サービス提供モデル

アジアにおける非感染性疾患の予防と管理に関して効果的な保健医療制度の効果に関するシステマティック・レビュー

 

背景

非感染性疾患 (NCDs) は、予防可能な死や障害にいたる最大の原因の一つです(1, 2) 。低中所得国は、経済的保護の欠如、必須医薬品への不十分なアクセス、訓練を受けた医療従事者の不足、慢性疾患治療の継続などの保健医療制度の課題に直面しています(1)優れた保健医療制度の重要な特徴として、社会実験の実施、適切な戦略の選択、他国から教訓を得ることなどがあります(4)例えば日本では、NCDs、特に脳卒中や虚血性心疾患の死亡率の低下に成功し、その結果、1960年代半ば以降、平均余命が伸び続けています(5)NCDsを対象とする介入のレビューは、増加するNCDsに取り組む保健医療制度を効果的なものにするために重要な方法であるものの、アジアではこのようなレビューが系統的に実施されたことはありませんでした。

目的

NCDsの予防と管理を目的としてアジア各国で実施されているプログラムや政策の効果や、費用対効果を評価すること。以下のリサーチクエスチョンについて検討します。

• 日本において、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧の予防に対する地域社会の介入やヘルス・プロモーションにより、心血管系イベントと死亡が低減しているか。
• 東アジアおよび東南アジアにおいて、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧の予防に対する地域社会の介入やヘルス・プロモーションにより、心血管系イベントと死亡が低減しているか。 
• 日本において、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧の予防に対する地域社会の介入やヘルス・プロモーションの中に費用対効果の高いものがあるか。
• 東アジアおよび東南アジアにおいて、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧の予防に対する地域社会の介入やヘルス・プロモーションの中に費用対効果の高いものがあるか。

研究手法

アジア各国におけるNCDsの予防と管理に関する無作為化比較対照試験 (RCT) の査読付き論文を対象とするシステマティック・レビューおよびメタアナリシスを行いました。MEDLINE、コクラン・ライブラリー、医中誌で、検索可能な全期間の論文を対象にキーワードと件名標目を用いて、選択基準を満たすRCTを検索しました。

結果

論文の適格性評価のフローチャートを図1に示しました。データベースの検索から3,389件の論文 (EDLINEから1,577件、コクラン・ライブラリーから1,260件、医中誌から552件) を特定しました。重複していた124件を除外後、3,265件をレビューの対象に組み入れました。

期待される効果

現在実施中の本研究プロジェクトにより、日本や他のアジア諸国における心血管疾患、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症の予防と管理を目的とする政策や行動に関して、エビデンスに基づいた国および地域レベルの介入を明らかにすることができます。

 

参考文献

1. Hunter DJ, Reddy KS. Noncommunicable Diseases. New England Journal of Medicine. 
    2013;369(14):1336-43. doi: 10.1056/NEJMra1109345.
2. World Health Organization. WHO Health Observatory Data. NCD mortality and morbidity. 
    2016.
3. Van Mourik MSM, Cameron A, Ewen M, Laing RO. Availability of cardiovascular medicines: a comparison across 36 countries using WHO/HAI data. BMC. 2010;10:25.
4. Balabanova D, Mills A, Conteh, et al. Good Health at Low Cost 25 years on: lessons for the future of health systems strenghening. Lancet. 2013;381:2118-33.
5. Ikeda N, Saito E, Kondo N, et al. What has made the population of Japan healthy?. Lancet. 
    2011;378:1094-105.

 

慢性疾患を抱える高齢者の生活の質や保健サービスの利用を最大限に向上させるサービス提供モデルの構築

 

背景

人口の高齢化が進むにつれ、高齢者の機能や生活の質(QOL)を最大限に向上させるため、保健サービスと社会サービスを高齢者向けに再編する必要があります。そのためには、高齢者のニーズに応え、求められる目標を達成するため、保健医療制度とサービス提供を、特に慢性疾患を抱える高齢者向けに、根本から変革しなければなりません。

Phase 12017年、高齢者のQOL を最大限に高めるサービスモデルの効果を検討したシステマティック・レビューを対象として、迅速なスコーピング・レビューを実施しました。特定された2238件のうち、条件を満たしていた72件において解析がなされました。総合的な高齢者ケア(身体的機能に重点を置く)と総合的緩和ケア(症状や不安に重点を置く)に大きく分類されたサービスモデルは、高齢者のQOL向上に効果を示しました。しかし、どのサービス提供モデルがどのアウトカムに寄与しているのか、また、資源が限られている低・中所得国(LMIC)の状況にどのモデルが適しているのかについては、結論が得られませんでした。

Phase 2このため、このスコーピング・レビューの一次研究について詳しく検討します。

 

目的

Phase 2は、三次資料文献調査を通じて、慢性疾患を抱える高齢者のQOLの向上と保健サービス利用の最適化の両方を特定するサービス提供モデルの構築を、一次文献に戻すことにより提示することを目的とします。本研究は、臨床、保健医療サービス提供者、マクロ経済政策の環境という観点から検討するもので、様々な背景で機能するモデルに必要な要素を明らかにします。

 

研究手法

  1. 保健医療サービス提供者および医療サービスの提供に関する研究を専門とするチーム(キングス・カレッジ・ロンドン)、またはマクロ経済政策の環境および保健医療サービス提供者の研究を専門とするチーム(USC)の2チームが各々独立して、Phase 1のスコーピング・レビューで特定した一次研究を解析します。
  2. 高齢者の一連のケアを通じて、どうすれば求められるアウトカムを達成できるかについて明らかにするため、両チームが各々の専門性に基づき、サービス提供モデルやその要素、提供者、提供方法の間にあるつながりを同定・評価します。
  3. 得られた知見について情報交換し、共同報告書を作成するため、2020年の第1四半期にWKCによる専門家会議が開催される予定です。これにより、高齢者にとっての適切なアウトカムを達成できるサービス提供モデルの、臨床、保健医療サービス提供者、政策、制度の各要素を関連づけた構築が期待されます。

タイの高齢者のための地域包括型中間ケア (CIIC)サービスモデルを評価するランダム化比較対照試験

背景

世界的に、健康寿命は平均余命よりもかなり短くなっています。WHOの全地域 において出生時の平均余命と健康寿命を比べると、平均で12.2%の差があります。そのため、人々が長生きするほど、何らかの保健医療を必要とする慢性症状を発症して管理が必要になる確率が高まります。
2016年にはタイの人口の16%であった60歳以上の割合が、2040年までには33%まで高まると推定されています。タイでは高齢者、特に慢性疾患を患う高齢者の継続的ケアに関して保健医療の制度と政策の強化を図っているところです。タイの高齢者保健医療はいまだにその多くを家族に頼っており、持続可能とは言えない状況にあります。

地域包括型中間ケア(CIIC)サービスは新しいモデルであり、その中には高齢者のニーズに関する審査や評価、ケアにあたる家族の能力開発、短期滞在型施設、および適切な時点での他のサービスへの紹介などが含まれます。

目標

本研究ではクラスターランダム化比較対照試験を用い、CIICモデルの有効性について、またそれが高齢者の機能的能力や生活の質の向上につながっているか、そして持続可能で費用対効果に優れているかについての評価を行います。

研究手法

高齢者2,000名からなる6つの介入群クラスターでCIICモデルを実施します。別の6つのクラスターを対照群とし、高齢者2,000名に通常のケアのみを実施します。測定する主要評価項目は以下の3つです。

  1. 家族介護者のストレスレベル。Novak  & Guest版Caregiver Burden Inventory (CBI)の介護負担評価尺度で測定
  2. 高齢者の機能的能力と生活の質。日常生活動作(ADL)評価とEuroQol(ユーロコル)EQ-5D-5L適合版で測定
  3. 増分費用と介入費用

期待される成果

  1. タイや同様の課題を抱える他の国々で強化が進む保健医療制度へのCIICモデル適用に関する政策概要、および、査読付き論文によるCIICモデルの綿密な評価
  2. タイの高齢者に提供する継続的な保健医療制度の改善に向けた政策提言

ミャンマーにおける人口高齢化をふまえたUHC確立のためのデータの有用性と政策に関する分析

背景

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて、あらゆる世代のニーズに応えることができる保健医療制度の整備が必要となります。医療サービスは死亡を防ぐだけのものから高齢者の機能と生活の質を支えるものへと変化しています。高齢者に保健医療を届けるために、保健医療制度のあり方や国家の医療政策の根本的な変革が求められています。

ミャンマーは2030年までにUHCを達成することを表明しています。およそ5,200万人のミャンマーの人口のうち、65歳以上の人口は2015年から2035年のあいだに300万人から660万人へと倍以上に増加することが予測されています。民族の多様性に加え全人口の70%が地方に居住していることから、ミャンマー全域における社会保健医療サービスの提供状況は複雑なものになっています。高齢者を家族でサポートできるかを含め、ミャンマーは大きな保健課題に直面しています。このような背景から、高齢者保健の必要性に関連する全セクターにわたる政策や国内の活用可能なデータの見直しが不可欠です。

目標

次期国家保健計画(2022-2025)において高齢者のニーズに対応するための有効なデータや政策文書を分析し、2030年に向けて高齢者の社会保健医療に関する将来計画に役立てる。

研究手法

  1. 社会保健医療など高齢者のためのUHCに関する課題についての文献(国内および国際文献)のスコーピング・レビュー
  2. 健康な高齢化、高齢者の保健医療、UHCに関連したあらゆる政府部門における計画、政策、プロセス、法令の特定、調査および評価
  3. 高齢者向け保健医療サービスの現状について、州/地域の保健医療実施者や伝統的医療組織、私的機関等を含む、政府および非政府の主要なステークホルダーへのインタビューおよび協議

期待される成果

  1. 2030年までの達成を目指すミャンマーの高齢者を包摂するUHCについて、その推進を担うものや障害となるものに関する国内政策の分析
  2. ミャンマーの保健医療・社会福祉制度に高齢者を組み込むにあたり、障害および成功に貢献が期待される要因について国内のステークホルダーの見解を調査したレポート

カンボジアにおける持続可能なプライマリ・ケアのための非感染性疾患の様態に関する研究

背景

人口の高齢化は世界中で急速に進んでおり、それに伴って非感染性疾患(NCD)の有病率が上昇しています。NCDやそのリスク要因に対応した低コストで持続的なサービスが提供できるモデルを採用し、NCD関連の障害や死亡率を管理できるようにすることにより、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた取り組みを促進できると考えられます。

カンボジアでは出生率と早期死亡率の低下により、NCDとそのリスク要因の上昇を伴う急速な人口高齢化が進んでいます。この観点から、Duke-NUS 医科大学はカンボジア保健省と協力し、郡レベルの実態に合わせた持続可能な保健医療制度を促進する研究に取り組んでいます。この研究は促進プロセス改善(FPI)手法の実施により進める予定であり、保健医療プロセスの詳細な設計、促進要因の調査、およびバリアに対処するためのさまざまな実用的手段の開発を行います。

目標

シェムリアップ州の機能的かつ持続可能なプライマリ・ケア制度への貢献

研究手法

  1. シェムリアップ州の代表的なプライマリ・ケア施設の調査を実施することで施設の長所と短所を明らかにし、WHOガイドライン『基本的な非感染性疾患介入策の包括的計画(PEN)』に基づいた施設の特性と能力に関するベースラインデータを収集
  2. 郡のヘルスケア提供者による現地リソースに合わせた保健医療制度改善のためのツールの開発

期待される成果

  1. シェムリアップ州のプライマリ・ケア施設の分類
  2. 上記分類を用いた各保健医療センターの特性とリソースにふさわしいツールの考案、および、研究成果に関する査読付き論文、政策概要の発表

フィリピンとベトナムの高齢者に良質のサービスを提供するための専門職連携トレーニング

背景

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の普及は、高齢者が居住する地域をベースに一人ひとりの個性に応じた(person-centred)総合的なサービスを手頃な価格で提供するモデルを採用することにより、また長期的・包括的な保健医療制度を導入することにより促進できると考えられます。専門職連携教育(IPE)では、専門が異なる学習者が相互に学び合うことで、効果的な協力関係を構築し、健康アウトカムを向上させることができます。人口の高齢化が進む中で、高齢者一人ひとりの個性に応じた効果的なケアを提供できる医療人材を育成する上で、IPEは重要な役割を担っています。WHOは、高齢者関連も含めた地域の医療ニーズに対応できる連携型医療人材の育成には、IPEが欠かせないステップであると認識しています。

60歳以上の高齢者数は、フィリピンでは730万人から1,300万人に、ベトナムでは960万人から1,800万人に増加すると推定されています。両国では高齢者福祉の増進に対する強い政治的コミットメントがあるにもかかわらず、リソースの不足、および社会的サービスと保健医療サービスの統合がUHCの実現を目指す上での課題となっています。総合的で効果的な社会保健サービスを確立するには、高齢者のニーズとそれに伴う人材育成のニーズに対処していかなくてはなりません。低・中所得国での老年医学と老年学に関する教育はまだ初期段階にありますが、日本は急速な人口構造の変化と保健医療制度の開発を経験してきており、高齢人口に総合的なケアを提供する連携型の医療人材を育成するためのIPEについても相当な実績を有しています。日本は、こうした経験をIPEがまだ根付いていないフィリピンやベトナムのような国々に伝えることができます。

目標

フィリピンとベトナムの保健医療および社会的ケア従事者を対象とした職能に基づくIPEプログラムを開発します。そのプログラムは、他の低・中所得国での利用に合わせて調整可能なものとします。

研究手法

  1. 高齢者ケアを目的とした既存のIPEプログラムに関するグローバルな文献レビュー、およびフィリピン、ベトナム、日本の既存のカリキュラムの比較
  2. フィリピンで60歳以上の高齢者に保健医療および社会的ケアサービスを提供する専門職を育てるIPEプログラムの試験的な実施と評価
  3. フィリピンとベトナムで高齢者に保健医療および社会的ケアサービスを提供するための専門職連携について、知識と実践の間のギャップを明確にするためのフォーカスグループ討論

期待される成果

  1. フィリピンとベトナムの高齢者の保健医療および社会的ケアのニーズに関する査読付き論文
  2. フィリピンの高齢者に適した保健医療および社会的サービスを学べるIPEプログラムのカリキュラム