2019-04-05

2019年世界保健デー WHO健康開発総合研究センター 所長 サラ・バーバー博士からのメッセージ

4月7日の世界保健デーは世界各地で健康を祝う日です。今年は、「すべての人に健康を-誰でも、どこでも」の基礎となるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とプライマリー・ヘルスケアに焦点があてられています。誰一人として取り残されることのない、より公平で健康な世界というWHOの目標について知っていただく良い機会でもあります。

UHCとは、すべての人が、必要な時に必要な場所で、経済的に困窮することなく良質な保健医療サービスを利用できることを意味します。健康への権利を実現することは、WHOの主な目標の1つです。疾病や死亡の最大の原因に対処するサービスの利用という利益を、2024年までにさらに10億人が享受できるようにWHOは注力しています。このようなサービスは、利用者の健康を改善できるように質を確保する必要があります。また、その費用によって、人々が貧困に陥ったり、人々特に子供達の未来が奪われたりするようなことがあってはなりません。

プライマリー・ヘルスケアは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの基礎となるものです。これは、個人、家族、地域のニーズや希望を主体とし、より良い健康や福祉を目指す社会全体を対象とするアプローチです。健康促進、疾病や不健康の予防から、治療、リハビリ、終末期医療まで、人々が生活したり働いたりしている利用可能な状況下で、身体的、精神的、社会的な健康と福祉のために必要とされる保健医療の必要不可欠なサービスに焦点をあてています。

UHCとプライマリー・ヘルスケアでは、健康を基本的な人権として考えています。UHCとプライマリー・ヘルスケアは、人々を主体とし、健康を増進するための知識と保健医療サービスにより個人、家族、地域をサポートするものです。これには、健康や福祉(健康の決め手となるもの)に影響を与える社会的、経済的、環境的、商業的な要因に取り組むため、利害関係者が分野を超えて協同する必要があります。UHCとプライマリー・ヘルスケアに支えられた保健医療制度には柔軟性があり、上手く自然災害や危機などにも対処できるようになります。

UHCとプライマリー・ヘルスケアに関する日本の経験には、他の多くの国々にとっての教訓が多く含まれています。1950年代から1970年代にかけて、感染性疾患の管理と非感染性疾患の予防に日本は投資しました。1961年には、包括的な健康保険制度の創設により、保健医療へのアクセスの平等化に関する目標を実現させました。健康関連の指標の改善には、健康以外の分野も巻き込むことが重要であることも学習しました。このような投資は実を結び、日本経済の今日までの発展に大きく貢献しました。

現在、日本人の平均余命は83.7歳と世界一の長寿となっています。医療費に起因する貧困者の数は非常に少なく、0.5~1.4%です。今日、日本人の健康関連の指標は良好で、日本ほど高齢者が活動的に、また健康に暮らしている地域は世界に類を見ません。  

しかし、諸外国ではもっと多くのニーズが残されています。東南アジアでは、約8億人が最低限のサービスですら満足に利用できていません。少なくとも6500万人が、医療費、主に薬代が原因で困窮しています。持続可能な開発目標とUHCに関する世界全体の目標を達成するためには、2030年までに1800万人以上の医療従事者がさらに必要となります。

WHO健康開発総合研究センターは、UHC実現に向けた動きを加速するため、今後の保健医療制度の研究を実施することを目的として、戦略的に神戸に設立されました。私たちは世界中の研究者と協同し、優良事例や諸外国のUHC実現の支援方法を探究しています。WHO健康開発総合研究センターの活動の焦点は、特に急速に高齢化する社会において、健康や保健医療に関する解決策の普及を後押しするイノベーションにあります。

政策に影響を与え、UHCおよび持続可能な開発目標の達成に向けた活動を促進するため、このような研究で得られた知見を実践に移すことを目標に、私たちは全力を注いでいます。また、確固たる決意を持ち、健康開発に関する研究により、すべての人のユニバーサル・ヘルス・ケアの実現に貢献しようと考えております。「すべての人に健康を-誰でも、どこでも」の目標達成に向けて、全力を尽くしてまいります。