Q&A(COVID-19):デキサメタゾン

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19):デキサメタゾン

2020年10月16日 改訂版|Q&A

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デキサメタゾンとは何ですか?COVID-19に効果がありますか?

デキサメタゾンは抗炎症作用や免疫抑制作用を持つ副腎皮質ステロイドで、さまざまな疾患に使用されています。

イギリスの全国的臨床試験であるRECOVERY試験では、COVID-19の入院患者を対象とし、極めて重症の患者への有効性が確認されました。

WHOに報告された予備的な調査結果(現在は査読前の原稿として利用可能)によると、人工呼吸器を装着している患者の死亡率を約3分の1減らし、また酸素のみを必要とする患者の死亡率を約5分の1低減させる(訳註:つまり死亡率がそれぞれ3分の2、5分の4になる)ことが示されています。

RECOVERYに参加した全ての患者にデキサメタゾンが投与されましたか?

対象となる患者は、いくつかの治療群に無作為に割り当てられました。デキサメタゾンは、そのうちの1つの治療群に、経口(液剤または錠剤)または静脈内注射で1日1回6mgが10日間投与されました。

妊娠中または授乳中の女性患者は、プレドニゾロン(作用がより弱いコルチステロイド)40mgの経口投与に、無作為に割り当てられました。

WHOはCOVID-19の患者にデキサメタゾンの使用を推奨していますか?

2020年9月2日に、WHOはCOVID-19の治療に対するデキサメタゾンやその他のコルチステロイドの使用に関する暫定的なガイドラインを発表しました。本ガイドラインは、WHOおよび国際的な専門家や研究者からなる委員会によって作成され、7つの臨床試験から得られたエビデンスに基づいています。

ガイドラインでは、次の2点を推奨しています。

(訳註:以下、プレドニゾンは国内未承認薬です。プレドニゾロンとプレドニゾンは非常に似た薬ですが、エビデンスの厳密性のため、プレドニゾンでの記載を行っています)

推奨1:
WHOは重症、そして重篤なCOVID-19患者の治療には、コルチステロイド(デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾンなど)の経口投与または静脈内投与を強く推奨しています。

推奨2:
WHOは、重症でないCOVID-19の患者にはコルチステロイドを使用しないよう勧告していますが、患者がすでに他の疾患でこの薬を服用している場合は除きます。

投与の時間や期間は1日1回、7-10日間とします。

1日の投与量はデキサメタゾンで6mgとし、ヒドロコルチゾンでは160mg、(投与例としては8時間ごとに50mgまたは12時間ごとに100mg)、プレドニゾン40mg、メチルプレドニゾロン32mg(6時間ごとに8mg)とします。

専門家の委員会は、重症または重篤なCOVID-19患者の死亡率が8.7%と6.7%減少するという中等度の確実性を持つエビデンスに基づいて、この推奨を行いました。

デキサメタゾンはWHOの必須医薬品リストに入っていますか?

はい。デキサメタゾンは1977年以降、いくつかの適応症に対して、複数の剤形がWHO必須医薬品・診断薬リスト(EML)に登録されています。2013年より、デキサメタゾン(注射剤)が、新生児の呼吸窮迫症候群に適応となりました。プレドニゾロンも1984年に、EMLに登録されました。

デキサメタゾンとプレドニゾロンは、以下の適応症でEMLに登録されています。

  • アレルギーや過敏症による疾患(種類を特定せず)
  • 緩和ケアにおける悪性腫瘍による疼痛や浮腫
  • 吐き気と嘔吐
  • いくつかの血液組織癌に対する治療のプロトコールの一部として

これらの適応症は幅広く、サイトカインによる肺障害や、重度の急性呼吸器感染症(ウイルス性肺炎など)に伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の予防・治療にも使用されます。また、どちらの薬剤も小児にも推奨されています。

デキサメタゾンはWHOによる事前認承を得ていますか?

はい。スペインのKern Pharma SL社製のデキサメタゾン注射液4mg/ml(1mlアンプル入り)が、COVID-19ではなく、HIV/AIDSに関連する疾患管理への使用において事前認証を得ています。

別のデキサメタゾン注射剤も現在評価中です。

自社製品の事前認承に興味があるメーカーは、事前認証チーム(prequal@who.int)に詳細をお問い合わせください。

RECOVERY臨床試験ではどのくらいの量を使用したのですか?

デキサメタゾンはRECOVERY 臨床試験において、経口(液剤または錠剤)あるいは静脈内投与で、10日間、1日1回6mgで使用されました。

妊娠中または授乳中の女性には、デキサメタゾンの代わりにプレドニゾロン40mgの経口投与(またはヒドロコルチゾン80mgを1日2回静脈内投与)を行いました。

・ 注:臨床的状況に応じて、2つの投与経路を切り替えることが認められています。

出典: RECOVERY [V6.0 2020-05-14] ISRCTN50189673 EudraCT 2020-001113-21 - 9頁(全35頁)

デキサメタゾンの典型的な副作用は何ですか?

デキサメタゾンは一般的に安全です。特に重症の肺炎患者では良好なリスクと有益性の特性が示されていますが、重症ではない患者では有益性は顕著になりません。治療期間が短いため、高用量であってもコルチステロイドは重篤な副作用を伴いません。潜在的に高い血糖値(高血糖)を示すことがあっても一時的です。

長期間の使用(例えば2週間以上の使用)では、緑内障・白内障・体液貯留・高血圧・心理的影響(気分変動、記憶障害、混乱、イライラなど)・体重増加・感染リスクや骨粗鬆症リスクの増加などの有害事象が発生する可能性があります。

繰り返しになりますが、これらの有害事象は全て、短期間の使用では発生しないと言えます(糖尿病を悪化させる高血糖を除く)。

RECOVERY臨床試験で使用された用量は、通常使用される用量と比較してどのようなものでしょうか?

RECOVERY 臨床試験では、デキサメタゾンを1日1回6mgで10日間、経口または静脈内投与しました。これより高用量のデキサメタゾンは、他の適応症で長期間使用されていて、安全であることが知られています。

ステロイドは、高齢者・小児・妊婦にも使用できますか?

小児や高齢者にも使用できます。妊婦の場合、RECOVERY 臨床試験ではデキサメタゾンの代わりにプレドニゾロンの経口投与やヒドロコルチゾンの点滴静注が行われました。ステロイドは幅広い地域で使用されています。

デキサメタゾンは世界中で入手できますか?

はい。デキサメタゾンの特許は切れていて、様々な剤形(錠剤、液剤、注射剤など)で長年にわたり販売されています。ほとんどの国で入手可能です。この製品のメーカーは複数あります。1社がすでにWHOからの事前認証を受けていて(スペインのKern Pharma社)、もう1社は評価中です。

最も一般的な剤形は以下の通りです。

  • 錠剤:0.5mg, 0.75mg, 1mg, 1.5mg, 2mg, 4mg, 6mg
  • 内服液:0.5mg/5ml, 20mg/5ml, 1mg/ml(濃縮製剤)
  • 注射用混濁液:4mg/ml, 20mg/5ml

近年、本製品が不足していることが時折報告されています。全ての患者の治療ニーズを満たすために、安全で効果的、高品質かつ安価な製品を入手できるようにするためには、COVID-19への使用量と製造能力の予測を迅速に把握し、既存の適応症への影響や代替的な治療の必要性を評価することが重要です。

APIサプライヤーは何社ありますか?

世界には多くの医薬品有効成分(API)メーカーがあり、この製品の生産キャパシティは大きく、また多様化しています。これまでに、アジア・北米・欧州から10社の優良認定サプライヤーを確認しています。

デキサメタゾンは手ごろな価格ですか? 一回の治療費はいくらですか?

デキサメタゾンの特許は切れていて、一般的な支持療法の選択肢であり、概ね安価です。WHOが2016年と2019年に低・中所得国の様々な医療機関を対象に行った調査によると、デキサメタゾンは、4mg/mlの注射用アンプル1本あたり中央値0.33ドル(範囲:0.13~3.5米ドル)で患者に提供されていました。国連の主要な調達先では、デキサメタゾンの4mgの注射用アンプル1本あたり中央値0.092ドルで供給できる可能性があります。

輸入規制はありますか?

デキサメタゾンは世界中で認可されているため、制限はないと思われます。

規格外・偽造医薬品(SF医薬品)のリスクとは何ですか?

WHO Global Surveillance and Monitoring Systemのデータベースには、偽造されたデキサメタゾンの記録が21件あり、最新のものは2020年2月の東地中海からの報告です。

本医薬品が広く知られるようになり、規格外・偽造デキサメタゾン製品の事故が発生することが予想されます。これは、ヒドロキシクロロキンがCOVID-19の治療薬として期待されていた時に、偽造のクロロキン製品が報告された経験に基づいています。

全てのサプライチェーンにおいて警戒心を高め、あらゆる調達活動の中で注意を払うことが不可欠です。加盟国および規制当局は、規格外・偽造デキサメタゾンの事例が発生した場合、速やかにWHO global surveillance and monitoring systemに報告することが推奨されます。

世界の製造能力はどのくらいですか?

認可のある品質保証製品の生産者を決定する作業が進行中です。追加の製造能力については、さらに評価を行う予定です。