健康な高齢化を支える地域レベルの社会的イノベーション(CBSI)

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実施期間:

Phase 1 - 2014年10月~2015年9月
Phase 2 - 2016年11月~2017年12月

連携機関:

Phase 1 – 中華人民共和国、インド、ポーランド共和国、 南アフリカ共和国、タイ王国、ウガンダ共和国、 ベトナム社会主義共和国の研究パートナー

Phase 2 – RAND Europe (主導研究施設)

研究対象地域:

Phase 1 – 中華人民共和国、インド、ポーランド共和国、 南アフリカ共和国、タイ王国、ウガンダ共和国、 ベトナム社会主義共和国の研究パートナー

Phase 2 – チリ共和国、中華人民共和国、イラン・イスラム共和国、レバノン共和国、ロシア連邦、セルビア共和国、スリランカ民主社会主義共和国、タイ王国、ウクライナ、ベトナム社会主義共和国の研究パートナー

総予算:
610,000 USD

高齢化の進行に伴い、高齢者が直面する多様で複雑なニーズに保健制度としてどのように対応していくかが世界各国の課題となっています。それは先進国においても発展途上国においても同様です。そこで本研究では「健康な高齢化を支える地域レベルの社会的イノベーション(CBSI)」を活用することで、地域レベルでのケアを通じて高齢者の健康とウェルビーイングを向上することができるのではないかと考え、14カ国でケーススタディを実施し、下記の項目について検討を進めました。

1)         CBSIとは何か?

2)         CBSIは健康な高齢化の促進に有効か、費用対効果は高いのか?

3)         どのようなモデルや類型があれば実施現場のCBSIに対する理解を深めることができるのか?

 

結果

本研究では CBSIを高齢者自身が、a)自分や周りの高齢者をケアすることが「できる」という自信につながり、b) ウェルビイングを維持し、c) 社会とのつながりや社会的包摂につながる-地域レベルの取り組みと定義しました。また、本研究においてCBSIの「健康」への影響を検討する上で、「健康」という概念には、身体的、精神的な「健康」からもう少し広範な「ウェルビイング」を含む幅広い概念として使用しました。

CBSIの効果に関しては、以下のことが明らかになりました。

  1. CBSIの健康への影響を検討する中で、個人や地域にとって有益な効果には心理社会的なものが多いことがわかりました。例えば、社会的に孤立してしまった高齢者の地域参加・社会復帰などがあげられます。
  2. 高齢者が参加し(エンゲージ)、自立して活動してもらう(エンパワーする)ことで、CBSIは人間中心のサービスとなることがわかりました。例えば、医療・社会的ケアを受ける際に高齢者や家族が選ばなければならない複雑な選択肢について解説する情報や啓発活動などが役立ちます。また、同様に、CBSIを通じてインフォーマルな介護者(その多くは女性)を支援することができます。

CBSIをさらに大規模に公平に実施していくためには、いくつかの課題が見つかりました。多くのCBSIの運営をボランティアや高齢者に頼ることが多く、身近な保健制度・社会福祉制度との連携は限られています。加えて、戦略的な計画策定や、長期的な財源の確実な調達なども十分ではありません。 また、今回の研究では、調査対象のCBSIのモデルが多岐にわたり、その幅広いモデルを適切にモニタリングし、評価するための手法が確立されていないため、費用対効果の評価には至りませんでした。

今回調査したCBSIは、それぞれが異なる目的やスケール、実施環境、活動内容、ガバナンス制度、財源を持ち、ばらつきがありますが、「エンパワーメント」、「保健・社会福祉制度との連携」、「スケール、規模」、「複雑性」などに基づいてCBSIのモデルを分類することができます。今回の研究では以下のとおり4つに分類しました。

 

今後の方向性

CBSIは多くの場合、地域で求められているサービスを補完する地域レベルの取り組みとして始まります。しかし、多くの部分をボランティアに依存するため、長期的な継続が困難となる場合があります。国や自治体が高齢者のニーズを把握し政策に展開していくためにも、CBSIの保健部門との連携は大変重要となるでしょう。今後の研究ではCBSIの一般化、妥当化、反復化、大規模化の可能性を評価するため、地域レベルのサービス提供におけるイノベーションを重視していきます。  

 

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