2022-10-09

災害・パンデミック後の長期的なメンタルヘルスの経過に関するシステマティックレビュー

災害後に生じるメンタルヘルスの課題は、いかなる人にも起こり得ます。今年の世界精神保健デーでは、災害の直後だけでなく、災害発生から時間が経過している場合のメンタルヘルスについて、特に子どもや青年にフォーカスし、考えていきます。

WHO神戸センター(WKC)が資金提供した研究により、過去に起きた緊急事態や災害が、現時点での精神衛生に与える影響の大きさが明らかになりました。カーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士が率いる多国籍チームは、英語、中国語、日本語で示された200以上の研究の結果を統合し、うつ病と不安の割合が災害後何年も高いレベルを維持し、特に子供や青年ではその割合が著しいことを示しました。

「平均して、災害の影響を受けた人々の24%が、曝露後の最初の6ヶ月間に臨床的に重要な心的外傷後ストレス症候群(PTSS)を発症し、28%がうつ症状を発症し、23%が不安症状を発症する。」

このように多言語で行われたシステマティックレビューは過去に前例がありません。メンタルヘルスの有病率は経時的に緩やかな改善を示しましたが、有病率の変化はメンタルヘルスのタイプにより異なることが明らかになりました。PTSSの有病率は暴露後数年で有意に改善し、回復の経過に関して年齢による差は観察されませんでした。

しかし、うつ病と不安症状の有病率は災害後何年も高いレベルを維持し、子供と青年は大人と比較した場合、災害直後またその後何年も、有意に高い率を示しています。

「これらの研究結果は、被災地において、子どもや青年の心理的ニーズを配慮した持続可能なメンタルヘルスケアシステムを確立する必要性を示している。」

地震とパンデミックは、心的外傷後ストレス症状(PTSS)の高い有病率と関連しており、この結果は、地震の多い日本には特有なリスクがあることを示しています。そのため政策立案にあたっては、災害の物理的・社会的側面への迅速な対応を検討する必要があります。この研究は、復興の初期段階や災害から数年経過した段階において、PTSS、うつ病、不安症状に対処するために、適切な介入が必要であることを示唆しています。

研究結果はこちらでご覧いただけます。

主席研究員であるカーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士からの説明をご覧いただけます。こちら

Elizabeth A. Newnham, Enrique L.P. Mergelsberg, Yanyu Chen, Yoshiharu Kim, Lisa Gibbs, Peta L. Dzidic, Makiko Ishida DaSilva, Emily Y.Y. Chan, Kanji Shimomura, Zui Narita, Zhe Huang, Jennifer Leaning, Long term mental health trajectories after disasters and pandemics: A multilingual systematic review of prevalence, risk and protective factors, Clinical Psychology Review, Volume 97, 2022.  

  • School of Population Health, Curtin University 
  • Curtin enAble Institute 
  • Asia Pacific Disaster Mental Health Network