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Implementation

2020年4月~ 2021年5月

Implementing partners

代表研究機関: シェフィールド大学
参加研究機関: リバプール大学、大阪大学
主導研究者: Dr Christopher Carroll(シェフィールド大学)、磯 博康 教授(大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座))

Location of research

グローバル

Total Budget
US$ 56,000

背景

国際社会は、持続可能な開発目標ならびに2030年までのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の段階的実現を推進しています。そのため、多くの国では、人口高齢化の状況に応じた手法でその進捗状況を測定しモニタリングするという課題に直面しています。高齢者の多様なニーズにみられる違いや、高齢層と他の年齢層のニーズの違いなど、高齢者のニーズを考慮することが肝要です。このプロジェクトの目的は、人口高齢化の観点からUHCモニタリングの促進を図るにあたり、高齢者のヘルスケアニーズとサービス・カバレッジの公平性を検証するために有益なエビデンスを提示することです。

目標

  1. 概念的および理論的文献のグローバル・スコーピングレビューを実施して、特に高齢者について、サービス・カバレッジにおける公平性を評価するためには何を測定すべきかを特定すること。
  2. 第二の目標として、日本の高齢者のヘルスケアのサービス・カバレッジに関する文献のレビューを実施し、公平性がどのように概念化されているかを把握すること。

研究手法

  • 関連する概念的および理論的文献は、測定基準、モデル/フレームワーク/理論、高齢者、公平性/格差、そして、カバレッジ/利用/アクセス/ニーズのシソーラスとフリーテキストの用語を組み合わせて検索を実施しました。公開および未公開(灰色)の関連文献を特定するために使用したデータベースは次のとおりです:CINAHL(Ovid)、MEDLINE(Ovid)、PsycINFO(Ovid)、Social Science Citation Index(SSCI)(Web of Science)、Global Index Medicus、BIREME、LILACs、SCIELO、CiNii、医中誌Web。日付や言語の検索制限は設けないこととしました。
  • エビデンスベースには、年齢別のフレームワーク、ならびに、高齢者または特定の高齢者グループのみに該当する、また、社会的ケア(継続的なケア)のサービスやヘルスケアサービスを対象とした実証データや文献が含まれました。
  •  データ分析から、高齢者の立場から見たヘルスケアサービスの公平性、アクセス、ニーズについて、また、高齢者に関する公平性のモニタリングで考慮すべきことを示すメタフレームワークを構築しました。データ統合では、政策的含意を究明するために、新しい概念フレームワークの研究結果をどの程度既存の関連政策の枠組に統合できるかについても検討しました。
  • 日本の研究では、国内の書誌データベースであるCiNiiと医中誌Web、および、国際的データベースであるPubMedとWeb of Scienceで検索を実施しました。データの図表化と統合はフレームワークの適応版に基づいて行われ、日本に関連する文献のより細密な分析を可能にしました。

研究結果

  • 世界規模の研究では、グローバルなエビデンスベースを検索した結果、10,517件の文献が検出され、この中から32件の関連文献が研究対象として特定されました。各文献において高齢者のヘルスケアニーズとサービス・カバレッジの公平性がどのように概念化されているかに基づいて、メタフレームワークが構築されました。このフレームワークにより特定された要因は次のとおりです:受容性、手頃な価格、適切性、可用性とリソース、患者の認識、意思決定能力、ニーズ、個人的・社会的・文化的状況、および、物理的なアクセスの容易度。集団としての高齢者の中で、また、高齢者層の内部でみられる、多疾患罹患、複雑なケアの必要性、キャパシティとアクセスに関して生じる問題の割合が大きいことから、これらの要因が、一般的なアクセスフレームワークに比して、本研究により構築されたフレームワークにおいては極めて顕著に把握できることを示しています。
  • 日本の研究では、5,880件の文献が特定されました。そのうち、レビュー対象となった50件の研究は、9つの公平性領域を特定するフレームワークに従って次のように分類されました:経済的格差と手ごろな価格、サービスとリソースの可用性、地理的・地域的格差、文化的・心理的障壁、人種・民族格差、ジェンダー格差、時代・コホート格差、患者の意思決定能力、患者の知識・意識。レビューにおいて、日本の高齢者のヘルスケアアクセスの公平性に関する議論では、主に経済的障壁、サービスの可用性、地理的・地域的格差に関連する問題に焦点が当てられていることがわかりました。

世界的な意義

高齢者のヘルスケアニーズおよびサービス・カバレッジの公平性を測定する方法は開発の途上にあります。本研究により開発されたフレームワークは、高齢者における公平性を測定するためには、一般的なアクセスフレームワークの範囲を広げる必要があることを示唆しています。高齢者の意思決定能力、個人的・社会的環境、併存疾患による複雑なケアニーズなどの指標を取り入れることにより、より正確なフレームワークの構築が可能になります。本研究により開発された概念フレームワークは、高齢者の医療・社会的ケアにおける未充足のニーズを定量化するための多国間に渡る横断研究および縦断研究に活用されています。

地元関西にとっての意義

関西地域の高齢者を対象にヘルスケアのアクセスおよびカバレッジの格差を調査した研究はほとんど見られません。ただし、一部の研究やデータベースには、関西地域の府県や市町村と他の地域の自治体との比較が認められます。このような既存の研究やデータの分析を進めることにより、関西地域において、高齢者への対応を含め、サービス・カバレッジやヘルスケアアクセスの公平性に関してより正確な把握が可能になります。本研究の結果を継承して、WKCは、他の年齢層や日本国内の他の地域との比較による、関西地域の高齢者における保健医療による経済的困窮および未充足のニーズを把握するための、複数の全国的な既存家計調査のデータ解析を実施しています。

出版物

Carroll C, Sworn K, Booth A, Tsuchiya A, Maden M, Rosenberg M. Equity in healthcare access and service coverage for older people: a scoping review of the conceptual literature. Integrated Healthcare Journal 2022;4:e000092. doi: 10.1136/ihj-2021-000092

WHO神戸センター:WKCエビデンス・サマリー:高齢者のヘルスケアへのアクセスに関する公平性評価 のための重要な概念. 2021年9月. (下記PDFダウンロード参照)

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