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神戸市における新型コロナウイルス感染症流行期の行動変容とその健康への影響に関する分析

背景
パンデミックの初期段階では、世界中の多くの人々が、新型コロナウイルス感染症への恐怖、移動制限、医療費の負担などの理由から、必要な医療を受けることができませんでした。 日本では、身体活動、社会活動に関して頻度の減少などのライフスタイルに変化のあった高齢者が多く、そうした変化によって健康状態を悪化させるリスクが高まった可能性が研究で示されています。しかしながら、そうした新型コロナウイルス感染症の流行により引き起こされた行動変容が、健康に与えた影響の調査研究は世界的にも日本国内においても不十分です。

目的
新型コロナウイルス感染症のパンデミック前後における、兵庫県神戸市の20歳以上の人口の行動変化と、これらの行動変化が同集団の健康に及ぼす影響について解明する。

方法

ミャンマーにおける人口高齢化をふまえたUHCの段階的実現のためのデータの有用性と政策に関する分析

背景

ミャンマーは、国全体のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の段階的な実現を公約しています。65歳以上の人口は、2035年には現在の2倍以上におよぶ人口の9.8%に達すると予測されています。したがって、UHCおよび人口の高齢化に関連する政策や利用可能なデータの見直しが不可欠です。

目標

次期国家保健計画(2022-2025)において人口高齢化のニーズに対応するための有効なデータや政策文書を分析し、2030年に向けてUHCに関する将来計画を立案する。

研究手法

  1. 人口高齢化を含むUHC関連の課題を取り上げた国内外の既刊文献および灰色文献のスコーピング・レビュー

  2. 高齢者の保健ニーズやUHCに対する影響に関して、あらゆる政府部門の利用可能なデータ、計画、政策、法案を、特定、マッピング、評価

  3. 主要な政府・非政府ステークホルダーおよびサービス提供者からの聞き取りおよび協議

研究結果

カンボジアにおける持続可能なプライマリ・ケアに関する研究

背景

人口の高齢化は世界中で急速に進んでおり、それにともなって非感染性疾患(NCD)の有病率が上昇しています。NCDやそのリスク要因に対応した低コストで持続可能なサービスが提供できるモデルを採用し、NCD関連の障害や疾病を管理できるようにすることにより、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取り組みを促進できると考えられます。

カンボジアにおける平均余命の大幅な延伸は、1990年代初頭以来の医療改革とともに進んだ経済発展によりもたらされました。 しかし、過去15年間で総死亡率は減少しましたが、NCDに起因する死亡と障害の割合は急激に増加しています。

NCDの予防と管理のための多様な利害関係者による国家戦略的計画は、プライマリ・ケア(一次医療)サービスにおいてコミューンレベルの保健センターが担う役割を浮き彫りにしました。 しかし、今のところ、そうした保健センターの活動は、そのほとんどが母子保健、感染性疾患、基本的な保健教育や健康促進サービスなどに限られ、NCDのサービス提供はほとんど行われていません。保健センターにNCDサービスを確立するにあたってガイダンスを提供するための取り組みが進む一方、こういった活動にはさらに、地域の状況に合わせた調整が必要とされます。

シンガポールにおける高リスク高齢者の強化型ケア共同体(ECoC)モデルの評価

背景

高齢者のための保健医療ケアが不適切であれば、高齢患者が不用意に急性期医療施設でサービスを受けることになり、患者本人や家族、医療保険制度が負う医療費を押し上げる傾向がみられるとともに、最適なレベルの医療が提供されない可能性があります。不必要な再入院や救急診療および外来受診を防ぐことは、高齢者保健医療の持続性を高めるために重要です。

フィリピンとベトナムの高齢者に良質のサービスを提供するための専門職連携トレーニング

背景

専門職連携教育(IPE)では、2つ以上の異なる専門職の人達が相互に学び合うことを通じて効果的な協力関係を構築し、健康アウトカムを向上させることができます。人口の高齢化が進む中、高齢者に適切なケアを提供できる医療人材を育成する上で、IPEは重要な役割を担っています。WHOは、高齢者関連も含めた地域の医療ニーズに対応できる連携型医療人材の育成には、IPEが欠かせないステップであると認識しています。高齢者福祉の増進に対する強い政治的コミットメントに加えて、人材開発は、社会的サービスと保健医療サービスを統合し、急速に高齢化が進むフィリピンとベトナムにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの段階的な実現に寄与します。

目標

フィリピンの保健医療および社会的ケア従事者を対象とした職能に基づくIPEプログラムを開発すること。これにより、ベトナムや他の低・中所得国での利用に適合させ、社会的サービスと保健医療サービスをより適切に統合することが可能になります。

研究手法

ラオス人民民主共和国における認知機能障害の有病率に関する評価

 

背景

ラオス人民民主共和国における認知機能障害の有病率は明らかになっていません。ラオス熱帯医学・公衆衛生研究所(TPHI)は、ラオス語の認知機能評価ツール(改訂版長谷川式簡易知能評価スケール・HDS-R)の検証を実施しました。HDS-Rは、1974年に日本の医師 長谷川和夫氏により開発、1991年に改訂された認知機能の評価ツールで、日常の臨床現場で簡便に使えるスクリーニングツールとして日本で広く使用されています。 HDS-Rは、9項目の設問で構成されており、30点満点中、カットオフ値の20点以下は認知機能低下疑いと判定されます[1]。 HDS-Rのラオス語版は、ラオス人民民主共和国保健省下の国立公衆衛生研究所によって2017年に開発および検証が行われました[2]。このツールを用いて実施された調査により、認知機能障害の有病率、介護者が利用できるリソース、認知機能障害に対する地域の体制が把握され、エビデンスに基づく政策立案に役立てられています。

目標

認知症の社会負担軽減に向けた 神戸プロジェクト

高齢化が世界規模で進む中、認知症も急速に増加しています。世界一の高齢社会の日本では、認知症患者数は450万人以上で、軽度認知障害を含めると、800万人以上が認知機能の障害を抱えていると報告されています(2012年、厚生労働省)。

認知症の根本的な治療薬がない現在、少しでも認知機能の低下や認知症の重症化を遅らせるために、早期発見、早期介入の重要性が注目されています。

また、認知症の増加に伴って増大し続ける社会負担(医療、介護、家族の負担)をいかに軽減していくのかが大きな課題になっています。

しかしながら、具体的にどのように認知症を早期発見、早期介入していけば良いのか、それぞれの地域でどのように高齢者を支えて、社会負担を軽減していけば良いのかについては、今後のエビデンスの強化が期待されているところです。

 

背景・目的