2023-09-29

国際高齢者デーに寄せて WHO神戸センター所長のメッセージ

Director's portrait

10月1日は、日本をはじめとする世界各国が「国際高齢者デー」を記念し、高齢者による社会への貢献に敬意を表し感謝する日です。

高齢者人口の増加に伴い変化するニーズに対応できる統合された保健医療・社会保障制度が必要とされており、日本を含む世界のほとんどの国が多くの課題に直面しています。人口高齢化における保健医療制度では特に、質の高い慢性期ケアを提供できるかどうかが重要な点となります。

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)は、高齢者が健康への権利を享受できるような保健医療制度があらゆる地域で実現することを目指しています。高齢者の保健医療・介護・福祉サービスへの公平なアクセスに影響を与える要因を特定するため、当センターは世界各地のパートナーと協働しています。関西地域とアジア太平洋地域における研究では、得られた教訓をもとに広く世界各国での政策開発に役立つ情報を提供し、高齢者が必要なケアを利用する際に直面する障壁や格差を是正するために各国当局が適切に対応できるよう支援しています。

当センターは、高齢者をはじめ人々の健康と良好な身体機能が実現されるように、質の高い慢性期ケアを奨励するための報酬の設定方法について検討した研究の報告書を近く発表予定です。本研究は経済協力開発機構(OECD)との共同によるもので、現地の研究チームと協力して、質の高い慢性期ケアと連動させた医療サービスの契約・支払い手段に関するケーススタディーを8か国で実施しました。

本研究からは、保健医療への支払い方式の設定において、報酬に着目するだけでなく、保健医療サービスの提供モデル全体に焦点をあてて検討すべきであることがわかり、質の低下につながる要因を体系的に特定できるよう、さらに注力していく必要性が明らかになりました。政策立案者はその結果をもとに、すべての人に対してサービスの質と効果を向上させるとともに、高齢者が必要とする内容と質のサービスも担保するサービス提供モデルに向けた制度改革を後押しするような報酬の設定方法を特定することが可能となります。

本研究の報告書とポリシーブリーフはこちらのページで公開予定です。