2022-10-21

PASH (高齢化による保健医療制度の財政的持続可能性ギャップ) シミュレーター

人口高齢化が世界的に進むなか、高齢者の増加により保健医療制度の持続可能性を脅かす課題が生じることが懸念されています。こうした懸念は、多くの研究に裏付けられているように、人口高齢化に伴いサービスへのニーズが高まると想定されていることに由来していますが、一方で保健医療の財源と支出のギャップについてはそれほど研究されていません。財源と支出の両方に対して人口年齢構成の変化が及ぼしうる影響をよりよく検討し、保健医療財政モデルの持続可能性を高めるためには、何が必要とされているでしょうか。

WHO神戸センターのサラ・ルイーズ・バーバー所長は学術誌『Health Policy』に新たに掲載された論文で、この分野の主要な専門家らとともに「高齢化による保健医療制度の財政的持続可能性シミュレーター」を提案しました。新たなツールであるPASHシミュレーターは、人口年齢構成の変化が保健医療の財源と支出に与える影響を同時に予測し、両者のギャップを経時的に示すことで、政策立案者がより系統的にその影響について理解を深める助けとなります。

この論文では、さまざまな保健医療財政制度を示すヨーロッパと西太平洋地域の国々のデータに基づいた6つの国別シナリオを用いて、PASHシミュレーターを実証しています。著者らは結論として、人口高齢化の課題に対処するために、よりバランスのとれた政策オプションを政策決定者に促すためには、保健医療の財源と支出の両方に等しく注意を払う必要があると述べています。この新たなツールは財源と支出のギャップおよびそれに影響を及ぼす構造要素を示すことができるため、政策立案者は財源不足に対処するための幅広い政策オプションを得られるようになります。