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Implementation

2019年3月~2020年7月

Implementing partners

代表研究機関:神戸大学、マヒドン大学
参加研究機関:九州大学
主導研究者:小野 玲(神戸大学大学院保健学研究科)、Chiyawat Pakaratee( マヒドン大学理学療法学部)

Location of research

日本、インドネシア、タイ

Total Budget
US$ 49,000

背景                                                                                         

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に対するライフコース・アプローチは、UHCの実施とモニタリングに資する手法として提案されてきました。このアプローチでは、出生から、新生児期、幼児期、小児期、青年期、若年成人期、高齢期に至るまで、生涯にわたる人々の健康と福祉の持続的な改善を想定しています。これらの段階はすべて、社会的、経済的、文化的な背景により形成されます。しかし、UHCをモニタリングするための既存の指標は、母子保健や感染症などアクセスが容易な評価基準に重点が置かれており、高齢化に直面する多くの国々に関わるサービスの提供範囲や経済的保護の問題についての指標は不足しています。

目標                                                                                                    

ライフコース、高齢化、UHCに関連する既存の概念と枠組みのナラティブ統合を行い、ライフコース・アプローチによるUHCの進展をモニタリングするための枠組みの開発に役立てる。

研究手法                                                                                            

  • ライフコース、高齢化、UHCに関連するキーワードを使用してPubMed、Web of Science、およびGoogle Scholarで検索を行い、未公開の灰色文献も対象としました。検索対象は、過去10年間(2009〜2019年)に英語で執筆され発行されたものに限定しました。
  • 最初の検索により、健康に対するライフコース・アプローチに関する既存の枠組みが5つ特定されました。これらを1つの概念枠組みに統合して、次に実施したより包括的なスコーピング・レビューの基礎としました。つまり、このスコーピング・レビューでは、統合した枠組みの各要素を支持するエビデンスに焦点を当てました。この段階で、理論的研究やライフコースの前期にかかわる研究にとどまらず、高齢期も含めたライフコース・アプローチの応用研究に関する文献も結果に含まれるようにするため、政策/介入および機能/障害に関連するキーワードも検索語に追加しました。この検索により514件の論文が検出され、このうち84件を最終の分析対象に含めました。

研究結果                                                                                            

健康へのライフコース・アプローチに関する既存の概念枠組みは、ライフコースのあらゆる段階が後の健康に与える影響、およびそれぞれの段階の累積効果を明らかにしています。その一方で、ライフコース・アプローチに関する研究は、若齢期に焦点が当てられる傾向にあります。疫学研究のエビデンスから、若年齢で健康にとって有益・不利益な事象(教育や栄養不良など)に暴露されると、健康や機能に対する影響がその後長期にわたって認められることが明らかになっています。関連する応用研究を検索対象としたにもかかわらず、政策に関連する論文は9件のみで、残りの75件は疫学研究に関するものでした。政策文書から抽出されたテーマでは、ライフコース全体にわたる統合ケアの提供、高齢者を対象に含めた予防接種の拡充、および高齢者にやさしい保健医療の提供の重要性が強調されていました。高齢化に関連する政策のモニタリングや評価のための適切な測定基準を考察している研究や、低・中所得国における関連する政策やプログラムを記述している研究はほとんどありませんでした。

世界的な示唆                                                                         

ライフコースに関する疫学研究は、高齢化が進む状況下の健康戦略の一環として、若齢期の介入に対する投資を行う科学的根拠を提供します。しかし、それは高齢者のニーズに直接対応する老齢期の介入への投資に代わるべきであることを意味するものではありません。ライフコースに沿ったリソースの適切な配分に役立てるため、より多くの研究をとおして、さまざまなライフステージでの介入による影響を相対的に評価することが求められます。政策やプログラムに対するライフコース・アプローチの実用化に関しては、特に低・中所得国でさらに研究を進めることにより、このアプローチを採用した際の実際の利益や課題についての知見が得られることが期待されます。

地元関西にとっての意義​                                                                  

ライフコースの概念は、人口高齢化を考慮した保健医療制度開発に向けて、地方自治体が主導して分野・部門横断的な協働を促すための共通の枠組みとして有用であると考えられます。それにより、さまざまな年齢層が関わる課題に取り組む部門間の相互関係や、協働の可能性を明確にすることができます。また、新たな多部門連携政策や保健医療関連プログラムの達成により得られる相乗効果やその効率性を特定することにも役立ちます。また、ライフコースの中で、関心や投資が十分に向けられていないライフステージを特定することにもつながります。さらには、地域の状況を把握することにより、人口の高齢化を考慮したUHC実現に向けて、その進展を評価するためにライフコース全体を通して追跡すべき主要な指標の開発と標準化にも資すると考えられます。

出版物                                                                                             

Developing a conceptual framework with a life-course approach to support universal health coverage monitoring systems. WHO Centre for Health Development (WHO Kobe Centre - WKC) Working Paper (#K18021)

Melinda G, Ono R, Tsuboi Y, Chaiyawat P, Kawaharada R, Perrein E, Rosenberg M, Agustina R, Fukuda H. Applying a life course approach to health service coverage monitoring in countries undergoing population aging: A scoping review. - PLOS ONE.(査読中)

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