支払いがなされるのかについて、明確なメッセージを送る。価格の設定が高すぎたり低すぎたりすると、医療提供者は不必要なケアを追加したり、質の不十分なケアを提供するなどして埋め合わせを図るかもしれない。」

この研究では価格が設定される仕組みを比較することにより、規制当局による一方向性の価格設定では、保険会社と医療サービス提供者との間の個別の価格交渉による設定と比較して、医療の質とは無関係の価格における変動が排除されて、医療コストの低減に役立つことがわかった。事例研究の多くは既に確立された医療の状況に焦点を当てていたが、全ての政策立案者達は、医療の質、効率、健康へのアウトカムの向上を促す動機を提供するための手段として価格を使用すべく努力を続けている。

例えば、研究の対象となった国々の大半では、僻地または遠隔地の医療提供者や、過度に多数の低所得者あるいは高額治療患者を扱う医療提供者に対する価格を調整することによって、公正な医療へのアクセスと受給を保証している。日本、大韓民国、ドイツ、マレーシアとタイでは、規定額をこえる形で医療費を請求することが禁止されており、医療提供者は規制された価格より高額の請求を行うことが許可されていない。これは、支払い時に予期しない自己負担費用から人々を守るためである。

この研究は、保健医療への公的資金を増やそうとしている低所得国及び中所得国にとって、特に価値がある。研究から得られた教訓としては、データ・インフラストラクチャーと医療施設のキャパシティへの投資の必要性が挙げられる。その様な投資により、政策、順次的な実施変更の計画、健康政策のゴールに向かうための価格の使用、健康関連目標の達成に必要とされる修正を特定するためのモニタリングと評価のシステムの設立の指標となる背景特異的なエビデンスを作出できる。

このユニークな成果は、保健制度やユニバーサル・ヘルス・カバレッジに係わる政策立案や研究者たちの興味を引くだろう。詳細はWKCのウェブサイトからダウンロードできる。https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/project-details/Price_setting_health_care

* オーストラリア、イングランド(イギリス)、フランス、ドイツ、日本、マレーシア、大韓民国、タイ、メリーランド州(アメリカ合衆国)