Q&A(COVID-19):大規模集会(マスギャザリング)
どの程度の大きさの会議やイベントが「大規模集会」とされるのですか?
オリンピックやワールドカップのような注目度の高い国際的なスポーツイベントや、ハッジ(メッカ巡礼)などの国際的な宗教行事が大規模集会と見なされます。ただし、注目度の低い会議やイベントであっても、WHOの定義する大規模集会にあたる場合があります。集まる人数が非常に多く、イベントの計画や対応に当たる開催地域の保健医療体制のリソースに負担がかかる可能性がある場合、そのイベントを「大規模集会」と考えます。参加者数とあわせて、イベントの開催場所や開催期間も考慮する必要があります。例えば、保健医療の体制が非常に限られている小さな島国で数日にわたってイベントが開催される場合は、参加者が数千人に過ぎなくても、現地の保健医療体制に大きな負担となる可能性があり、「大規模集会」と考えられます。逆に、リソースが充分にあり大規模な保健医療体制が整っている国の大都市で、数時間のみイベントが開催される場合は、「大規模集会」には該当しないこともあります。
WHOは、COVID-19を考慮し、国際的な大規模集会をすべて中止するように推奨していますか?
いいえ。国際的な大規模集会にもそれぞれ違いがあるため、イベントを中止すべきかどうかを決定する際に考慮すべき要素も異なります。計画されている国際的なイベントの変更においては、開催に伴うリスクとそのリスクに対して取り得る対応、および開催計画の徹底度合いに関して、充分な評価を行った上で決定する必要があります。この評価をする際は、イベントに関わる全ての関係者、特に開催を予定している国や地域の保健当局を含めるべきです。そのイベントが、開催地域の保健医療制度や救急医療サービスに与えるかもしれない負担の大きさや、その負担の程度が現在の状況において許容されるのかなどを評価するのは、現地の保健当局やその関係者が最も適しています。
市中感染が発生している国では、人が集まり病気が拡散する可能性のある大規模集会の延期または削減・縮小を真剣に検討するとともに、人々の間の物理的距離の確保について推奨されるベストプラクティスを実施すべきであるというのがWHOの見解です。大規模集会の開催の決定にあたっては、WHOのツール、特にマスギャザリングにおけるCOVID-19のWHOリスクアセスメントツール:一般的なイベントの他、マスギャザリングにおけるCOVID-19のWHOリスクアセスメント、リスク軽減チェックリストの使い方、COVID-19流行下における大勢の人が集まるイベント等の開催に関するガイダンス、COVID-19に配慮したマスギャザリングにおける検討事項などが役立ちます。
移動制限やそれ以上の対策を国が取っている場合、WHOのリスクアセスメントは適用できません。ただし、移動制限解除後の大規模集会の再開や実施に向けたプロセスを検討する場合は、WHOが提供するCOVID-19の流行下における大規模集会のリスクアセスメントツールなどを用いて、リスクアセスメントを確実に行った上であらゆる決定がなされることが重要です。
許容可能なリスクか否かを評価する場合に、主催者や保健当局はどの要素に注目すべきですか?
COVID-19の市中感染がまだ発生していない国において優先して考慮すべき点は、計画中の大規模なイベントによりウイルスがその国に持ち込まれて定着するリスク、またイベントの参加者が母国にウイルスを持ち帰り、世界的な感染拡大をさらに進めるリスクが実質的に増加するかどうかです。このような評価を行う際、主催者および国や地域の保健当局は、COVID-19の輸入感染症例のリスクが必然的に国際渡航と関わっている点を認識しておく必要があります。また、ゼロリスクを目指すことは現実的でも、望ましいことでもないと認識しておかなければいけません。大規模な集会を開催すべきかどうかについて主催者や保健当局が決定を下す際には、許容可能なリスクは何か、またリスク軽減のためにどのような追加策を実行すべきかを判断する必要があります。
COVID-19が既に市中感染し始めている国で考慮すべき重要な点は以下の通りです。
- 地域や国におけるウイルス伝播を抑制するか、少なくとも減速させることを目指す。
- 他国からの参加者がCOVID-19に感染するのを予防する。
いずれの場合も、COVID-19に関してわかっている特徴、例えば重症度、感染力、伝播を防止・抑制するための対策の有効性という点から、リスクを考慮すべきです。また、地域の保健医療制度にすでにかかっている負担と、大規模集会を開催した場合に追加でかかる可能性のある負担についても考慮する必要があります。
開催判断をする際に注目すべき点についての詳細なアドバイスは、2020年2月14日付のCOVID-19流行下における大勢の人が集まるイベント等の開催に関するガイダンスをご参照ください。
計画中の大規模集会に関するCOVID-19のリスクを評価できる専門家が主催団体にいない場合はどうしたらいいですか?
大規模集会の開催が予定されている国や地域の保健当局であれば、健康に関するリスクアセスメントをどのように実施すべきかわかっている可能性が高いです。開催国にWHOの国事務所があれば、そこから専門家による支援を受けられるかもしれません。該当する地域のWHO地域事務所も同様です。WHOの地域事務所の名称や連絡先についてはこちらをご参照ください。
国際的な大規模集会の開催に踏み切る場合、参加者のCOVID-19感染リスクを減少させるために何ができますか?
イベントでは手洗い、咳エチケット、および周囲の人との距離の確保を奨励してください。イベント中の滞在先も含め、参加者全員の緊急連絡先を必ず把握してください。イベントの参加者が万が一COVID-19に罹患した場合に迅速に接触者追跡ができるように、その情報が地域の保健当局と共有されることを参加者に明言しておかなければいけません。1名あるいはそれ以上の参加者がCOVID-19の症状を示した場合に備え、イベント主催者は合意済みの対策計画を用意しておく必要があります。これには、体調不良となった人の速やかな隔離と地域の保健医療施設への安全な移送についても含める必要があります。また、ビデオやテレビ会議による参加も可能にしたり、COVID-19の症状(咳、熱、倦怠感)のある参加者を会場入り口でスクリーニングしたりするなどして、イベントの参加人数を減らせるかどうかについても考慮すべきです。参加者個人が自身や大切な人をCOVID-19から守る方法についてのアドバイスは、WHOのウェブサイト、またはWHO神戸センターのウェブサイトをご参照ください。
国際的な大規模集会における健康リスクの評価や管理についての詳細なアドバイスは、どこで得られますか?
大規模集会をどのように計画すべきかについては、WHOがガイダンスとトレーニングコースを作成しています。このガイダンスとトレーニングはいずれも、どのようにリスクアセスメントを実施し、現地の保健当局と協力して健康リスクに対する計画を立て、健康リスクを管理するかについての情報を提供しています。参加者個人が自身や大切な人をCOVID-19から守る方法についてのアドバイスは、こちら(英語)またはこちら(日本語)をご参照ください。
アスリートやその他の認定参加者を競技から除外する基準はどうあるべきですか?
選手を競技から除外し、適切な場合には大会への復帰を許可するためには、合意を得た健康基準が必要です。この基準は、一般の住民のための公衆衛生ガイドラインと一貫性を持つ必要があり、リスクの高い感染地域への最近の渡航、COVID-19と診断された人または疑いがある人との最近の接触、および現在の症状などのリスクプロファイルを基とします。体調不良の選手は、イベントに参加するべきではありません。
選手の検査について、地域の公衆衛生サービスとの間で合意された際は、検査の供給量、検査結果を受け取るまでにかかる時間、主催国の保健サービスの余力などを検討する必要があります。
職員/審判を大会から除外し、適切な場合には大会への復帰を許可するための基準は、職場に関するガイダンスおよび基準に従うべきです。職場でのCOVID-19感染予防対策をご参照下さい。
全ての選手やその他の認定参加者の出席に関わる要件を整備する必要があります。
- 健康チェック:渡航の申告と体温チェック
- 接触者追跡のプロトコルの準備(同席者の全ての詳細情報を含む)
- 人と距離を置くこと(物理的距離の確保)
- 衛生上の全ての注意事項の遵守
選手や他の認定参加者(競技場のスタッフ、医療チーム、選手と密に接触する職員など)が体調不良や症状を呈した際の隔離手順は、イベント開催前に明確に文書化し、予行練習を行う必要があります。特にコンタクトスポーツなどのリスクが高いスポーツにおいて重要です。
イベント主催者は、各国の政府が要求する入国審査に加えて、会場でのスクリーニングを手配するべきでしょうか?
入退場時の体温のスクリーニングだけでは国際的な感染拡大を阻止するための有効な手段とは言えません。感染者が潜伏期間である、病気の初期の段階で明らかな症状を示さない、また解熱剤を使用して発熱を紛らわせていることなどがあるためです。さらにこのような対策は、ほとんどメリットがないにもかかわらず、多額の投資を必要とします。より効果的なのは、旅行者に感染予防のための推奨事項を伝え、到着時に旅行者の連絡先とともに健康状態の申告書を集め、適切なリスク評価と入国した旅行者の追跡ができるようにすることです。入国地点(国際空港、港、駅)で具合が悪い旅行者の管理をご参照下さい。
また、イベントの主催者は、上記を実施するための体制や、疑い例の管理についても考慮する必要があります。しかし、スポーツ団体は、主催者の医療の面での対応能力を含めたイベントのリスク評価に基づいて、政府が定める入国地点の要件よりも厳しい参加基準を設ける場合があります。
イベント参加に対する追加のスクリーニングのための質問表は、管轄の公衆衛生機関と調整する必要があります。選手・関係者・観客・イベント参加のために多くの国から来訪する可能性がある大勢の人など、異なるグループをどのように管理するかの検討が必要とされます。開催国とWHOの渡航に関するアドバイスに従うとともに、これらの人々の渡航歴に関する正確な情報を入手することが困難であるかどうかを評価する必要があります。
イベント主催者はCOVID-19検査を提供すべきですか?
いいえ、検査は地域の医療機関や国の指針に基づいて実施してください。体調不良や症状のある人をイベントに参加させるべきではありません。イベント前に余裕を持って地元の公衆衛生当局と密に連携し、事前に合意した疑い例の定義に合致した選手・関係者・観客の検査を促してください。
主催国の保健サービスが自国の感染症対応に加えて、イベントで発生するCOVID-19やその他の公衆衛生上の問題について対応する余力がどの程度あるのかを考慮してください。
COVID-19に関連して、イベント主催者が選手・関係者・観客に対して実施または追加できる予防はありますか?
選手村では、物理的距離の確保を含めた、一般の人々に対する標準的な予防に関するアドバイスに従ってください。
また、以下も促進してください。
- 参加者全員とその周囲に向けたCOVID-19と感染予防策についての看板やデジタルメッセージ
- 会場内や個人スペースの表面の定期的な消毒と清掃
- 備品や機器を共有しないことや、使用者ごとに機器を清掃すること
主催者は、チェックリストを作成することを推奨します(手指用消毒剤の設置や衛生設備などを含む)。上記のイベント主催者向けのリスク軽減チェックリストをご覧ください。
会場までの公共交通機関によるリスクは何ですか?
地域の公共交通機関で物理的な距離の確保ができていない場合、その交通機関を常に利用している住民は継続的なリスクにあります。それと比較すれば、イベントの参加者や観客が大都市の公共交通機関を利用した際に追加されるリスクは、大きなものではない可能性があります。