2021-08-24

高齢者の継続的なケアの価格設定に関する新たな報告書を発行

高齢者が手ごろな価格で利用できる長期にわたる継続的なケアの提供は、不可欠な保健医療・社会サービスを保障するユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進する上で重要な公共投資となります。また高齢者の財政的保護や、必要なケアにかかる費用を支払うことができない人々のための社会的セーフティネットを確保する点においても重要です。高齢者を対象とした保健医療・社会サービスの提供方法や、そういったサービスの価格の設定方法においては、政策の選択が重要な要素となります。

WHO神戸センターと経済協力開発機構(OECD)は、WHO欧州地域およびWHO西太平洋地域の研究者と共同で「高齢者の継続的なケアにおける価格設定」に関する新しい報告書を発行しました。オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、大韓民国、オランダ、スペイン、スウェーデン、およびアメリカ合衆国の計9ヵ国の事例研究を行い、各国における継続的なケアの提供にかかわる組織、資金調達、および価格設定を調査し、さらに政策目標を達成する手段として価格設定がどのように使われているかを考察しました。

「高齢者に適切なサービスを提供して保健医療と社会的ニーズを支えることは、彼らの生活の質と機能的能力の維持に役立ちます。 そうしたサービスの調達と価格設定は、支払いにおける公平性を促進するために不可欠な政策手段です。 またサービスの調達と質を関連付けることが非常に重要で、そのためにも継続的なケアの質の評価に関するさらなる調査と政策対応が必要です」 とWHO神戸センターのサラ・ルイーズ・バーバー所長と、本報告書のコーディネーターであるOECDのルカ・ロレンツォーニ氏は述べています。

この報告書では、特に低・中所得国における政策を推進するための教訓を、各事例研究から引き出しています。

「一部の低・中所得国では、主に家族などが介護をはじめ継続的なケアを提供するインフォーマルケアに依存しているため、フォーマルな制度の確立とそれへの公的資金の投入は不要であると考えられています。しかしそうした国々の状況も、人口高齢化や核家族化、女性の正規雇用機会の増加などによって、急速に変化していることを本報告書では示しています。若い人口を抱える国でさえ、高齢者の保健医療と社会的ケアのニーズを満たす上で課題に直面しています」とバーバー所長は指摘します。

本報告書の全文と事例研究はこちら
政策概要および各事例研究の著者への5分間のインタビューはこちら