2022-12-01

『Health Research Policy and Systems』論文特集にWHO神戸センター助成研究10件の成果を発表

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)が助成した10件の査読付き論文が、学術誌『BMC Health Research Policy and Systems』の論文特集に掲載されました。これらの論文では、急速な高齢化に対する保健医療制度の対応に関して新たな知見を提供しています。

高齢者の人口は世界で増加の一途をたどっています。世界の総人口に占める65歳以上人口の割合は、2022年の10%から2050年には16%に上昇すると予測されています。その結果、65歳以上人口は2050年までに5歳未満人口の2倍以上になります。[1] このような人口構成の大きな変化には、確かな研究のエビデンスをもとにした保健医療・社会政策の大転換が必要となります。年率3%を超えて急速に高齢化が進むアジアやアフリカの低・中所得国でも、2050年の高齢者の割合はまだ5~13%と比較的小さいことから、このような変化には対処できると考えられます。

『Health Research Policy and Systems』の論文特集では、カンボジア、日本、ラオス人民民主共和国、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国で得た知見を取り上げています。これらの多様な国における研究では、人口高齢化の観点からユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて取り組むなかで各国が直面する課題を反映しており、保健医療サービスの断片化、高齢者ケアの利用やアクセスが限られている状況、ケアを利用する上での経済的障壁、保健医療および長期的ケアの持続可能な資金調達と財源確保などが含まれます。

これらの研究プロジェクトの助成は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の研究者や組織を対象とした競争的プロセスを経て選ばれました。これは2017年の「日・ASEAN保健大臣会合~ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と高齢化」においてWHO神戸センターが行った公約の一部として実施されました。

今後の保健医療政策に欠かせない洞察が得られた研究は次の通りです。

当センターのローゼンバーグ・恵美、冨岡 慎一、サラ・ルイーズ・バーバーによる論説はこちらからお読みいただけます。

BioMed Central(BMC)から出版された『Health Research Policy and Systems』論文特集に掲載の論文全10件の一覧はこちら

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[1]  United Nations Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2022). World Population Prospects 2022: Summary of Results. UN DESA/POP/2022/TR/NO. 3.