2019-12-12

WHO健康開発総合研究センター所長からのメッセージ:2019年ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デーに寄せて

2019年9月23日にニューヨークで開催された国連総会で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ政治宣言に全加盟国が合意し、世界中の人たちが経済的な困難を伴うことなく必要な保健サービスを享受できるようにするという断固たる政治的決意を表明しました。

政治的決意を固めた政策立案者が今問いかけているのが、この決意をどのように実現していくかということです。これはもっともな問いと言えます。神戸にあるWHO健康開発総合研究センター(WKC)では、この問いの答えを模索し、必要な改革を決定していかなければならない各国を支援する研究を進めています。このような研究は、人口の高齢化等大きな動きに対応しなければならない時に特に重要となります。保健制度を継続的に見直し、人々のニーズに応えていくためです。

WKCの研究は、高齢化と持続可能な医療財政との折り合いをどのようにつけるか等の、政策立案者にとって非常に厄介な問題を対象としています。最近の研究では価格設定と価格規制を取り上げ、すべての人びとがより健康であるために、限られたリソースで保健医療の質と財政保護をどのように改善していくのかを調査しました。調査結果は、所得のレベルに関わらずあらゆる国々で活用できるものとなっています。

世界的な人口高齢化の中でユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するためには、高齢者のニーズや権利を中心に据えた包括的なサービスが手頃な価格で入手できることが必要です。これを踏まえ、WKCと共同研究者が現在取り組んでいるのがユニバーサル・ヘルス・カバレッジの進捗を監視する新たなモデルの開発で、必須保健サービス、財政保護、そして高齢者の効果的なカバレッジを対象としています。

保健制度への投資はより健康な世界への投資であるのみならず、より安全な世界への投資でもあります。WKCでは災害・健康危機管理の分野で新たに立ち上がったグローバルネットワークで中心的な役割を果たしていますが、このネットワークの目的は証拠基盤の改善を目指した世界的な動きを促進することで、これにより各国は何が有効かという証拠に基づいて政策を決定することができます。

このたびのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デーにあたり、WKCは人々が健康を享受する権利を擁護したいと思います。健康は貴重で、人間の尊厳の土台をなすものです。私たちはユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成、そしてすべての人びとが公平かつ容易に手頃な価格の保健医療サービスを享受できるよう各国を支援し続けていく所存です。