2019-09-16

敬老の日」に寄せて WHO神戸センター所長からのメッセージ

 

日本では「敬老の日」(毎年9月の第3月曜日、本年2019年は9月16日)に、高齢者を敬ってその長寿を祝います。WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター・WKC)は、その最大の支援者であり、この素晴らしい伝統の発祥の地である兵庫県とともにこの日を祝えることを大変喜ばしく思います。

とりわけ本年は、日本老年学的評価研究(JAGES)が取り組む健康な高齢化と健康の公平性の推進に関する研究が、その活動開始から20年を迎えた節目にあたります。WKCはこの10年にわたり、さまざまな機会にこの研究プロジェクトをサポートしてきました。JAGESは、社会福祉、公共政策、保健科学、評価研究に焦点をあてた横断的な研究プロジェクトとして1999年に活動を開始しました。わずか2自治体から始まった調査は、2016~2017年には全国41市町村にその規模を拡大し、高齢者約20万人がその研究対象となりました。

JAGESは、高齢者の健康増進に関して良質な科学的エビデンスを提示してきました。研究から得られたエビデンスは、人々の健康増進を目指す政策や実施に取り組む政策立案者に有益な影響を与えてきました。

たとえば、大規模調査で得られた知見は、介護に関連する国内の政策の改善に継続的な貢献を果たしています。具体的には、国の健康増進政策「健康日本21(2013~2022)」や介護関連の新たな政策の策定があげられます。

地方自治体の複数の部局や非公共部門の利害関係者と協働することで、本研究が関わる分野は健康関連以外の領域にも広がっています。国土交通省やスポーツ庁などの省庁におけるガイドライン策定にもその情報が役立てられています。

さらに特筆すべきは、この研究成果が世界で広く認知されている点で、2004年以来50を超える学術賞を受賞、学術雑誌への論文掲載は400にものぼる実績を有しています。世界中が日本の経験から学んでいるのです。日本で得られた教訓を世界に発信するうえで重要な役割を担えることをWKCは光栄に思います。

身体的または精神的な機能が衰え行く状況にあっても高齢者の社会福祉の向上は可能であることを、この敬老の日に、政策立案者の皆様には再認識していただきたく思います。地域レベルの高齢者向けプログラムは、高齢者に活動的な生活を促し認知症を防ぐと考えられることから、予防プログラムの対象は、機能低下リスクのある高齢者だけでなく高齢者全体とすべきでしょう。

地域においては、良好な関係を築くことが、皆が健康で長生きすることに役立ちます。手を差し伸べることで、孤立している高齢者がコミュニティの一員となる手助けができます。地域の取り組みとして、高齢者が集まって仲間との時間を楽しむための場所をつくることも効果的でしょう。

個々の高齢者にとっては、周囲の人との日々の交流が健康で活動的な暮らしに役立ちます。たとえば、誰かと食事をともにすることも幸せや健康につながります。ご近所づきあいも健康に一役買ってくれることでしょう。

高齢者の方々に敬意を表し、社会への多大なるご貢献に感謝申し上げます。若い世代の方々には、ぜひ高齢者の知恵と経験に耳を傾け、日常生活の支援をしていただきたいと願います。