2022-02-28

プレスリリース:災害対策と健康危機管理の研究手法向上に向けたWHOグローバルイニシアティブ 国内普及プロジェクト発足のお知らせ

[Press Release]

災害対策と健康危機管理の研究手法向上に向けたWHOグローバルイニシアティブ
国内普及プロジェクト発足のお知らせ 

【プロジェクトにご協力下さる機関・専門家の方の一覧は随時更新されます。最新の情報は下記[WHOガイダンス普及プロジェクト_協力一覧_更新.PDF]をダウンロード・ご参照ください。】

 

2021年10月、「災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」が発行されました。本ガイダンスは、6章43節で構成される、保健医療領域の災害対策の研究手法についての世界初の包括的ガイドです。全世界から100名を超える専門家が執筆に参加し、防災先進国である日本からも多くの専門家が執筆に協力しました(目次・概要、編者・著者は、下記[ガイダンスDraft]を参照ください。)

本領域の研究を向上するべく、世界保健機関(WHO)は2022年より、本ガイダンスの使用と普及を進めるグローバルイニシアティブを実施します。この度、日本における普及プロジェクトを、執筆者を中心とした国内の専門家と協力して発足しましたので、ご報告いたします。

また3月3日から5日にかけて広島で開催される日本災害医学会の年次総会においても本プロジェクトについての発表を行います。

 

【国内普及プロジェクト概要】

■ 目的:「災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」の研究、教育への使用を推進し、本領域の研究の質と量を向上する(発足の経緯と主旨については[別紙]1参照)

■ 主幹:WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)

■ プロジェクト発足共同発表(50音順)

慶應大学 医学部 医療政策管理学教室
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 
国立病院機構本部 DMAT事務局
国立保健医療科学院 健康危機管理研究部
東海大学 医学部
東北大学 災害科学国際研究所
東北大学 大学院医学系研究科
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
日本公衆衛生学会 災害・緊急時公衆衛生活動委員会
日本災害医学会
日本災害医学会 第27回日本災害医学会総会・学術集会
浜松医科大学 医学部
兵庫県こころのケアセンター
兵庫県立大学 地域ケア開発研究所
広島大学 大学院医系科学研究科 公衆衛生学プログラム
福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター

■ 本ガイダンスの原本

英語版:2021年10月発行 https://apps.who.int/iris/handle/10665/345591
日本語版:2022年10月完成予定

■ 普及プロジェクトの協力者:下記[別紙2]を参照ください。

 

【プロジェクト発足の経緯】(下記[別紙1]でもご覧いただけます)

自然災害や感染症流行等をはじめとした健康危機は、都市化や高齢化、グローバル化の中で、その数や被害が増加傾向にあり、その対策が持続可能な開発目標(SDGs)においても複数の分野にわたる世界の重要課題として取り組まれています。2015年に仙台で開催された第3回国連世界防災会議では、災害対策における保健医療の重要性が大きく取り上げられ、被災者の命や健康、暮らしを守ることが、成果文書である仙台防災枠組2015-2030では防災の目的のひとつとして明記されました。こうした文脈の中で、世界保健機関(WHO)は、災害対策における保健医療分野の政策や事業をよりよいものにするべく、災害医療や災害看護、公衆衛生や保健医療政策を包摂する「災害・健康危機管理(Health Emergency and Disaster Risk Management(Health EDRM))という概念を提唱して、関連する研究領域における世界の専門家と連携して、政策提言につながる科学的エビデンスの向上に取り組んでまいりました。

2018年には世界の研究者の協働連携を推進する「災害・健康危機管理に関するWHOグローバル・リサーチ・ネットワーク」を発足し、2019年にはそのはじめての代表者会議を兵庫県淡路市で開催して、世界各地域を代表する専門家を招集して本研究領域における主要研究課題を設定しました。こうした取り組みの中で繰り返し強調されたのが、現場の救援ニーズへの対応を第一とする災害対応の中で、どのようにして未来の対策に向けた情報収集や研究活動を行うかという方法論が定まっていないという課題でした。研究手法の標準化と改善は、本領域全体の研究の質と量を向上し、未来の対策をよりよいものにする基礎となりますが、そのためには世界全体の研究者の協働と連携、そして同意形成が不可欠になるため、世界全体での具体的な取り組みが実施できなかったのです。

この結果を受けて、グローバル・リサーチ・ネットワークの事務局を務めるWHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)は、世界を代表する100名超の専門家と協力して、本領域初となる「災害・健康危機管理の研究手法に関するWHOガイダンス」を、同領域における研究の計画、実施、報告までを解説する6章43節の包括的なガイドとして編纂し、2021年秋に発行しました。同ガイダンスでは、日本の災害対策の歴史と経験を世界の対策の参考にするべく、導入となる第1章において日本の対策活動の推移が紹介されました。この章では、阪神淡路大震災や東日本大震災の経験からうまれた医療、看護、公衆衛生、その他様々な領域での取り組みが事例として紹介され、執筆には、東北大学災害科学国際研究所、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、国立保健医療科学院、国立災害医療センター、広島大学、兵庫県こころのケアセンター、国立精神神経医療研究センター、兵庫県立大学(執筆者紹介順)など、各分野を代表する研究機関の専門家が携わりました。

研究手法のガイドがはじめて発行されたことを受けて、WHOは、世界における研究活動のさらなる発展を進めるべく、今回、研究教育機関や現場における本ガイダンスの使用と普及とを進めるグローバルイニシアティブを実施します。日本においても、執筆に携わった専門家および、災害医療や災害看護、公衆衛生をはじめとした災害対策や健康危機管理に関わる様々な専門家と協力して、本ガイダンスの和訳と国内での普及活動を進めます。普及活動においては、いくつかの章のオーディオポッドキャスト、ビデオレクチャーの公開や、ウェビナーの開催などが計画されています。

このプレスリリースは、今後の日本におけるさらなる研究活動の推進を目指し、今月広島において日本災害医学会の年次総会が開催される機会をとらまえて、この国内普及プロジェクトの発足を、参画する専門家と連名で報告するものです。