介護分野における外国人技能実習のための ICF(国際生活機能分類)を基盤とした 評価ツールの開発

IR_Univ_Hyogo_ICF_final_en
フォトクレジット:
実施期間:

2017年11月~2019年2月

連携機関:

研究テーマ: 日本の継続的な介護システムにおける技能実習のための評価ツールの開発
代表研究機関: 兵庫県立大学
参加研究機関: 国立保健医療科学院(日本)、静岡県立大学、広島大学
主導研究者: 筒井 孝子(兵庫県立大学)

研究対象地域:

日本

総予算:
US$ 85,000

背景

障害や慢性疾患を抱える人の増加にともない、良質で費用効率の高いサービスへのアクセスを確保するためには介護専門職の増員が必要です。東アジアにおいて既に深刻な介護労働者不足に直面するなか、日本では団塊の世代が75歳以上になる2025年までに、さらに38万人の介護労働者が必要になります。この需要拡大に対処するため、各国では外国人の医療労働者の採用数を増やしたり、実習を行ったりしています。例えば、カナダと米国では、介護に携わる労働人口全体のおよそ5分の1を外国人が占めています。

日本は経済連携プログラムの一環として、看護および介護に従事する外国人労働者をインドネシアやフィリピン、ベトナムから受け入れています。最近では、外国人技能実習制度を拡充して、日本の医療介護産業で働くことを希望する外国人医療介護労働者の実習を対象に加えるとともに、国際協力プログラムの一環として、日本の継続介護の分野での経験を諸外国に提供しています。医療介護に携わる外国人労働者の増加にともない、実習生に介護技能を効果的に移転する実習制度の確立が不可欠になっています。

目標

日本の外国人技能実習制度における介護技能の移転を評価するため、国際生活機能分類(ICF)に基づいた評価ツールを開発し、その有効性を立証する。

研究手法

新しい評価ツールは、現行の外国人技能実習制度評価ツールに基にICFを組み込んで構築され、看護師および医師からなる実務者委員会からの意見を取り入れて開発されました。

評価手段の包括性と運用管理に想定される課題を特定し、ツールを適切に修正するため、外国人技能実習制度の関連施設で予備テストを行いました。このツールにより収集された情報は、実習生の介護技能、被介護者に必要な介護、技能実習の背景、および雇用環境です。

実習後、介護技能を習得できたかどうかについては、指導員のサンプルごとに定性的に判定しました。さらに、定性的なフィードバックを得るため、施設管理者、指導員および外国人実習生を対象に半構造化面接を行いました。

研究結果

評価ツールは100か所の施設でフィールドテストを行い、外国人技能実習の指導員300人を対象としました。多くの指導員や職員からは、介護技能実習システムの4つの要素にまたがる38にわたる項目を用いることは困難であることが指摘され、評価ツールは最大でも25項目まで縮小すべきとの提言が得られました。参加者からは、ICFのコンセプトおよび介護能力の格付けとの関連性を明確にするためのガイドブックがあれば有用との提案がありました。さらに、実習生によって基本となる技能水準が異なるため、評価ツールはさまざまな基本水準から実習生の成長を測れるよう、微妙な差異への対応が求められることも分かりました。

意義

本プロジェクトでは、日本の外国人技能実習制度における介護技能の移転を評価するため、ICFに基づいた評価ツールを作成しました。この新ツールはWHOのICFを基に組み立てているため、他国、特に外国人の医療介護労働者の雇用を検討している国においての活用が見込まれます。この研究の成果は、高齢者介護の必要性、また、外国人労働力へのさらなる依存が予測されるなか、急速な人口の高齢化が進む国々においてはとりわけ広く影響を与えることが期待されます。

ダウンロード: