2015-10-01

WHO「高齢化と健康に関するワールド・レポート」発表 “healthy ageing(健康な高齢化)”に新しいビジョンを

~“healthy ageing(健康な高齢化)”に新しいビジョンを~

国際高齢者デー(10月1日)にWHOは初めての「高齢化と健康に関するワールド・レポート」を発表しました。人類史上初めて多くの人が60歳以上の寿命を期待できるようになった昨今、現代の高齢者は一世代前の高齢者より良好な健康状態で老後を暮らしていると考える人が多いかもしれませんが、実際はそのエビデンスはほとんどありません。保健システムや介護システムの変革が求められているのです。

60歳にいたるまでに人間は聴力や視力、移動能力など、いろいろな身体能力の喪失や低下を経験します。それに加えて高齢者は複数の慢性疾患(心臓病、脳卒中、慢性呼吸疾患、癌、認知症など)を抱えるリスクが高いとされてます。

本レポートでは“healthy ageing(健康な高齢化)”とは、決して「病気ではない」状態ではなく、高齢者の幸福や住み慣れた環境での機能性に注視しています。また、保健システムや社会システムの抜本的な改革や、社会がどのように高齢者をとらえ、支えていくべきかについても言及しています。また急性期治療を減らし、高齢者が高い機能的能力を維持しながら生きられるように、長期介護のシステムの策定に取り組む必要性について訴えています。

これらを実現し、高齢者が長く社会に貢献していくためには、医療関係者のみならず住宅、交通、雇用、財政などに関わる行政当局を巻き込んだ形での意思決定を行い、高齢者にやさしい街づくりを推進していく必要があると本レポートは提言しています。

イノベーションこそが社会や制度の変革の礎となります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現することで高齢者の健康と、高齢者を支える仕組みづくりを叶えることができると考えます。WHO神戸センターは新長期計画の元、「UHC」「イノベーション」「高齢化」を新しい研究課題に据え、高齢者のニーズに合致した制度、統合的な保健システム、社会ケアシステムの実現のための社会的イノベーション、制度的イノベーション、技術的イノベーションについて研究を進めていきます。